・神奈川県基盤の居酒屋チェーンがカフェ風で出店
東京から一番近い海水浴場、湘南のビーチの海の家がおしゃれに進化している。
単なる更衣室兼休憩所ではなく、涼しい潮風や潮騒の音を楽しむ、大人の“リゾート飲食店”とでも呼ぶべき新業態が、同時多発的に出現しているのだ。
日本で一番集客力のある海水浴場は、小田急、江ノ電、湘南モノレールの3線の駅を有する、藤沢市の片瀬海岸だろう。反面、片瀬海岸は高校生、大学生、専門学校生、フリーターといった、10代、20代前半の遊び場というイメージも強かった。
しかし、大人がゆっくりできる居場所をつくろうという動きが、周縁部のほうに位置する海の家から起こってきている。
片瀬西浜に今年初めて出店した「海カフェ WAN」は、厚木市を本社に、神奈川県をはじめ近畿以東の各地に、居酒屋をチェーン展開するオーイズミフーズの海の家だ。同社は、古民家風居酒屋「わん」84店のほか、カジュアル居酒屋「湘南いちば」5店、「千の庭」6店、隠れ家居酒屋「あじかぐら」2店、炉端風居酒屋「かっこ」4店を持つ成長性の高い外食企業だ。
「海カフェ WAN」
夜の業態を得意とするオーイズミフーズではあるが、カフェという業態を、しかも海の家で初めてチャレンジしているところが面白い。席数は90席。更衣室、シャワー、ロッカーを完備している。出店は7月1日から8月31日までだ。
座り心地快適な革製の白いシートやクッション、テーブルなど、インテリアはすべてオーダーメイド。同社のデザイン室でデザインを決めて、発注したもので、同社の他の店と店づくりの手順は変わらない。スタイリッシュで都会的な仕上がりになっており、風通しがいいので、浜風が心地よい。
「海カフェ WAN」店内
「弊社が神奈川に本社のあり、一番近い海は片瀬江ノ島ということで、出店してみました。居酒屋『わん』が大人の女性をターゲットにしているので、大人の女性にくつろいでもらえる空間づくりをしています。カップルやファミリーにも、安心してもらえるようにしていきたいと思っています」と、河辺牧子店長は語る。
地元の顧客も多く、犬の散歩のついでに立ち寄る常連もいるそうだ。
カウンターで注文して、席でフード、ドリンクを待つ形式で運営している。
フードはいわゆる“カフェめし”スタイルだが、単品1000円、ソフトドリンク付きセットで1200円と、周囲の海の家がラーメン500円くらいで提供していることを考えれば、価格はかなり高めである。すべてが、海の家のための新開発メニューで、人気の「わんfuタコスロール寿司」は1日10食の限定品。タコライスを太巻き状に巻いた寿司で、海苔で巻いた上に、卵で巻いている。そのほか、「海老とアボガドのサラダライス」、「タイ風レッドカレー&海老衣揚げ」など9種類のご飯物と、パスタが4種類ある。
デザートでは、ゴージャスな3人前はある、ボリュームたっぷりの「デコモコ氷」が、お勧め品。7種類あるが、たとえば「トロピカルMIX」(1000円)は、かき氷の上にマンゴーとフルーツのミックス缶とナタデココを乗せ、その上からカクテル「ブルーハワイ」とイチゴのシロップ、キウイなど4種類のソースをかけ、さらにバニラアイスを乗せたもので、新感覚のおしゃれな大人のかき氷と言えそうだ。
「トロピカルMIX」(1000円)
また、オリジナルのカクテルも14種類あり、飲み比べてみるのも楽しそうだ。
・ホストクラブが経営するバリスタイルの海の家登場
片瀬西浜の海の家は、海水浴場組合で骨組みをつくった、床面積がほぼ同じ大きさの施設に各店が入居するので、横に並ぶ一種の商店街のように見えなくもない。
そうした中で、各店の工夫が見られるのだが、ユニークなのは、バリ島の布、カーテンをふんだんに使った、バリスタイルの海の家「バグース」だ。
「バグース」
経営は歌舞伎町や大阪ミナミでホストクラブを経営する、ドルチェッツアーグループで、店員として働いているのは、ホストと、つながりのある大阪・北新地のキャバクラのキャバ嬢だというので、ホストやキャバ嬢と仲良くなりたい人には、いい店かもしれない。
