2005.8.14
新川義弘




どこにもない、ドリームレストランを立ち上げる

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新川さんは入社早々、店舗物件を見て歩いていらっしゃいますが、お店を出される計画もあるのですか。

 

新川 
河原(リンク・ワン代表)、あるいはリンク・ワンが、次にやっていきたいことは、直営店のビジネスなんです。私が弊社に入った、いちばん大きなミッションは、実はこの直営部の立ち上げです。
 現に今、札幌の「カレー食堂 心」というスープカレーの店のフランチャイズ本部になっています。これは2年前に河原が札幌で食べて、ぜひ全国に広めたいと温めていたもので、私も7月の終わりに、札幌に行って食べました。本当においしいと感じました。
 これを直営とFCで伸ばしていくことが、私に与えられた仕事です。
 同時に、イデアという会社が関西で数十店展開している、お好み焼き屋「鶴橋風月」のフランチャズ・パートナー、「わっはっはっ風月」のフランチャイズ本部にもなっているので、これを一生懸命やります。この店のお好み焼きも、本当においしいです。
 私の役割は、オペレーション能力を高めることです。一過性のヒットにとどまらず、長く収益が上げられる、ビジネルモデルをつくっていきます。

 

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新川さん自身のブランドは、つくらないんですか。

 

新川 
それができなければ、リンク・ワンに入った意味は、3割くらいなくなってしまいます。「弊社の外食の学校「フードビジネスアカデミー」(FBA)」の構想も、片手落ちになるでしょう。
 リンク・ワンに本当に収益が上がっている、エクセレントなモデルがあって、その店では目がキラキラした人が働いていて、素晴らしい仕組みとノウハウの宝庫であってこそ、学びにくる人も多く集まってくるでしょう。
 非常に恐縮ですが、河原には、私、新川のブランドのもとで、エクセレントなモデルをつくらせてほしいと提案して、具体化することを約束しています。これは熟成が必要ですし、守っていかないといけない。
 楽しみにしていてください。絶対、面白くしますよ。
 もう、東京都内、仙台の物件も見に行きました。

 

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新川さんの中では、相当煮詰まっているようですね。

 

新川 
「カシータ」のメンバーも、石田のところのメンバーも、元グローバルの出身者ばかりじゃないですか。
 このまま朽ち果ててお払い箱になるんじゃなくて、やっぱり新川ってやることが違うね、もっと先を行っているねと、世間から思っていただけるようにするためには、どこにもないような、ドリームレストランをつくるしかないでしょう。
 高級レストランという意味ではないですよ。スーパー・シェフがいるわけでもない。顧客満足度が最高の、伝説になるようなレストランが目標です。
 そんなレストランができれば、リンク・ワンの社員のモチベーションは上がるでしょう。外食が好きで、入っているわけですからね。学びたいとも思うでしょう。
 現に、代官山「タブローズ」で9年間、そのような店をつくっていました。これができてこそ、私の価値があるんです。

 

新川流の接客の中心にある「認知する」ということ

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話は変わりますが、新川流の接客、サービスのスタイルの原点はどういうところにあるんでしょう。

 

新川 
「アンティシペートする」ということですかね。「先手を打つ」「物・事を予想する」といった意味なんですがね。
 私には1人、師匠がいて、トム・カーディナスという男です。私より1つ上で、今は彼の兄が経営している、大きなアメリカのレストランビジネスの副社長です。L.A.でいちばんはやっている「カタナ」をはじめ、「スシロク」、「バルボア」など8店くらいを持っています。
 彼は、L.A.「ラ・ボエム」の初代マネージャなんです。その前は「キハチ」の初代支配人で、そのまた前はL.A.「ブラッセリー・チャヤ」のマネージャーといった経歴で、ホスピタリティ産業では、世界的に有名な人です。
 私が代官山「タブローズ」の店長になる前に、アメリカへ1カ月半くらい研修に行かせてもらったんです。そのときに、トムと寝食を共にして、彼から学んだことが、サービスのルーツになっています。
 彼から教わった重要なことは「日本人はシャイすぎる。日本人のサービスは下僕のサービス。イギリスの召使、バトラーのサービスの延長線上にある」。

 

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非常に厳しい指摘ですね。

 

