今月の特集 海外飲食店事情日本食ブームのタイ!(3/3)面
-バンコクからのレポート- |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
『居酒屋 花子』 日本食ブームに乗るのは何も日本人経営者ばかりではない。タイ人オーナーによる日本料理の店も現れた。しかも業態は居酒屋。『居酒屋 花子』は、まさに日本の居酒屋の味と雰囲気を忠実に再現した、在住日本人ビジネスマン憩いの店だ。 「もつ煮込み・55バーツ」「冷や奴・45バーツ」「ししゃも塩焼き・85バーツ」など、ラインナップも渋い! 客単価は600バーツで、78席の店内は一日でほぼ一回転半はする。
|
|
||||
|
ところで、バンコクを訪れる日本人には大きく分けて3パターンいる。ビジネスマンと、普通の旅行者と、倹約型の旅行者。特に5年前から急増したのは3番目、つまりバックパッカーだ。彼らはカオサンロードに並ぶ安宿に宿泊。その近辺の屋台で食事をし、気が向けばタイ各地や近隣のアジア諸国へ旅に出る。そしてまたカオサンへと戻り、しばし休息の時を送る。『レックさん・ラーメン』は、まさにそんなバックパッカーの聖地に誕生した店。日本人駐在員向けの高級ラーメン店で14年間修行を積んだレックさんが、大衆的な価格で、本格的な日本のラーメンの味を提供している。 一日平均130名を集客。日本のマンガや週刊誌、新聞なども置いてあり、客は待ち時間も郷愁に浸れる。人気メニューは「味噌ラーメン・60バーツ」、「広東麺・55バーツ」、「鳥の唐揚げ定食・55バーツ」、具だくさんの「餃子・40バーツ」。全品、タニア通りなどの他の日本人向けラーメン店の半額〜3分の2の値段だ。客単価も昼夜関係なく60〜90バーツと、日本食の店としては格安である。
|
||||||
慣習や文化の違いを理解しタイ人スタッフの教育行儀作法や日本語を教える さて、バンコクで成功している日本料理店を見てきたが、日本人がオーナーの『花屋』や『築地』でさえ、スタッフのほとんどはタイ人だった。実はこれ、この国が定めた失業対策。コストは安いが、日本人経営者にとって何かと苦労も多い。 「タイ人は性格がおおらかというか大雑把なんです。掃除も、雑巾を足でちょちょいと動かす程度。右手で汚いものは持たない。そんな生活習慣の違いからお互いに理解していかなければならないんですから、最初はかなり大変でした」と、『花屋』の大貫店長。せっかく教育した女性スタッフを他店へ引き抜かれることもままあったという。 そこで、スタッフの出身地へ出かけ家族と会ったりその生活に触れたり、店長自らが理解とコミュニケーションに努めた。その結果、定着率もよくなり、誰かが辞める場合でも、その故郷から交代要員が来るまでに信頼関係が築けたという。 『築地』でも毎日2時間、専門のスタッフにより行儀作法と日本語教育を実施。和服の気付け、歩き方から挨拶、サービスまで、覚えてもらうことは山ほどある。焦らず、気長に、辛抱強く。それが、年間を通して気温が30度という、ここ猛暑の都市でスタッフ教育に当たるための秘訣のようだ。 |
||
タイ料理の新ジャンル 「タイスキ」の『コカ』 日本食が静かなブームだとすれば、ひと足先に大ブレイクして今ではもうすっかり定着したのが、「タイスキ」。日本でも流行したのはまだ記憶に新しい。タイ料理の新ジャンルなのだが、中華や日本食のタイ風アレンジと思っている人もけっこういる。日本料理で言えば「スキヤキ」ではなく「しゃぶしゃぶ鍋」といった感じ。ダシを煮立て具を入れて火が通ったらタレに付けて食べる。 その「タイスキ」の専門店の中で最も有名なのが、世界に45店舗をチェーン展開する『コカ(可口飯店)』。日本にも3店舗支店がある。 店内は豪華でゆったりとした雰囲気。スタッフ・サービスも行き届き、タイ人にも日本人にも評判が良い。肉も野菜もシーフードも充実。1皿12〜290バーツで、客単価は250バーツ。スリウォン通り店は客席300席で一日650名を集客する。その80%が日本人。人気は、えびだんご、えび、わんたん、魚のすりみ、蟹、牛肉。ランチタイムには飲茶もあり、こちらも好評だ。
|
||||||
日本食ブームのバンコクは外食中心の国際社会熾烈な競争の予感に今後の推移が気にかかる 昨年の日本人の出国先ランキングを見ると、アメリカ、韓国、中国に次ぐ第4位にタイがきている(総務省統計)。タイへ向け旅立った人が82万2831人。この中にはきっと、日本料理店をオープンさせようとバンコクを目指した飲食店オーナーもいただろう。バンコクの物価は日本の約3分の1。しかも外食中心の国際都市で日本食がブーム。日本の飲食店にとっても魅力的な場所だ。だが、乱立後のこれからが本当の勝負。どんな集客戦線が繰り広げられるのか、期待して見守って行きたい。 |
||
<*3面のトップへ*>--- <*バックナンバーへ*> |