「今回は初出店ということもあり、時間もあまりかけられず、お祭りの時の装飾って感じの店になりましたが、来年以降、もっとバリらしさを追求していきたいです」と意欲的に語るのは、オーナーの緒方弘氏。
緒方氏は10年前に大阪で、現在も本業であるIT関係で起業し、金融、歯医者、エステティックサロン、ホストクラブと、さまざまな事業を手掛けている起業家。バリ好きが高じて海の家を出した模様だが、バリから招いた家族が店を手伝ったり、バリのグッズを販売したり、メニューも「ナシゴレン」、「ミーゴレン」、「ミークア(インドネシア風ラーメン)」などとバリ色を出したりするなど、目を引くリゾートらしい店だ。
「バグース」店内
また、週に1回は、クラブデーを設けている。午後3時か4時頃から、机、椅子を取り払ってスタンディングで踊れるようにする。クラブデーでは、バリムードとは異なり、音楽はトランスが主流となって、横浜、横須賀あたりからも広く人が集まるという。
クラブデーでは、完全に従来の海の家の概念ではなく、まさに海岸に夏限定で開設したクラブとして運営していると言っていいだろう。出店は7月1日から8月31日まで。
そのほか、片瀬西浜では、都内で表参道「ニドカフェ」、恵比寿「ヌフカフェ」、代官山「オウカフェ」などを運営する、カフェブームの火付け役の1つだったイーストミーツウエストがプロデュースする、「オウカフェ湘南」も出店している。
「オウカフェ湘南」
今年ですでに3年目だが、料理、居心地において常にハイレベルな店を出す同社だけに、インパクトは大きく、固定客も増えている模様である。
片瀬西浜では、2004年の「新江ノ島水族館」リニューアルオープンより、周囲に20代後半から30代のカップルや団体、30代、40代のファミリーを狙ったおしゃれな店が増えている。そうした流れと、海の家の進化がリンクしている。
・予約制のスタイリッシュなリゾート空間「KULA」
さて、真夏の晴天の土曜、日曜ともなれば、身動きできないほどの込み方となる片瀬東浜であるが、浜伝いに300メートルほど東に歩けば、市境を越えて鎌倉市に入って、腰越海岸と地名が変わる。
このあたりまで来ると、人の数も落ちついてくるが、今年初出店の「KULA」は、デザイン性の高いアルミのクールな建築が印象的な、海の家らしからぬ、非常におしゃれな空間だ。これまでの湘南の海にはない、アジアのリゾートのような、ゆったりとくつろげる空間を提供することをコンセプトとしている。
「KULA」
企画にあたった、明日の人という会社の本山淳平社長は、横浜出身の29歳で、子供の頃から湘南の海に親しみ、親類が腰越海水浴場組合の八木下組合長と懇意であったことから、腰越の活性化を行っていくという経緯で、出店した。明日の人は、本山氏が博報堂より独立して一昨年に都内で設立し、企業PRや企画を行っている会社だが、「KULA」の営業期間中は本山氏本人が現地に詰めている。
オープンは7月15日で、8月31日まで営業している。
「交通の便を考えると、数の勝負では片瀬にはかないません。観点を変えて腰越の価値を考えてみたときに、東京に住んでいて、忙しくてまとまった時間を取って、沖縄や海外にまで行けない人のために、海を見ながらゆっくりできる場所を提供できないかと考えました」と本山氏。
建築は目黒のデザイナーズホテル「クラスカ」などを手掛けた、都市デザインシステムが担当している。
「KULA」店内
(左)プロデューサーの本山淳平氏、(右)運営にあたるトランジットジェネラルオフィスの木村学也セールス&マーケティングディレクター
「KULA」は外観が目を引くだけでなく、内容的にも従来とは異なった方法を採用している。
たとえば、毎日40人の予約をメインとしていること。駐車場とドリンク1杯、水洗トイレ付きの施設利用(シャワー、ビーチベッド、パラソル、ロッカー、マッサージチェアなど)が込みで、1万1000円となっている。