新川 
かゆいところに手が届くという点では、京都の「柊家」や「たわらや」のビジネススタイルは世界的に素晴らしいと思います。
 しかし、欧米的なエンタテインメント性の高い、目線がイーブンのサービス。お客さんの要望も聞きつつ、こちらも主張する。それで最終的に、満足度を達成できている店は、日本にないと思わないかって、彼に言われました。「お客さん、私はあなたを認知していますよ」と、「リコグニション」することの重要性を、トムに教わったのが、全ての始まりだったんです。
 それを行うために、いろんなシステムをずっと、考えてきました。

 

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具体的には、どういうことでしょう。

 

新川 
たとえば、ある東京の超一流ホテルのカフェで、私と業界の女性の方2人で、打ち合わせをしたときのことです。ウエートレスに、私は「ハーブティー下さい。ミントとカモミール半分ずつで」とオーダーし、業界の方は「私、カモミールだけでいいです」と注文したんです。
 それで、ウエートレスは運んできて、「ミントとカモミールの方は?」と改めて聞いたんです。その間、たった2、3分ですよ。自分がオーダーを取ったんじゃないですか。
 私たちのことを、覚えたくないんです。認知したくないんです。興味を持ってないんです。ナンセンスではないですか!顧客満足という点では、非常にレベルが低いです。
 今、時計や車にこだわっている人の中に、ご飯を食べることやお酒を飲むことにも、すごくこだわりのある人が増えています。日本でも、個人の趣向を大事にする、欧米化が進んでいます。それなら、レストランのサービスも、欧米化して個人を大事にしないといけない。                 

 

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それは、お客さんを選別することとは、違うんですね。

 

新川 
違います。選別って差別じゃないですか。日本のサービスマンって、だいたい若いきれいな女性の前で長く話していますよ。
 だから、下手なんです。男性客はジェラシーを感じるじゃないですか。
 ホテルのレストランで名刺交換をして、「新川さん」と呼ばれてサービスしてもらえれば、7000円のワインを1万円にしますよ。猿もおだてられれば、ではないですが。なのに、何度ひいきにして通っても、「お客さん」とずっと呼んで、通す店もあるんです。
 お客さんを認知する。お客さんとイーブンでいる。お客さんを覚えておく。これら3つのキーワードは、とても大事です。
 ホストとゲストが見極められるレストランって、どこか思い浮かびますか。
 欧米のレストランでは、10年前に一度来たお客さんを覚えているサービスマンが、たくさんいます。だから尊敬され、チップで家を建てる人も出てくるんです。
 私も「タブローズ」では実践してきました。かなりの高い確率で、お客さんが前に来たのがいつ頃で、何を召し上がったか、言い当てられました。私はやります。

 

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本日は新川さんのお話で、長谷川社長とグローバルへのリスペクト、リンク・ワンへのリスペクトと今後のわくわくするような構想をお伺いしました。最後に、長谷川社長との決別はどのような感じだったのか。話していただけますか。

 

新川 
前の日に、グローバルの社員の結婚式があったんです。当然、席は隣同士で、業績について話していたんです。帰り道に長谷川さんから「新ちゃん、ちょっと時間くれない。もう少し話したいんだけど」と誘っていただいたんですが、余りにも胸が苦しくて「ちょっと今日は、用事があるんで」と断って帰ってきたんです。
 そのあと、家からメールして、5月17日の9時から経営会議がありましたから、「経営会議の前に、30分だけ時間を下さい」と送信しました。
 8時半に出社したら、待っていてくれましたよ。「いろいろ考えたんですが、辞めようと思います」と切り出すと、「えっ」という顔をされて、お互いポカンとしていましたね。しばらく。
 20年間の時間が凝縮されたような感じで、死ぬほどつらかったです。
「何か決まっているのか。新ちゃんから、いろんな仕事を取っちゃったからなあ」って言っていましたかね。
 最後は極めて紳士的に、「わかりました。お互いに頑張りましょう」と了承していただきました。

 

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どうもありがとうございました。大いに期待しています。最近、話題の少ない外食を面白くして、夢を見させてください。




新川義弘(しんかわ・よしひろ)プロフィール
1982年福島商業高校卒業。新宿東京会館(現ダイナック)を経て、84年長谷川実業(現グローバルダイニング)入社。88年取締役に就任。「グローバルのサービスの確立者」と言われ、長谷川耕造社長をサポートするNo.2として、同社の1999年東証2部上場など、同社が日本の外食の代表企業へと躍進するステップに、大きく貢献する。2005年8月1日、リンク・ワン常務取締役に就任。満を持した「新川ブランド」店の構想実現に、入社早々から奔走する日々を送っている。

>>「株式会社リンク・ワン」

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