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話は変わりますが、新川流の接客、サービスのスタイルの原点はどういうところにあるんでしょう。
新川
「アンティシペートする」ということですかね。「先手を打つ」「物・事を予想する」といった意味なんですがね。
私には1人、師匠がいて、トム・カーディナスという男です。私より1つ上で、今は彼の兄が経営している、大きなアメリカのレストランビジネスの副社長です。L.A.でいちばんはやっている「カタナ」をはじめ、「スシロク」、「バルボア」など8店くらいを持っています。
彼は、L.A.「ラ・ボエム」の初代マネージャなんです。その前は「キハチ」の初代支配人で、そのまた前はL.A.「ブラッセリー・チャヤ」のマネージャーといった経歴で、ホスピタリティ産業では、世界的に有名な人です。
私が代官山「タブローズ」の店長になる前に、アメリカへ1カ月半くらい研修に行かせてもらったんです。そのときに、トムと寝食を共にして、彼から学んだことが、サービスのルーツになっています。
彼から教わった重要なことは「日本人はシャイすぎる。日本人のサービスは下僕のサービス。イギリスの召使、バトラーのサービスの延長線上にある」。
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非常に厳しい指摘ですね。
新川
かゆいところに手が届くという点では、京都の「柊家」や「たわらや」のビジネススタイルは世界的に素晴らしいと思います。
しかし、欧米的なエンタテインメント性の高い、目線がイーブンのサービス。お客さんの要望も聞きつつ、こちらも主張する。それで最終的に、満足度を達成できている店は、日本にないと思わないかって、彼に言われました。「お客さん、私はあなたを認知していますよ」と、「リコグニション」することの重要性を、トムに教わったのが、全ての始まりだったんです。
それを行うために、いろんなシステムをずっと、考えてきました。
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具体的には、どういうことでしょう。
新川
たとえば、ある東京の超一流ホテルのカフェで、私と業界の女性の方2人で、打ち合わせをしたときのことです。ウエートレスに、私は「ハーブティー下さい。ミントとカモミール半分ずつで」とオーダーし、業界の方は「私、カモミールだけでいいです」と注文したんです。
それで、ウエートレスは運んできて、「ミントとカモミールの方は?」と改めて聞いたんです。その間、たった2、3分ですよ。自分がオーダーを取ったんじゃないですか。
私たちのことを、覚えたくないんです。認知したくないんです。興味を持ってないんです。ナンセンスではないですか!顧客満足という点では、非常にレベルが低いです。
今、時計や車にこだわっている人の中に、ご飯を食べることやお酒を飲むことにも、すごくこだわりのある人が増えています。日本でも、個人の趣向を大事にする、欧米化が進んでいます。それなら、レストランのサービスも、欧米化して個人を大事にしないといけない。
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それは、お客さんを選別することとは、違うんですね。
新川
違います。選別って差別じゃないですか。日本のサービスマンって、だいたい若いきれいな女性の前で長く話していますよ。
だから、下手なんです。男性客はジェラシーを感じるじゃないですか。
ホテルのレストランで名刺交換をして、「新川さん」と呼ばれてサービスしてもらえれば、7000円のワインを1万円にしますよ。猿もおだてられれば、ではないですが。なのに、何度ひいきにして通っても、「お客さん」とずっと呼んで、通す店もあるんです。
お客さんを認知する。お客さんとイーブンでいる。お客さんを覚えておく。これら3つのキーワードは、とても大事です。
ホストとゲストが見極められるレストランって、どこか思い浮かびますか。
欧米のレストランでは、10年前に一度来たお客さんを覚えているサービスマンが、たくさんいます。だから尊敬され、チップで家を建てる人も出てくるんです。
私も「タブローズ」では実践してきました。かなりの高い確率で、お客さんが前に来たのがいつ頃で、何を召し上がったか、言い当てられました。私はやります。
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本日は新川さんのお話で、長谷川社長とグローバルへのリスペクト、リンク・ワンへのリスペクトと今後のわくわくするような構想をお伺いしました。最後に、長谷川社長との決別はどのような感じだったのか。話していただけますか。
新川
前の日に、グローバルの社員の結婚式があったんです。当然、席は隣同士で、業績について話していたんです。帰り道に長谷川さんから「新ちゃん、ちょっと時間くれない。もう少し話したいんだけど」と誘っていただいたんですが、余りにも胸が苦しくて「ちょっと今日は、用事があるんで」と断って帰ってきたんです。
そのあと、家からメールして、5月17日の9時から経営会議がありましたから、「経営会議の前に、30分だけ時間を下さい」と送信しました。
8時半に出社したら、待っていてくれましたよ。「いろいろ考えたんですが、辞めようと思います」と切り出すと、「えっ」という顔をされて、お互いポカンとしていましたね。しばらく。
20年間の時間が凝縮されたような感じで、死ぬほどつらかったです。
「何か決まっているのか。新ちゃんから、いろんな仕事を取っちゃったからなあ」って言っていましたかね。
最後は極めて紳士的に、「わかりました。お互いに頑張りましょう」と了承していただきました。
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どうもありがとうございました。大いに期待しています。最近、話題の少ない外食を面白くして、夢を見させてください。
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