フード及び運営を手掛けているのは、「クラスカ」や青山のカフェ「オフィス」の運営を行っている、トランジットジェネラルオフィス。
人気のメニューは、名物のシラスを使った「釜揚げシラスのピッツァ」、「シーフードのココナッツカレー」など。「ハワイアンスペアリブ」、「パストラミビーフとチェダーチーズのサンド」、「アヴォガド&シュリンプのサンタフェサラダ」、「ジェラート」(4種)といったように、カフェレストランの食事を提供している。
「釜揚げシラスのピッツァ」はほろ苦く、「チャイナブルー」と合う。
ドリンクはソフトドリンクのほか、ビール、ワイン、カクテルなども楽しめ、カクテルはバーテンダーがシェーカーを振って提供する。
食事の顧客単価も、3000円〜5000円と高い.。
予約した顧客はフード、ドリンクを別途注文することになるので、トータルな顧客単価は1万3000円〜1万5000円になる。確かにそれに通常の海の家の2倍〜3倍と高いが、朝、荷物を「KULA」に置いて、水着に着替えて、のんびり本を読んだり、海を眺めたり、江ノ島や鎌倉を散歩がてらに観光したりするにはいいのかもしれない。駐車場の心配をしないで良く、混まない設定なので、湘南を敬遠していた少々の金銭的余裕のある世代にとっては、ありがたい存在だ。
実際にオープンしてみると、営業の成果もあり、アパレル企業の貸し切りパーティーも多く開かれ、連日予約を取るのが難しい状況と好調が続いている。
また、朝9時から営業しているので、犬の散歩のついでに朝食を取ったり、コーヒーを飲んでいく、地元の常連も結構いるのだそうだ。
フリーの顧客向けに約60席も用意されているが、予約を中心とする発想の転換で、新
しい海水浴客というよりも、水にはあまり浸からずに、江ノ島が見える海岸の景観を眺めて、“水際浴”あるいは“潮風浴”を楽しむ新しい顧客層を開拓したと言えるだろう。
出店するのに1000万円ほどの資金を要したそうで、期日が終わって解体するのがもったいないほどである。しかし、本山氏によれば、いろんな企業がスポンサーに付いて、資金の半分くらいは回収したそうだ。このあたりのやり方も、今後の海の家の展開に影響を与えていくような予感がする。
・大人の新しい遊び場、ライブハウス海の家が集客好調
湘南地方はミニFM局が幾つも開局していることを見てもわかるように、音楽の盛んな土地柄だが、海の家=更衣室兼休憩所という常識を打ち破る、ライブハウスの海の家「音霊(オトダマ) SEA STUDIO」がこの夏、逗子市の逗子海岸にオープンしている。
「音霊(オトダマ) SEA STUDIO」
「音霊(オトダマ) SEA STUDIO」店内
オープン期間は、ビーチが開いている、6月24日から8月31日までである。
スタンディングで400人を収容する、80坪の施設は人気建築家、SUWA製作所の眞田大輔氏によるもので、海の家には珍しい黒い外観と、高い天井が印象的である。
「音霊 SEA STUDIO」の母体となった株式会社音遊は、地元・逗子出身の2人のミュージシャン、クレイ勇輝氏、井関靖将氏によって、今年4月に設立された、逗子のイベント企画会社。2人は「キマグレン」という、夏と海を連想させるサウンドをコンセプトとしたデュオを2005年に結成して、音楽活動を行っている。井関氏によれば、「逗子の街を盛り上げるために、海の家を2人で企画した」とのことだ。
NPO法人グッデイとのコラボレーションにより、「おしゃれでポップな社会貢献」をベースに、毎週土曜日と8月31日に、ビーチクリーンパーティーを開催。市民自由参加の浜の清掃ののちに、パーティーを開催している。
昨年も2人は海の家の企画を行っていたが、今年は初めて独力で出店した。株式会社音遊としての海の家も、もちろん初めてである。
驚くのは、ほぼ連日、イベントが始まる時間はまちまちながらも20時までの時間帯の中で、多彩なゲストを招いたライブを行っていることだ。しかも、一青窈さん、ROLLYさん、大沢伸一さん、birdさん、MOOMINさん、オレンジ・ペコー、クラムボンなどといったような、ヒットチャートに載るような、メジャーなミュージシャンが出演している。
