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次に流行るお店

”酒飲み”のために生まれた、小粋な和風ダイニング
「無常迅速堂」
(東京・田町/和風ダイニング)

第192回 2007年10月19日

鰻ときゅうりのライスサラダ ¥900
 去る10月1日、田町にオープンした「無常迅速堂」の根底に流れるのは、oil ≦ 0「オイル、小なりイコール、ゼロ」というコンセプト。オイル、つまり油を極力控えた、シンプルかつヘルシーな料理を提供するという考え方だ。運営会社である株式会社スタジオナガレ、広報室の森めぐみさんは、同店のコンセプトが誕生したいきさつを語る。

「お酒が好きな方々のことを考えた上で生まれたコンセプトです。ちょっと一杯、と飲みに行った先で、コスト重視の脂っぽい料理が出てきて、結局お酒がすすまなかった……というのは実は良くあることですよね。本当にお酒が好きな人は、シンプルな料理を肴に、お酒のおいしさをじっくり味わいたいはず。その点を重視して、コンセプト作りに着手しました」


店内


ひっかけ酒対応のスタンディングスペース

 これまで、南麻布の“味噌汁バー”「1CHIDO゜」、品川の京風くずし割烹「HARENO SORANO SHITA」など、斬新な飲食業態を提案してきた株式会社スタジオナガレが新たに提唱するスタイルが、この「oil≦0 Dining(オイルショウナリ-ダイニング)」だ。

 酒の味わいをメインに考えるとは言え、当然のことながらそれは、料理を軽視しているということではない。総料理長の金澤 力さんは言う。

「シンプルであるからこそ、素材の質にはこだわります。調味料ひとつとっても、厳選したものしか使いません。料理の味に深みを出すために“かえし”にこだわったりと、細かな工夫を加えていますね。当然、お酒との組み合わせを考慮したうえでのメニュー構成も重要視しています。また、素材の産地、旬を大切にしているので、季節ごとにメニューの構成は変化していく予定ですから、その辺りも楽しみにしていただきたいです」

 お通しは3種類の天然塩。味わい深い塩を、酒の共として楽しむだけでなく、料理のアクセントとしても使えるという粋なサービスは、酒好きには感涙もの。大胆な工夫と繊細な気遣いに満ちた前フリが、メイン料理への期待を増幅させる。

“酒を愛する者”に向けて、金澤さんが自信を持ってメニューの柱に据えたのが、茶懐石のコース(2890円)だ。ナチュラルでヘルシー。そしてリーズナブル。もちろん、酒の味わいを殺さず、酒本来の味を引き立てるシンプルな構成になっている。また、「目でも楽しめる料理」と金澤さんが語るとおり、器のチョイスから盛り付けまでが完璧に計算し尽くされた料理の数々。

「ヘルシーな料理構成は女性に喜んでいただけるはずです。加えて、健康を気にされ始めた30代、40代の男性のみなさんにも試していただきたい。おいしいお酒を楽しみながら、体のことも気遣うことができるメニュー構成ですから」

 茶懐石のほかにも、各種アラカルトメニューを用意。食事メインで楽しみたい人も、十分に満足できるところが嬉しい。

 工夫と新しい試みが散りばめられているのは、コンセプトやメニューだけではない。無常迅速堂では、客が好みや状況に応じた利用ができるよう、タイムテーブルを3つに分けてサービスを展開する。


京生麩のソテー田楽 ¥700


脂のない赤身部分を使った「くじらのレタス揺りかご焼き」¥1500


京都桝吾の京漬物の盛り合わせ ¥850

 11:30からのランチタイムは、食べすぎや胃もたれでランチ後の仕事に支障をきたさないよう、さっぱりとした“ぶぶ漬け(京風お茶漬け)”を提供。17:00からのBarタイムは、待ち合わせなどに最適な立飲みスタイルがメインに。店の入り口付近に設えられた石造りの重厚な立飲みテーブルで、“軽く一杯”を楽しむことができる。今後はビュッフェスタイルでランチの残り料理をつまみ代わりに提供するスタイルも検討中のこと。

 そして19:00からは、ディナータイム。ワイン、焼酎、日本酒をはじめ、シャンパンやカクテルなど、多種多様な酒と、それらとしっかり調和する日本料理が、至福のディナータイムを演出する。

「私たちは、常に本物志向ありたいと考えています。スタイルだけを追求するのではなく、料理はもちろん、店の内装、お客様へのサービスひとつひとつまで、本物を目指さなくてはならないと思っています」

 森さんの言葉通り、無常迅速堂の料理、内装、サービスの姿勢からは、一切の手抜き、マニュアル臭は感じられない。“粋”を味わえる食事と、ざっくばらんで妙にかしこまらない雰囲気。カウンターを挟んだスタッフとの会話も弾む。

「スタッフとはもちろん、お越しいただいたお客様同士のコミュニケーションが広がることも期待しています。私たちは‘インストアコミニケーション’と呼んでいますが、お店での出会いをきっかけに、お客様の間に新しい交流と人間関係が生まれるのであれば、それはとても嬉しいことですね」

 株式会社スタジオナガレの斬新な試みを、もうひとつご紹介したい。

 スタジオナガレは、無常迅速堂が入居するビル、「SWALLOW’S NEST SHIBAURA」を利用し、個人営業の飲食店や小規模飲食店をサポートするプロジェクト立案、稼動させた。同ビル入居する小規模店舗同士が互いに協力し合うことで「組合」的な動きを可能にしていこうという試みである。現在「SWALLOW’S NEST SHIBAURA」には、スタジオナガレが運営する無常迅速堂のほか、フレンチ・バル「Le Corbeau」、蒸留酒と音楽を提供する「Sieben」という、経営母体が異なる2つの店舗が入居している。今後この3店舗は“Come on!! SAKE-NOMI! PROJECT”という共通コンセプトの下、互いの店の個性を活かしながら、組合的な協力体制を構築していく。

 具体的には、集客率の悪い特定日にここの店舗を一本化して営業を行ったり、同ビルないの店舗で「はしご酒」ができるサービス、満席の店舗のための「ウェイティング」を他店舗で行うサービスなども展開。今後は空洞化したテナントビル、開発中のテナントビルを活用し、不動産取得や家賃支払いなどの効率化、内装や販促の際のコスト削減も視野に入れたプロジェクトとして進化させていくとのこと。

「oil≦0 Dining」という人気沸騰間違いナシのコンセプトとあわせ、同社の目指す飲食店経営の新しい形にも注目したい。


【無常迅速堂】
住所 東京都港区芝浦3-12-3 SWALLOW’S NEST SHIBAURA 2F
電話番号 03-3452-5996
営業時間 ランチ11:30〜14:00
Bar  17:00〜18:30
ディナー 19:00〜24:00
定休日 年中無休
客席数 カウンター10席/テーブル12席/立飲みスペース
客単価 5000円
経営母体 株式会社スタジオナガレ
溝口敏正  2007年10月4日取材

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