フードリンクレポート

「Chanko Dining 若」の女房役
株式会社ドリームアーク 取締役社長 大森幹也

05.19
「第66代横綱 若乃花」花田勝とともに二人三脚で「Chanko Dining 若」を16店に拡大。女房役として花田勝の夢を実現し続ける大森氏。初めてかなわない人間に出会ったと言う。


Chanko Dining 若」六本木本店 入口

「Chanko Dining 若」の出店状況は。

 2006年5月末の時点で合計16店あります。都内の六本木本店、渋谷店、銀座店、新宿店、池袋店の5店が直営です。他に、国内でFC契約の10店、韓国ソウルに合弁で1店あります。

私は、株式会社ドリームアークの社長で、花田勝が代表権を持つ会長を務めています。もう1つ、株式会社NHOという会社があり、そちらの代表取締役社長を私が、花田が取締役会長を務めています。ソウルはNHOが出資しています。ドリームアークは主に直営店を運営している会社です。NHOはFC展開、スーパーバイジング、コンサルティング、広報など幅広い飲食店経営のプロ集団です。今後は花田の人脈を生かしながら、他社にも店舗プロデュースを提案していきます。

 

FC募集はどのように。

 募集は一切しておりません。「Chanko Dining 若」は飲食店としては、重たいオペレーションだと思います。鍋もスタッフがお客様のお席でお作りし、取り分けをしています。オペレーションの肝となる花田イズムをFCのオーナー様に継承いただかねばなりません。ですから、FCをやらせて欲しいといらっしゃる方々を審査させていただき、花田の理念を理解いただいた方にのみ、FC契約を結ばせていただいております。現在は、全てお断りしている状況です。資料を送って欲しいと連絡をいただきますが、一度もお渡ししたことがありません。

現在のFC契約者の方々は、花田の考えを充分に理解し、柔軟な対応ができ、ブランドを大事にして下さいます。そういう点では、他企業のFC展開とは異なるのかもしれません。

年内にあと10店のFC出店を計画しています。9月に直営店を出しますので、年内に計27店となる見込みです。

最も売上の多い道頓堀店は、95席ですが、昨年12月には約5千万円を売り上げることが出来ました。月坪売上は、約60万円です。さすがに夏場は売上が落ちますが、鍋以外のメニューも多数取り入れていますので、夏場の売上げは繁忙期の約2割ダウンに収まっています。


Chanko Dining 若」新宿店

 

大森さんの飲食との出会いは。

 実は、叔父が日本調理師協会の人間で、天皇陛下の料理番でした。高校生の時、夏休みなどそこに預けられて下働きをしていました。下駄が飛んできたこともありましたけど。(笑)

18歳の時から、様々な業態の飲食店を転々とし、いろいろなことを経験させていただきました。その後、25歳の時にある空間プロデューサーに師事し、大型プロジェクトの立ち上げに携わることも出来ました。とてもいい勉強になったと思います。

 

花田勝さんとの出会いは。

共通の友人の紹介で2001年に出会いました。「工事現場だけでも見て欲しい」と依頼を受け、現場を見に行きました。Chanko Dining 六本木本店のオープンの一ヶ月前です。工事が当初の計画よりも遅れ、メニューも決まっていない状態で収集がつかなくなっていました。「このままで、本当に店が開くのだろうか」という時にお手伝いをさせていただいたのが始まりです。

花田と会った時、彼のアグレッシブさに打たれました。すごく素直で、腰が低く、人間の当りもいいし、おいしいものを良く知り、人脈も豊富です。花田勝のバックボーンを利用させていただくとはっきり言い、花田にも腹をくくってもらいました。よくあるタレントショップだったら止めましょうと話しました。花田が真面目だったので私も本気でやる気になりました。

花田は「相撲を引退したら、どうせちゃんこ屋をやるんだろう」という目で見られてきました。しかし、花田は「ちゃんこ屋やるのだったら一番になりたい」「食の世界で本気になろう」と考え、1ヶ月話し合ってきてようやくスタートラインに立てました。「流行りモノで終わりたくない。」、二人の思いは同じです。話題にしていただけるのはとても嬉しいですが、我々はサービスマンとして、全員がいつでもトレンチを持つと話しをしています。

Chanko Dining 若」渋谷店

 

昨年の花田バッシングが辛かったそうですね。

親方が亡くなられて、花田自身、店舗、また店に関係ある者、タブロイド誌やワイドショーで興味本位にあることないこと報道されました。報道をご覧になられたお客様が多数ご来店されても、それに対して私達のサービスが追いつきませんでした。売上は上がりましたが、満足のいくサービスを提供することができなかったので、嬉しくありませんでした。しかし、この辛い時期も花田は店に立っていましたし、お客様のテーブルを回っていました。ですから、スタッフは1人として離れて行かなかったですね。それで自信を持ちました。バッシングがあったからこそ、花田を中心に1つになれました。花田もスタッフを守らなければいけないし、スタッフも花田を守らなければならないと思い始めました。例えるなら、花田は、会社という部屋を持てたのだと思います。

