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次に流行るお店

ファーストフードの革命児
「もくち原宿店」
(東京・原宿/サンドウィッチ)

第222回 2008年6月18日

夜はスタンディングバー。巨大角瓶オブジェからハイボールを注ぐ
「黙知」という言葉をご存知だろうか? これは経営母体のガッツフードサービス株式会社(以下ガッツ)社長鬼塚氏によると“人と人との温もりを大切にすること”を意味しているそうだ。2008年6月9日にガッツがオープンした「もくち原宿店」はそんな“人と人のコミュニケーション”を大切にしている飲食店だ。トレードマークの赤鬼は鬼塚氏の名前と息子さんのデザインで出来上がったもので、なんとも微笑ましいデザインだ。

 もくち原宿店はJR原宿駅徒歩1分、目の前に小さな公園があり、ハンバーガーショップとカフェに挟まれた競争率の激しい場所にある。周辺一帯が再開発地域で、期間限定でオープンした店舗で青山店・神宮前店とは一線を画す独特のスタイルが特徴的だ。また原宿は情報発信地としても期待でき、もくち自体の認知度を広げる役割も果たしている。


「もくち原宿店」外観


「もくち原宿店」 店内

 その独特のスタイルとは、昼と夜で営業のスタイルがガラッと変わることだ。昼は和風サンドイッチとサラダのテイクアウトのお店で、夜はハイボール片手に楽しむスタンディングバーへと姿を変える。この形式はプロジェクトリーダーの菊島氏が考案されたもので、ターゲットは16〜35歳(昼)、25〜40歳(夜)を設定している。既存のもくちのターゲットである40代とは異なっていて、原宿への出店が決まっていた3号店が街のニーズに答えた結果だそうだ。

 原宿は通勤・通学の方が多く、軽食が好まれる。菊島氏は鬼塚氏に『食はしっかり食べ、活力にするもので、軽食はあまり考えられない』と言われ、最初は和食であるおにぎりを提案されたそうだ。しかし菊島氏はあきらめず、おいしい和風サンドを考案した。そして新しいことにチャレンジしたいと自分の意見を通すことに成功した。“社員一人一人が主役になれる場を提供する”という鬼塚氏の考えを貫いた形でもある。

 昼のコンセプトは「味発見」。和風サンドイッチのおいしさを発見してもらうとともに、手軽にもくちのメニューが食べられる新しいスタイルを実感してもらいたいということだ。昼はさわやかに、元気に営業しており、J-POPや洋楽などの明るい音楽が店内を満たす。

 昼のオススメはとりから黒酢サンド(380円)と肉屋のコロッケサンド(350円)。常連客の8割がどちらかを購入していくという絶品。とりからは衣がサクサクという音を立て、コロッケサンドは破格のボリューム。どちらにも満足させられる一品だ。カクテルサンド(350円)はもくち本店で女サラダとして出されているもので、トマトとセロリに甘いニンジンのドレッシングをかけたものでとてもヘルシー。デザートにはほんのりとラム酒が混じったこしあんサンド(170円)などいかがだろうか。


ショーケースには自慢のサンドウィッチが並ぶ


とりかつサンド

 元々もくちは「お客さんに温かく接すること・常連の方々を増やしていくこと」を目指す飲食店だが、ファーストフードのスタイルでどうやって獲得していくのだろうか。この質問をしたところ、サンドイッチの宅配・予約サービスを行うことで解決するということだ。サンドイッチを電話予約しておけばその分を作り置きしておいてもらえるので売り切れの心配がない。宅配は神宮前の方限定のサービスで10個以上から注文できる。作業中の軽食のためなどに便利で手軽であり、ピザなどに比べ手も汚れないのでオフィス勤めの方は重宝するだろう。また、ちょうどインタビュー中にお客さんが来店し、「あの方は開店日から3日連続で来ていただいているんですよ」という話が聞けた。お客さんの顔を覚え、一人一人温かく迎える姿勢が窺える。

 対して夜のコンセプトは「始まり」。新しいスタイルと新しいお客さん・スタッフとの出会いの始まりであるからだ。もくちでは初めてのスタンディングバーで、メニューも飲み屋のそれに変わる。ドリンクの目玉は角瓶ハイボール語源には諸説あり、アメリカの鉄道で使われた信号やサービスから呼ばれるようになったとか、イギリスでゴルフ中ウィスキーを飲んでいたところハイボールが飛んできたからと定かではない。


ザ・ハイボール

 ウィスキーは苦手な人が多いが、ハイボールは飲みやすく、立ち飲みに適している。立地的に駅が近いため、ジンジャーで割った原宿ハイボール(390円)を一杯飲んですぐ帰るという手軽さを売りにしている。しかもカウンター横に置いてある逆さのビンのようなディスプレイには、なんと総量4リットルものハイボールが入っており、ビールサーバーのようになっている。これは日本初の仕掛けで、現在ここでしかお目にかかれない代物だ。これを飲みながら新名物のもつ煮込み(400円)や日替わりおばんざい(お通し)を。もちろんもくち名物のとりからやコロッケは健在で、夕方6時・7時・8時・9時に揚げたてが食べられる。


角瓶オブジェから本物の角瓶を入れる

 客単価はおよそ昼600円・夜1000〜1500円ほどだそうだ。当初ランチボックス(500円)が売れると踏んでいたが、単品の方がよく出るため昼は予想を上まわり、逆に夜はまだスタンディングバーとしての認知度が低いため下回っているのだと菊島氏は語る。商品単価は量とおいしさに比べ安いと感じるし、新メニュー続々と出てくるであろうことを考えるとまた足を運んでみたいと思う。真のライバルは周りにある店ではなく自分たちであると語るもくち原宿店には、今後も向上心を忘れずに活躍してもらいたい。


夜の外観


「もくち原宿店」スタッフ


【もくち原宿店】
住所 東京都渋谷区神宮前1-14-24
電話番号 03-3401-7697
営業時間 昼 11:00〜17:00
夜 17:00〜22:00
定休日 無休
客席数 オールスタンディング
客単価 昼/600円 夜/1000〜1500円
目標月商 450万円
開店日 2008年6月9日
経営母体 ガッツフードサービス株式会社
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
坂口 智紀   2008年6月11日取材

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