フードリンクレポート

株式会社オックス 代表取締役 今田輝幸氏
大阪の外食リーダー

04.14
19歳から商売を始め、焼鳥店のとりひめなど、100店を越える飲食店のオーナーとなった㈱オックス代表取締役今田輝幸氏。来年には、上場も目指しており、積極的に攻めの姿勢でビジネスを進めていく抱負を語って頂いた。

*株式会社オックスは株式会社シンワと2006年8月1日をもって合併し、「シンワオックス株式会社」として新たにスタート致しました。インタビュー記事の内容は、2006年4月時点のものですので、現状と内容が異なる場合があります。
シンワオックス株式会社
 http://shinwa-ox.com

株式会社オックス 代表取締役 今田輝幸氏

どのような経緯で飲食業に参入したのですか

17歳で高校を中退して、19歳で商売を始め、神戸のナイトボーイズラウンジを経営しました。当時は、バブルの時代で不動産の投資なども行っておりました。そのお店で知り合った中に、内装業のお客様がおりまして、お付き合いしている際、インテリアにも興味を持ちました。当時、その会社では、第一興商さんのビックエコーなどのカラオケボックスの内装を手がけておりまして、勉強させて頂きました。そこで、縁があってその内装業の会社に就職することになりました。営業をしていたのですが、簡単な図面も描けるようになりましたし、自分で言うのも何ですけど成績もよくて会社の№2になりました。


 

挫折があったとも聞きますが

社長と仲良くなって、うっかり連帯保証人になってしまったのです。その後、会社が不渡りを出して倒産。社長一家に夜逃げされてしまい、莫大な借金を背負うことになりました。自分の持っていた不動産を処分して、大分減らしましたが、まだまだ借金も残っている状態でした。社長も夜逃げしましたし、会社は名義変更して私のものになりました。これは、オックスの前身となる内装業の会社です。

 

最初は内装業からスタートしたのですね

そうです。内装業というのは、投資が少なくてすむ。契約者の方から発注があってから、仕入れを行えば良いのです。どれだけパフォーマンス性の高い設計を提供できるかを考えて、設計効率の良いものを提供すれば、値切られることもない。ゼロどころかマイナスからのスタートでしたけれども、何とか3年半くらいで借金も返し終わりました。

 

カラオケ「ZACC梅田店」

その後にカラオケ店を開店していますが、なぜでしょうか

知り合いになった居酒屋のオーナーが、カラオケ店を経営していたのですがどうも売り上げがかんばしくない。お前やってみないか、と言われて店舗を買い取りました。私は、不動産を扱っていた経験がありますから、繁華街の物件であれば、部屋効率を上げればマンション経営と同じように、儲かると考えました。例えばお客様にお得な2時間のパッケージを作って、その時間を越えると急に料金が高くなるように設定するのです。そうすれば、次のお客様を部屋に案内することができる。ビックエコーさんの内装も手がけておりましたので、そういったノウハウも十分に生かすことができました。

 

「とりひめ」焼鳥


「とりひめ京橋店」店内

焼鳥店を手がけたきっかけは

やはり、京橋の焼鳥店のオーナーから売り上げがよくないので、買い取りした物件です。焼鳥が大好きだったのと、鶏肉は原価も安く、中華、エスニック、洋食とアレンジもしやすい商材なので、これで勝負しようと思いました。開店して1カ月くらいは、元の店舗のままで運営していたのですが、店舗も汚いし、お客も全く入らない。そこで思い切って3カ月ほどかけて、改装を行うことしました。京橋は、昔から立ち飲み街として有名ですし、安い店はたくさんある。労働層も多いエリアなのですが、実は会社もかなりあります。そこで、ターゲットを狭めて会社員に絞り、内装も少しお洒落にして、落ち着きのある店にしました。播州百日鶏とも出会いまして、良質な鶏肉を安価に提供できるようになったのも、強みだと思います。

 

