RSSフィード

次に流行るお店

おひとり様から隠れ家風のパーティーまで
奥横浜・裏路地でNEWカフェスタイル
「roku cafe」
(神奈川・横浜/カフェ)

第199回 2007年12月12日

「roku cafe(ロクカフェ)」外観
 新田間川を渡ったその一角。JR横浜駅西口から徒歩で8分ほど移動するだけで、駅前の喧噪から逃れた、落ち着いた雰囲気の街区がある。相鉄本社やNTTデータなど、西口ビジネス街を形成する大手企業の拠点が集まるこの界隈は、近年では“奥横浜”とも呼ばれ、個人オーナーによる手づくり感にあふれたしゃれた飲食店が急増している。

 10月8日にオープンした「roku cafe(ロクカフェ)」もそのひとつ。川沿いの路地を少し入ると、濃い緑が映える小粋な外観が見うけられる。店名のrokuとは、イメージカラーの緑(りょく)からの転訛だというのが、オーナーの和歌成介氏(有限会社からくさ代表取締役)。


オーナーの和歌成介氏(有限会社からくさ代表取締役)

 「“からくさ”という社名が、『いろいろな人やものへ“ツタの絡まるように”広がってほしい』という願いを込めたものなんです」

 床面積15坪の店内は、ソファ席を中心に30席。入ってすぐのカフェエリアは、アンティークの家具を配した緑を基調にした内装。重厚感と開放感がうまく相まっており、肩ひじ張らずにのんびりとくつろげる空間。

 カップルやグループを想定することが多いこの手のカフェのなかで、ひとりで訪れる客に配慮しているのも特徴だ。ウォールスペースには、約60冊もの洋書や雑誌が並ぶ本棚が設けられ、カウンター席でひとりくつろぐ女性客も多い。

「ショッピングで横浜に来る学生さんなどのほか、周辺で働くOLさんがひとりでふらりと来店されることも多い。休日には、近くにお住まいの熟年のご夫婦や家族連れなど、幅広い層に認知されているようです」

 開店早々にもかかわらず手ごたえは上々のようだ。

 カフェエリアの奥には、パーテーションで区切られたパーティーエリアがある。ローズピンクの壁に白のシャンデリアがまばゆい輝きを放つ、華やかでゴージャスな空間だ。

「カジュアルなカフェとしての顔とは別に、隠れ家風でロマンチックな、オトナ向けのスペースだと好評。特に、一番奥のソファ席は予約の申し込みが多い」

“おひとり様”でも気兼ねのないカフェづかいから、記念日・2次会などのグループ・カップルのダイニングスペースとして、異なる2つの顔を持つのが大きな特徴だ。


カフェエリア


パーティーエリア

「roku cafe」を運営する(有)からくさは、2001年4月にアメリカンカジュアル、ヴィンテージのユーズドアイテムを中心とする「NEAT横浜店」からスタートしたアパレル販売・製作会社。2003年7月には、ドメスティックブランドを展開する「ISSUE」を横浜市西区南幸にオープン。横浜駅前のアパレルショップとして地歩を固めたところで、2004年9月に「KARAKUSA −LUSH DINING−」を出店した。


1号店「KARAKUSA −LUSH DINING−」

「祖母が喫茶店をやっていたこともあり、なんとなくあこがれがあったのかな。もうひとつは、ショップで働く従業員が社食がわりに使ってくれてもいいかなと思って始めた」

 もちろん、そればかりがきっかけではなく、地元不動産業者から手ごろな物件の紹介があったことや、販売・サービス業としての社業の拡大を狙ってのことに違いない。
 「ショップの仕入れで、海外に出かけることが多いのもきっかけとしては大きかった。インテリアやお店の形態、もちろんフードメニューにも触れながら、アパレルとは違ったサービスや空間を提供してみたい、という思いが育ってきたんでしょうね」

 飲食という、和歌氏にとってまったくの異業種に乗り出すにあたり大きなキーマンとなったのが、現飲食事業部の統括責任者である石川勇太氏との出会いだった。

「バーテンダー、レストランマネージャー、大手チェーンの居酒屋まで、ありとあらゆる業態を経験してきた彼が、立ち上げから参加してくれたのが成功の最大の要因。ぼくは彼をはじめスタッフにすべてを任せているだけ。オーナーとして、困ったことがあれば交通整理に出かけるだけ」

 1店目の「KARAKUSA −LUSH DINING−」以来、石川氏の姿勢は明確だ。

「基本は接客です。横浜は地元密着度が高い。また、東京にはないゆったりとしたくつろぎを求める地元客が多い。スタッフの顔が見える、手触り感のあるサービスをする。そうすれば、お客様がわたしたちに応えてくださると思うのです」

 大人びた夜を演出する豊富なアルコールメニューや、凝った料理が多いダイニング業態の「KARAKUSA −LUSH DINING−」に対し、美肌効果や胃腸にもやさしいオリジナルブレンドのハーブティー(650円)なども提供する、カフェ業態の「roku cafe」という違いはあれど、メニューはすべて手づくりにこだわる。「海老とレンコンのサラダ」880円や「サーモンとクリームチーズの和風サンド」800円など、和洋を取り混ぜた個性的な創作メニューがお手ごろ価格でそろうのが特徴。


オープンキッチン


創作料理の数々


「海老とレンコンのサラダ」880円

「各店舗とも、ソースから手づくりです。マネージメント担当も調理担当も一緒になってメニューを考えて仕入れをする。お客様本位のサービスを、あたりまえにできるよう心がけています」

「ぼくはオーナーとして採算を考えているだけ」。頼れる男、石川氏を見て和歌氏はこう笑う。が、次の1点だけは折々スタッフに言って聞かせるという。

 「プロらしくということ。すべてはお客様を見て取り組んでほしい。お客様のためによかれということならオーナーにも意見してほしい」

 日常、客と接するのはスタッフのほうだ。その情報から得られる感覚は、オーナーとして信ずるに足るという。任せてしまう、それが和歌氏の主義だ。


統括責任者 石川勇太氏


【roku cafe(ロクカフェ)】
住所 神奈川県横浜市西区北幸2-11-23
電話番号 045-311-1114
営業時間 11:30〜23:30
定休日 月曜(月祝の場合は翌火曜休み)
客席数 30席
客単価 昼800円、夜2000円
経営母体 有限会社からくさ
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
前野 公彦(まえの きみひこ)  2007年11月15日取材

Page Top