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漁師と料理人のナイスタッグを目指す、魚好きのための居酒屋
「あぶらほうず 白金高輪店」
(東京・白金高輪/魚居酒屋)
「あぶらほうず 渋谷店」
(東京・渋谷/魚居酒屋)

第263回 2009年4月14日

漁師と直接交渉し、朝に水揚げされた魚介類を、市場を通さず航空便にて直送。
「あぶらぼうず 白金高輪店」は、今年4月1日に東京メトロ南北線と都営三田線の白金高輪駅前にオープンした、「漁師×料理人」をコンセプトに掲げた居酒屋である。2月2日にオープンした、渋谷店に続く「あぶらぼうず」としては2店目だ。


「あぶらぼうず 白金高輪店」 外観。


「あぶらぼうず 白金高輪店」 店内。


「あぶらぼうず 白金高輪店」 店内。

 経営するヘンリーブロスは2007年1月に出店した中目黒にある魚の炉端「ぼうずこんにゃく」が好調。そこで、今度は魚好きのための居酒屋にチャレンジしてきた。

 江嶋力社長によれば「海のデザイナーである漁師と、料理のデザイナーである料理人、この掛け合わせでどんなものが生まれるのかをテーマにした」とのことだ。

 ヘンリーブロスは傘下に飲食店向けの食材総合商社を有する。全国40〜50の漁師と直接交渉し、朝に港へ水揚げされた魚介類を、市場を通さず航空便にて直送して、その日のうちにメニューに並ぶシステムを整えている。漁師が船上で血抜きをし、氷を直接当てないで冷やすといったような、最高の鮮度を保てるように、瞬間的に処理した魚介類を仕入れているのだ。

 一方で調理の担当者を“デザイナー”と呼び、鮨職人、割烹出身の職人を採用している。そこで海を知る達人の漁師と、和の達人の料理人がコラボレーションして、新しい価値を創出したいといった意味合いである。

 なお店名の“あぶらぼうず”はクエと並び称される高級な白身魚の名である。

 席数は30席。元は同社の経営するフレンチの店だったが、150万円で改装し、見る影もないチープな店に生まれ変わった。白金の高級住宅街のイメージとは正反対の店だ。

 江嶋社長によれば「白金高輪界隈のお金持ちは銀座や六本木で食事をするので、地元の高級店には行かない。サラリーマンもたくさん住んでいるし、居酒屋も『養老の瀧』があるくらいで安く食べられる店が少ないので業態変更した」とのことである。

 推奨メニューは「沼津直送マグロかま豪快焼き」(880円)、「天然アナゴ天ぷら」(980円)、「漁師匠のわら焼鰹の土佐造り」(980円)といったところ。「地魚なめろうのり添え」(680円)も人気がある。


土佐の匠かつおのたたき 980円。


名物!本日の漁師地魚刺5点盛 1280円。

 日替わりの「本日の地魚」では、1キロ当たり3000〜4000円もする高級魚が1000円を切る値段で提供されるのは驚きだ。ある日のメニューでは、「肝付カワハギ」(850円)、「キジハタ」(850円)、「イシダイ」(880円)とあった。山陰沖産「ノドグロ(小)」は、小ぶりとはいえ1匹150円と激安だ。

 不景気対策として、冷奴、枝豆、もろきゅうなど、「昔なつかしの居酒屋メニュー」(280円〜)も安価で各種取り揃えている。

 ドリンクは、ビールの生は「プレミアムモルツ」(580円)。サワー&ハイ、梅酒、焼酎、日本酒、ウィスキー、ホッピーなどそつなく揃えている。「濃い〜寿司屋の緑茶ハイ」(380円)が玄米の味がするというので、中でも人気がある。

 顧客単価は3000〜3500円を想定しており、「白金アエルシティ」に通勤する人も取り込めそうである。

 また、白金高輪店に先んじて「あぶらぼうず」1号店としてオープンした渋谷店は、「渋谷センター街」の中心部、「ファーストキッチン」のあるビルの4階にある。


「あぶらぼうず 渋谷店」 エントランス。


「あぶらぼうず 渋谷店」の市場をイメージしたカウンター

 高校生ばかりが多い通りだが、「渋谷もサラリーマンが多いし、魚を食べさせる店は『魚真』の一人勝ちなので、長期で見るとチャンスがあると思った」(江嶋社長)とのこと。特にマス宣伝をしていないので客足はボチボチだが、クチコミが最大の宣伝と信じてこれまでどおり真面目に営業を続けていくとのこと。

 渋谷店は60席と白金高輪店の倍のスペースがあり、市場の雰囲気を取り入れて、新鮮な魚をディスプレイしたカウンターがあるのが特徴。

「魚が好きな人はカウンターから離れようとしないですね」と薄裕之店長。


薄裕之・「あぶらぼうず 渋谷店」店長

 フレンチのシェフもいるので洋のメニューも出せるのが、白金高輪店との違いだ。洋の推奨メニューとしては、「カキのクリームリゾット」(980円)、「漁師風スパゲティ」(1280円)、「フォアグラのテリーヌ」(880円)といったところ。サクラエビがたっぷり入った「シェフ特製チーズオムレツ」(550円)も人気だ。


シェフ特製チーズオムレツ 550円。

 白金高輪店、渋谷店の両店とも、850円〜950円のメニューでランチ営業も行っている。

 渋谷店では、その日の地魚が豪快に入った「漁師豪快投げ込み丼」(950円)、大漁マグロ丼(950円)、「アボガドと海老の丼」(850円)あたりが人気という。

 白金高輪店、渋谷店ともに安価な居酒屋を出すには意外な立地であるが、職人がつくるしっかりした料理を出すポリシーからも、魚好きで会社帰りに一杯飲みたい消費者からは歓迎されるに違いない。

 難しそうな立地であるが、成功すれば街が変わるキッカケになるのはないだろうか。


【あぶらぼうず 白金高輪店】
住所 東京都港区高輪1-3-20
電話番号 03-3280-0278
営業時間 ランチ 11:30〜14:00(L.O.13:30)
ディナー 18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日 日曜・祝日
客席数 30席
客単価 3250円
目標月商 650万円
開店日 2009年4月1日
経営母体 ヘンリーブロス株式会社
【あぶらぼうず 渋谷店】
住所 東京都渋谷区宇田川町26-11 白馬ビル4F
電話番号 03-5428-1779
営業時間 ランチ  11:30〜14:00(L.O.13:30)
     *土・日・祝は休み
ディナー 18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日 無休(ランチは土・日・祝が休み)
客席数 60席
客単価 3250円
目標月商 1100万円
開店日 2009年2月2日
経営母体 ヘンリーブロス株式会社
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ)     2009年4月9日取材

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