・不味い生ビールでお客の54%は二度と来ない!
店の第一印象は生ビールが決める。キリンビールの調査によると、フードも含めたファーストオーダーに占める「生ビール」の割合は63%。その内、「生ビールが不味かったら2度と店に行かない」と答えた方は90%。つまり、お客様の54%の人は、不味い生ビールを飲んだら2度と来ない。
別の調査では、生ビールが美味しくなると、店でのビール売上は110%以上増加したお店もある。客数以上に伸び、つまり、お客様1人当たりの杯数が増えたことになる。
キリンビールは店で提供される生ビールの美味しさの重要性をデータで説明してくれた。
美味しい生ビールを提供するために、「キリン・ドラフトマスターズ・スクール」の受講生を増やす活動を続けている。資格を持った営業マンが店舗に赴いてスクールを開催するなどして、2007年は開校時に次ぐ過去最高の受講者数となった。
「1店1店の生ビールの美味しさを高めていきたい」と塩見氏は語る。2008年も美味しい生ビールのお店づくりをキリンビールは推し進めていく。
2008年も業務用で主力の「一番搾り」
話題のプレミアムビール銘柄は、「ブラウマイスター」「ニッポンプレミアム」「チルドビール」「ハートランド小瓶」など。家庭用も合わせてキリンビールは15%伸ばした。しかも、「ハートランド」は13年連続前年アップ。
また、07年6〜12月に「一番搾りプレミアム」を群馬、茨城、新潟、長野、栃木の5県で限定テスト販売。しかも、“生の達人”がいる店「キリン満点生の店」登録店で、かつ樽冷式
ディスペンサーを使用している店のみで販売した。チルド配送を採用しメーカーからお店に冷蔵で直送した。店でもチルド保存を維持するために樽そのものを冷やす形式のディスペンサーにこだわった。
220店でご販売頂いた。100円程度高い価格設定だったが、お客様の評価も高く、お店にとっても利益商材となった。テストで得た知見を活かし、今後に繋げて行きたいと考えている。
プレミアムはまだ小さな市場。キリンビールは「市場は07年は約4割伸びたが、08年は4%程度の伸びと読む。07年ほどの伸びは期待できないが、安定成長は続けるだろう」と判断している。
・メルシャン統合で、総合力アップ
メルシャンは06年12月にキリンビールと戦略的事業提携を行なった。そして、07年7月よりキリンビールのワイン事業をメルシャンに移管し、メルシャンの「白水」など焼酎やRTD、梅酒、「軽井沢」「デカイパー」など洋酒を始めとする事業がキリンビールに移管することとなった。
これにより、キリンビールは酒類のポートフォリオが一気に拡充。飲食店への提案内容が広がった。
お客様は最初の1杯しかビールを飲まない傾向になってきている。2杯目以降のお客様にバラエティ豊かな焼酎、梅酒、洋酒などの提案ができるようになった。業種、業態に関係なく提案できる品揃えは強力だ。
・地産地消で、食とコラボ
全国の農協や漁連を巻き込んだ47都道府県の食材ネットワークを作っている。キリン営業マンが直接交渉したという。この食材を全国の飲食店に紹介できる内部体制が整っている。
全国47都道府県の食材ネットワークが完成
2007年、「一番搾り」のテレビCMで、鍋ブームにも乗り「ぶりしゃぶ」がブレイクした。地方の食とのコラボCMは98年から継続している。「ぶりしゃぶ」CMのお陰で、富山県出身の飲食店とのつながりが一気にできたという。「次はCMで何々を取り上げますよ」と事前に伝え、ブームを先取りするチャンスを店に与えてくれる。
各県ごとにも、県の特産品を使った料理コンテストを県知事まで巻き込んで展開したりしている。08年も継続して「一番搾り」は食をテーマに活動する。
各地で「アイデア料理コンテスト」を開催
また、今年は北京オリンピックの年。キリンビールは日本代表選手団へのスポンサー。オリンピックでの日本代表応援キャンペーンが出来るのは同社だけだ。
「奇策はない」と言う。2008年も積み上げてきた品質向上、グループ力活用、地産地消を継続する。
「『お客様の笑顔のために』を真剣に考えています。お客様の笑顔の横にキリンがあって欲しい。お客様との長いお付き合いをしたい」と塩見氏は熱く語ってくれた。