音楽のジャンルは、ヒップホップ、レゲエ、ポップス、ハワイアン、サーフロック等々と多岐にわたるが、波の音と融合するという「音霊 SEA STUDIO」のコンセプトをもとに、アコースティックなサウンドを選んでいる。メジャーなミュージシャンのライブは、予約でほぼ埋まってしまう人気だという。
注目すべきは、フードにおいても、代々木公園のイタリアンレストラン「LIFE」とコラボレーションして、本格的に提供していることだ。フードはランチタイムより提供している。
人気の「タコライス」は、特製ミートソースの味が絶妙で、イタリアン的なアレンジである。「パニーノ」も、特製ソーセージの味が際立っている。値段はいずれも800円だが、夜は1周りサイズが小さくなって500円となる。ドリンクは、ソフトドリンクはもちろん、アルコールは基本的なものをそろえており、カクテルはさまざまな種類のものを取りそろえている。
「タコライス」
「音霊」の活動は、夏のビーチに大人の遊び場を提供するのみならず、社会事業の観点からも、新しい海の家のあり方を問うている。それに共感して、多くのミュージシャン、観客を集めているのだろう。
・かつて葉山で営業していた名カフェが夏限定で復活
逗子から三浦半島を南下して、葉山町に入ると、海水浴場は家族で楽しむファミリービーチの色が、さらに濃くなる。
葉山町の森戸海岸に、7月1日から8月31日まで、オープンしている「LAH」は、元々4年前まで、約4年間、同名のアジアンカフェを、すぐ近くの海岸を走る県道沿いで営業していた店だ。
その後、夏期のみ、海の家を出店していたが、昨年は休業。今年は2年ぶりの復活となった。
「LAH」
内装はアジア風にポップな感じをミックスさせて、チープでくつろげるカフェ空間をつくりあげている。席数は60人くらいまでなら入る。更衣室とシャワーが付いており、一般的な海の家としても利用できる。店舗は、奥さんのスケッチをもとに、地元の大工や職人で組み上げた。
「LAH」店内
オーナーの大宮店長によれば、「2カ月限定でカフェを復活させたということです。内装はかつてはポップな要素はなかったので、ちょっと雰囲気は変わっています。フードはカフェの頃と変わっていませんが、少し集約しています」と語る。
各種ソフトドリンク、ソフトクリームはもちろん、ビール、焼酎、日本酒、カクテルといった酒類も提供。朝11時から、夜1時まで営業している。
「LAH」の顧客は、カフェの頃からの常連を含めて、地元の住民が多い。最近、葉山では保養所を取り壊して、マンションの建設が相次いでいるが、30代、40代の新しい住民も多く訪れているという。それに、土日は、東京や横浜からの海水浴客が加わるといった感じだ。土日を中心に、葉山在住のアフリカ音楽に影響を受けた、アコースティックなミュージシャン、KAZZさんらのライブを行っている。
人気メニューは「ナシゴレン」、オリジナルの「ラチカンポテト」などで、特に「ラチカンポテト」は皮つきポテトを揚げて、クリームチーズとスイートチリをかけた甘辛い逸品で、カフェの頃から店の名物だったメニューだ。
「ラチカンポテト」
大宮店長は今後、元のカフェの場所で、不動産業を開業する予定で、夏は海の家「LAH」を毎年、継続させていきたいと考えている。昨年、休業していたのは、修業のため不動産屋に勤めていたからであった。独立を目指して退職したので、今年は「LAH」を復活できたとのことだ。
ところで逗子から葉山にかけては、ここ2年ほどの間に、東京の影響を受けたおしゃれなダイニングが増えている。逗子は20代から30代、葉山は30代から40代をメインに狙った店が多いが、そうした背景も、新タイプの海の家が生まれる素地となっている。
・モール型の大型複合施設「チャイナクイックリゾート」
さらに、湘南のビーチのうちでも、最も商業化が進み、モール型の複合的な海の家も出現しているのは、鎌倉市の由比ガ浜である。