Chanko Dining 若」六本木本店

 

サービスのレベルを上げるためには。

よくある話です。セミナーやってトレーニングやって。ただ1つ違うことは、核となる人間の信念が違うことではないでしょうか。教えて終わりではなくて、教え続けています。また、常に危機感を持っています。手抜き、妥協は一切許さず、いつも勝負だということを常日頃教えています。クレームを対処せず放っておくことは一切ありません。毎日、稽古するのと同じことです。


 

花田さんと大森さんの役割分担は。

花田が、宣伝、お客様のケア、そしてコンセプトの立案、最終承認します。花田は、飲食業界の経験は少ないですが、飲食を運営されている方が考えつかないようなアイデアをたくさん持っています。でも方向性は間違っていません。食に対する思いもとても強いです。時間が許せば、海外視察にも行きますし、食に関しても、経営に関しても、日々勉強しています。

私は、お店というより花田自身をサポートしています。花田の考えたことを商業的にどうやって大きくしていくのかを考えています。相撲部屋のちゃんこはおいしいのに今までメジャーな商品ではありませんでしたが、私たちはそれをメジャーにしたいと思いました。ようやく認知されましたね。(笑)花田からは思い立ったら24時間いつでも電話がかかってきます。(苦笑)花田は私達を信頼してくれています。私は花田がイメージした店になったかいつもハラハラドキドキしています。花田は今日も店舗を飛び回っています。

 

株式公開は予定していませんか。

さあ、どうでしょう?ただ、花田は社員と社員の家族、全員の幸せを考えなければならない。いずれ決断を迫られる時が来るのではないでしょうか。現時点では、第三者が入ってきて花田の意見が弱まるのは困ると私自身は考えています。数多くの金融機関や投資会社から出資のお話をいただきますが、ドリームアークは人を育てる会社です。そして、私たちはただのちゃんこ屋と戒めています。

 

今後の展開は?

2人でやってきて4年が経ちました。すごくいい人に出会ったと私は感じています。まだまだ、二人でやりたいことがいっぱいあります。夢を話し合っていると1年以内に実現してしまう。夢を語ると、絶対に実行しなければならない、というルールがあって、やたらと夢を語れないのですが(笑)。


「66亭」を5/22から新業態としてメニュー改定します。カジュアル感のある内装でアッパーな肉質。半年やってきてやっとブレークしたかな、という所です。現在トントンの状況ですが、メニュー改定により良くなりますよ。オープンなFCパッケージとして販売していきます。6月にFC1号店が新宿歌舞伎町に出来ます。「若」と同じように、「66亭」も花田のことを分っていただける方にオーナーになってもらいたいと考えています。


今後は、団塊の世代に向けて、おじいちゃんやおばあちゃんが孫を連れてくるシーンを狙っています。広告宣伝についてもその方向に転換していきます。花田を単なるちゃんこ屋のオヤジで終わらせたくない。まだまだ行きますよ(笑)。


花田はほぼ毎日、3〜4店舗を巡回しています。気軽に、お客さんと一緒に写真を撮ったりサインしたりしています。でも、花田が店に来なくてもお客が来てくれる店を作りたいですね。

また、韓国以外の海外も出店したいと思っています。上海、ニューヨーク、ロサンジェルス、ハワイで出店を検討しています。我々の業態のメインは鍋ですが、日本の「若」と同じようにスタッフがお客様のお席でお鍋をお作りして、取り分けするサービスを考えていますので、海外でも、私たちのちゃんこは受け入れられると思います。

 

最後に、大森さんのモットーは。

花田の言っていることを具現化することです。世の中の情報と花田の考えをミックスするよう努めています。昔は我が強かったのですが、今は花田の女房役に徹しています。花田と出会って、初めて、この人間にはかなわないと思いました。私は相撲には全く興味がありません。そんな世界に身をおいていた人間と身をおいてない人間が合わさると面白いかな。今まで仕掛けだけを作るような仕事をしていました。しかし、花田と出会って、最後まで見届けたいと思う店が作れるようになりました。初めてかなわない人間と出会いましたね(笑顔)。

 

ありがとうございました。

 

大森 幹也(おおもり かんや)

 数々の店舗をプロデュース。「第66代横綱 若乃花」こと花田勝氏と運命的な出会いをし、氏が会長を務める株式会社ドリームアークの社長に就任。二人三脚で「Chanko Dining 若」を超繁盛チェーンに育て上げた。今後も、飲食フィールドで花田氏の女房役として活躍を続ける。


株式会社ドリームアーク http://www.dreamark.co.jp/

インタビュー 安田正明 2006年5月9日


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