フードリンクレポート


<サポーターレポート>
2008年ビール4社の業務用販売戦略

「相談するならサッポロビール」と外食企業サポートに力点。
サッポロビール株式会社

2008.1.25
飲食店に、商品を供給するだけでなく情報・資金面でも多大な支援を行っているビール会社。大手4社に今年の業務用の販売戦略を取材する4回シリーズ。第3回は外食企業のサポートに取り組み、店舗の差別化に貢献しようとするサッポロビール。マーケティング本部 外食戦略部 グループリーダーの三上浩嗣氏、同本部 外食戦略部 副課長の森井俊之氏を取材した。

業務市場専用の商材として投入された「白穂乃香」

「品質アップ」と「フードビジネスサポート」の継続が奏功

 2007年はビール酒造組合の集計によるとビール5社の樽生ビールは前年比1.2%減となった。サッポロビールは、前年割れながらも、その業界平均値をやや上回る前年比で終えたという。毎年、継続してきた様々な施策の効果が現れた。

エビスブランドは18%増、取扱飲食店数は全飲食店の約1割

 樽生のみで販売するエーデルピルスは、近年20%前後の伸びで増加中

 品質への取り組みとして、生産者とコミュニケーションをとりながら共に品質の良いビール原料を作っていく「協働契約栽培」。現在は麦芽とホップの100%が「協働契約栽培」となった。同社独自の原料へのこだわりだ。

 店舗で美味しい樽生ビールを提供してもらうため、ビールサーバーの洗浄や注ぎ方を講習する「サッポロビヤアカデミー」を全国で開催。

 さらに、ビールサーバー自体を改良した「サッポロセパレシステム」。ビール回路をまるごと交換し、メンテナンスセンターで徹底的に洗浄するシステム。同社だけが採用している。

 外食企業を経営面から支援するフードビジネスサポートにも力を入れてきた。

 従業員教育や集客セミナー、仕入れ先紹介など外食企業での役立ち情報を提供する「繁盛店への扉セミナー」を5年前から継続している。毎年、全国で年間延べ40回も開催される人気イベントに育っている。


繁盛店への扉セミナーでの講演会


繁盛店への扉セミナーでの展示ブース

 また、内装や食材など専門のパートナー企業の紹介、物件紹介。さらには、「売上が上がらない」「社員教育はどうしたら良い?」「業態を見直したい」などの外食企業の悩みを解決する提案まで行ってきた。


2008年は樽生専用「白穂乃香」「琥珀エビス」

 07年11月にサッポロビールは2種のプレミアム樽生ビールを発売。家庭市場では販売しない、業務市場専用の商材として投入された「白穂乃香」。1月までは期間限定で缶商品も販売するものの、樽生ビールだけは通年で販売し続ける「琥珀ヱビス」だ。

「白穂乃香」は無ろ過タイプ。酵母が生きており、味わい深くまろやか。小麦麦芽をブレンドし、液体は乳白色で濁りがある。見た目にも明らかに違いが分かる。酸味とクリーミーな泡が特徴。ビール通だけでなく、炭酸や苦みが苦手というお客にもピッタリの商材。

 白穂乃香

 実は、06年11月からテスト販売をスタートし、徐々に販売規模を拡大。07年11月15日からは、東京都内、横浜、川崎で200店限定で発売を始めた。12月末時点で既に150店の扱いがあるという。取り扱う酒販店と飲食店の双方で品質管理のできる店舗にのみ取り扱ってもらう仕組み。新規扱いの要望が増えているが、全店が取り扱えるわけではないそうだ。

 メニュー価格は350〜400mlで通常の生ビールより150〜200円高い価格設定をしているところが多い。「周囲の店舗との差別化になり売りやすかった」「1杯目が白穂乃香になり、客単価が上がった」という扱い店の声が上がっているそうだ。

 もう1種のプレミアム樽生ビールは「琥珀エビス」。06年に缶入りで限定発売したが、惜しむ声が強く、再販売となった。

琥珀エビス http://www.yebisubar.jp/kohaku/index.html

 ローストしたクリスタル麦芽を配合。琥珀色と、深みのある味わい。こちらも見た目で違いの分かるビールだ。

 エビスブランドの瓶・樽含めての取扱店は07年で7万1千店。前年と比べ、6千店、約1割伸びている。全飲食店の1割弱で取扱という割合だ。従って、エビスブランドをお客が目にする機会が増え、差別化商品とはなりにくくなってきた。

 そこで、更なる差別化商材として誕生したのが「琥珀エビス」。ワンランク上のエビスとなる。首都圏で07年11月21日から限定販売をスタート。その後、全国展開を検討している。メニュー価格は350〜400mlでエビスより50〜100円高い価格設定を想定。08年では500店舗での導入を目指している。

「白穂乃香」、「琥珀エビス」共に、こだわり、差別化、希少性、話題性を兼ね備えた商材であり、外食企業の差別化を助けてくれる。他ビール会社では樽生専用のブランドはほとんど無い。

 サッポロビールは130年以上続く日本最古のビール会社。木樽でビールを販売していた時代もあるビールの老舗。日本最初のビアホールを創ったのも同社。「生のサッポロ」として、樽生ビールへのこだわりを持ち続けている。


相談するならサッポロビール

 同社で業務用を担当する営業マンは約230名。その背後に外食コンサルタントとしての教育を受けた「フードビジネスサポートチーム」が20名近くいる。各支店に必ず配置され、営業マンと2人3脚で外食企業の経営をサポートしてくれる。各エリアを熟知したサポート部隊なので、単に東京の流行り業態のノウハウをそのまま地方に転用するというやり方はしない。エリアに合った提案を心がけているそうだ。

 この「フードビジネスサポートチーム」も「繁盛店への扉セミナー」とともに5年以上のキャリアがある。これがサッポロビールの強みになっている。約230名の営業マンも飲食店経営者の立場で考えることができるようになってきたと言う。

 今年のスローガンは「相談するならサッポロビール」。外食企業経営者のパートナーとしての役割をより強く打ち出している。

「ビールを飲むと躍動感がでてる。いつまでも若々しくいられます」と三上氏は締めくくってくれた。




森井 俊之氏(マーケティング本部 外食戦略部)
サッポロビール株式会社 http://www.sapporobeer.jp/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年1月22日取材