その後は順調に出店を続けていますね。全国制覇を目指すのでしょうか

とりひめブランドで500店出店しようとは考えておりません。まずは、大阪を網羅するつもりです。大阪でしたら、やはりキタとミナミでしょう。このふたつのエリアを中心に、出店をしていく予定です。営業マンだった時代に、北新地で接待をしておりましたから、どちらかというとキタエリアに土地勘がありました。まずは、キタを中心に、物件ありきで出店を続けていく、というのを繰り返しました。物件が見つかってから、とりひめだけでは、お客様を取りこぼすので、その立地にふさわしい業態を開発する必要がありました。そこで、いくつか新しいブランドが出来上がりました。

 

東京や香港にも積極的に出店しております

先ほどお答えした通り、大阪を中心にしておりますが、東京への出店はチャレンジです。香港へは現在21店を出店しておりまして、ビジネスとして非常に面白い場所だと思います。また、中国は非常に魅力的な市場ですが、その足がかりとして香港を狙いました。もうひとつ、わが社は内装業を行っていましたから、中国から調度品を安く早く流通させることが可能なことも大きなメリットです。

 

業態開発やメニュー開発は、どなたが行っているのでしょうか

私もアイデアを出しますが、基本的には若いスタッフに任せておりまして、そこで斬新な企画も出てきます。例えば、げん家ラーメンでイベリコ豚のチャーシューを使用したラーメンというものが出てきたのです。


「げん家」イベリコ豚チャーシュー麺

 

スタッフのモチベーションを上げる原動力は何ですか

弊社は早い段階から、システムやバックヤードの設備に投資をしておりました。機械にできることまで、人に任せるとスタッフはストレスを感じますので、まずはこの部門を強化しました。後は、こんな部門があったら良いとかいうアイデアを出したスタッフは、その企画の責任者になる。店長の裁量にも権限を与えておりますので、予算の範囲内だったらどう使おうと任せています。こうした任せることが多いのも、やる気の原動力になっていると思います。

 

P/Aを長く続かせるポイントはありますか

店舗毎の売り上げ、利益率、アンケートの評価結果からランキングをつけて、年に1度の決起会の際に表彰式を行っております。優秀店舗には、金一封を出しました。今年は、社員だけの参加でしたが、来年はアルバイトも含めて1000人くらいの規模で、売り上げアップのためにどんなことを行ったのか、といった発表会も行いたいですね。

 

給与体系はどのようになっておりますか

基本的には役職給です。予算を達成した店舗については、予算達成金額の30%を給与原資にして決定されます。店舗毎の目標は営業利益が15%。大繁盛店ですと、30%を超える店もあります。その他、本部費が8%、会社の経常利益は5%を目標としています。

 

今後はどのようなビジネスを手がけるご予定でしょうか

飲食店をとりまく全てのビジネスを手がけていきたいですね。例えば不動産、金融、物流、購買、PR代行、ユニフォームを販売するアパレルなどのビジネスを狙っています。営業出身ですので数字が大好きなのですが、例えばある会社をM&Aしたらどのような経営数字になるか、というシミュレーションは常に行っています。

 

・そこまで手を広げる理由はなぜでしょうか

飲食店の現場で働く限り、スタッフの給与というのは限界があります。高い給与を与えるには、自分で独立するか、本部に残って出世するしか道がありません。様々なビジネスを行っていくことによって、従業員に働く場を与えることができるのがひとつ。こうしたビジネスを手がけるには、個人経営では限界があるでしょう。来年、株式公開を考えておりますが、次のビジネスステージへ移るためにも、従業員のためにも必要なことだと思います。


社長の仕事とは、どんなことだと思いますか

報告を聞くと誰がどこで悩んでいるのかわかるので、その店へも直接足を運びますし、解決法を決めています。権限を持つ人間が、迷っているところに方針を与える。それから仕事が遅れているところへ参画していく、ということです。

 

今田輝幸(いまだ てるゆき)

フレンチの料理人、店舗インテリアのコーディネーター、飲食店の経営コンサルタントを経て、19962月より同社にて活動を開始。当初は店舗内外装の企画・施工業。99年に取引先のカラオケ店を内外装はもとよりメニュー・サービス等まですべて手がけプロデュースしたのを皮切りに、飲食事業をスタートさせる。現在、グループ会社を併せ30業態・171店舗と多岐に亘る。


シンワオックス株式会社 http://shinwa-ox.com

取材・執筆 石田千代 2006年4月12日インタビュー