フードリンクレポート

ワンダーテーブル 林社長インタビュー
「一番の強みは店舗力 -初めて細かく語ろう-」(前編)

02.03
全業態既存店100%クリア継続中のワンダーテーブル。その躍進のカギは店舗力にあるという。その店舗力とはどのようなものなのか。店舗運営のみならず人材育成のカギを林祥隆社長に伺った。
躍進に向けた原動力
林社長
株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 林 祥隆氏
「モーモーパラダイス」、「東京ベリーニ」、「六蔵」ほか飲食店53店舗を運営。売上95億円(2005年3月期)。

安田
13カ月連続既存店が前年比100%をクリアしています。「ロウリーズ」も12月は1億円を売り上げるなど非常に好調だったと聞きます。その原動力は何なのでしょうか。


既存店を整理して不採算店を閉めたことが、全店舗の約3分の1、残り3分の2は実力ベースで伸びています。 2004年、05年、06年の中期計画を策定した時にこのまま行けば04年が赤字になることは見えていました。

ですから04年を底にして、3年間で問題をクリアにして、成長しよう。07年からは羽ばたける会社にしよう、と中期計画「リバイバルプラン555」を打ち出しました。

社員全員に会社の状況を説明し、数値目標もクリアにして1.売り上げを50億円伸ばしましょう。2.営業利益率5%にしましょう。3.ROEを5%にしましょう、と3つの目標を掲げました。さらに業態の中で多店舗展開のできる業態を確立すること。店舗力に注力した店舗運営システムの構築を掲げました。

安田
店舗力とは。


業態とは、ビジネスモデルです。店舗力とはその店舗がビジネスモデル通りに運営できているかどうか、各々の店舗の力です。今までも店舗力が大事だと言いながらも業態に比重を掛けていた。それをスイッチして店舗力の徹底強化を図るようロジックを組み立てました。

安田
店長がキーパーソンになるわけですね。各店舗の店長の力量が問われます。


店長は非常に重要な存在ですが、店舗運営は店長・支配人だけではできません。店舗力強化に欠かせないのは、1.組織力 支配人が組織をまとめる力、いわば求心力。2.運営力 QSAを上げてお客さまがリピーターになりたくなる店にする、加えてコストコントロールがきちんと行えること。3.攻撃力 販売促進、営業等、打って出る力です。

この3つの力が大事です。しかしもっとも重要なことはこの順番を間違えない、ということです。
組織力を持たない支配人に攻撃はできません。例えば売上げ数字を上げるためにキャンペーンという攻撃を行えば、割引などに魅かれてお客さまはいらしてくれるでしょう。従来以上に集客した、売り上げ上がった、しかしその時だけです。

キャンペーンをすれば集客することは、従来の数字の上でも十分わかっています。なぜ売り上げが落ちていたのか?お客さまがリピーターになっていなかったからにつきるでしょう。なぜリピーターになっていただけなかったのか、それは店舗に何か問題があるから。これでは一時の集客のためにお金を使って販促をしても不評を広めることになりかねません。

そこで、組織力をHOP。運営力をSTEP。攻撃力をJUNP、と3段階に分け、各段階をさらにH1、H2、H3からJ3の9段階に分け、各段階で行うべきことのプログラムを作りました。われわれはプログラムの可視化と呼んでいますが、○○店はどの段階にいるのかが、かかわる人間すべてに明確にわかりますから、現状認識できると同時に、的確に指示を与えることができます。

現場の意見が最重要
林社長

安田
具体的には。


組織力の第1段階HOPの“H1”は支配人の意識と行動改革です。支配人としての意識を持ち、考動しているか。自己改革シートに自分の短所・長所すべて記入してもらい、その後の行動計画を宣言してもらいます。H2は理念の共有化です。当社のミッションなりベースの考えをきちんとスタッフに広めること。クリンリネスについて最低限のレベルは行えていること。

H3になると若干難しくなります。当社では各店舗で携帯電話を使ったお客さまアンケートを実施していますが、ただ“アンケートお願いします”ではお客さまは協力してくれません。面倒くさい、ですよね。ところが、なぜこのようなアンケートを行っているのかをきちんと説明すれば、大体のお客さまのご協力は得られます。

そこで求められるのは、店舗に20人のアルバイトスタッフがいたとしたら、20人全員がお客さまにきちんと説明できること。アンケートの大切さ、店舗力伸長のために必要なことだと支配人が全スタッフに伝え、スタッフが認識すること。そして積極的にアンケートを行ってくれるようになり、アンケートの数字が上がってくるこれがH3、組織力の完成です。

安田
支配人がスタッフにノルマではないけれども、割り振ってもできない。


支配人ひとりでは決して組織は作れません。自分の、いわば分身となって動いてくれる人材が必要です。われわれはそれをトップランナーと呼んでいますが、支配人とまず一緒に店舗を、組織を盛り立ててくれる人材をつくることが最重要です。その上でトップランナーが携帯電話アンケート担当など、責任意識を持ち、担当者意識で積極的に動いてくれるように図っていかなければなりません。

管理するのは正社員、実行するのはアルバイトの図式では絶対にうまくいかない。担当はみんなで決める、アンケートの説明でも“こうすれば良かった”など、積極的に意見を出し合う、全員参加型経営の考え方で運営することこそが重要です。その関係性がないまま支配人が勝手に割り振ったとしても「できませんでした」で終わってしまうでしょう。

このプログラムを2005年4月から導入しました。それまでは店舗力が大切だと言いながらも、各店舗の問題に対して具体的にどうすればいいのか、直接店舗に手を打たずに、数字を上げるために業態力を改善していました。当然ですが、現場には的確な指示を与えることはおろか、一貫性のない、しかも業態レベルで考えていますから長いスパンの指示を下すことになり、それに対して現場は、“本社から指示が下りてきたけど、どうすればいいのか、何をすればいいのかわからない”そして“もうできない、知ったことじゃない!”という悪循環に陥っていました。

このプログラムでは各段階では何をすべきか、成すべきことが明確に、ショートスパンで定められています。おのずと支配人の考動は決まってきます。そしてわれわれも各店舗のレベルに対して的確な指示を与えることができるようになりました。

このプログラムの利点は他にもあり、業態が違ってもノウハウが交換できること。今までは業態が違えば考動も変わる、と思いがちでした。ところがS3(運営力)になるためには、H1から始まる各段階を経て、課題をクリアして初めてS3となります。その課題を最短でクリアできる、またはこれが最良だ、と支配人が実際に自分が取り組んだ方法を交換できる、共有化できるようになりました。

同じ業態であっても店舗力が上がっている店舗は確実に数字も上がっています。支配人は業態を数字の伸びない言い訳にはできません。店舗の数字は支配人、業態の数字は本社の責任、と役割分担しました。プログラム導入後は支配人が店舗に対して責任感を持ち、積極的に考動するようになりました。

後編に続きます>>