「チャイナクイックリゾート」は、中華のデリバリー&テイクアウト店「チャイナクイック」を都内と埼玉県で31店、中華料理店を6店展開している、チャイナクイックインキュベイトが経営する、200席を擁する、最大級の海の家である。
「チャイナクイックリゾート」
この海の家は、「チャイナクイック」が中華レストランを営業しているだけでなく、多くのテナントが入った複合施設になっているのが、大きな特徴だ。まず食事の上では、「チャイナクイック」がシェフが実際に鍋を振って調理をして、麺、ご飯物などデリバリーと同じ27種類のメニューを提供している。
そして、サントリーが協賛した「スカイウォッカバー」があり、コーヒーでは「タリーズコーヒー」、テイクアウトで「佐世保バーガーgets」が出店している。
「スカイウォッカバー」
「タリーズコーヒー」
「佐世保バーガーgets」
フード以外にも、マッサージの「てもみん」、ネイルの「ネイルクイック」の店舗のほか、テレビ朝日、専門チューナーで自宅のテレビで好きな映画が見れる「ゲオ@チャンネル」などが宣伝ブースを開設するなど、賑やかである。
また、エイベックスがステージを設け、所属のアーチストらのライブを連日のように行っている。“エロカッコいい”なる言葉をはやらせている、倖田來未さんが7月26日に新曲と写真集のPRを兼ねたシークレットライブを行ったほか、8月8日にはタッキー&翼もシークレットライブを開いている。
オープンは7月8日で、8月31日まで営業している。シャワーやロッカーといった施設も完備している。
朝8時から夜の10時まで営業しており、「1日遊んでもらえるエンタテインメントを目指した」(チャイナクイックインキュベイト営業企画本部・矢田清美課長)という。矢田氏によれば、「7月は天候の関係でもう1つだったが、8月になってイベントと、食事・コーヒーの相乗効果が出てきた」とのことである。
「チャイナクイック」は昨年、単独で海の家を初出店したが、終了した時点で、高桑雅彦社長がスペースを2倍に広げて、総合的に1日遊べる施設を次回提案するプランを練り、各企業に声を掛けるなど、1年近く準備期間を取って企画を進めてきたのだという。
今のところ、神奈川県には「チャイナクイック」は1店もなく、都内以外には埼玉県所沢市にしか全国的にも店舗がないが、海の家の効果で、神奈川県のみならずテレビなどの報道を通じて全国にその名が知られる、絶好のチャンスになっており、狙いどおりにうまく運営できている印象だ。
・宣伝のうまさでは抜きに出ている由比ガ浜のビーチ
そのほか、由比ガ浜では、都内と神奈川県で営業するタイ料理店5店が出店した屋台村「リトルタイランド2006」も営業しており、タイ式マッサージやタイ雑貨の店も出店して、ビーチを盛り上げている。
「リトルタイランド2006」
FMヨコハマが出店したり、雑誌「ブレンダ」と提携した海の家など、由比ガ浜のマスコミ、広告代理店を引き入れた宣伝のうまさは舌を巻くものだ。
FMヨコハマの海の家
ちょっと歩いただけでも、ミツカンの果実酢ドリンク「スノモ」の宣伝ガールや、ウォッカ1杯500円の売り子さんに呼び止められた。これだけの商業的成功を見せつけられると、海の家の概念を変えざるをえない。
1杯500円、ウォッカを宣伝する販売ガール
ビーチで試飲を勧めていた、ミツカン「スノモ」お宣伝ガール
以上レポートしたように、湘南を発信源に、地元住民やクリエーターを巻き込んで、おしゃれに変身した海の家は、大都会に近いリゾートの新しい形をつくりつつあるようだ。
湘南の海は、20歳になったら卒業といったイメージは払拭されつつあり、片瀬西浜・腰越、逗子・葉山のように、20代後半から30代以上のグループ、カップル、ファミリーがゆったりと癒される空間へ、あるいは由比ガ浜のようなトータルなアミューズメント空間へと変容している。
夏休みには日本から多くの人が海外のビーチへと旅立つが、将来的には、逆に海外から日本のビーチリゾートで過ごすのがカッコいいといったような、夏の海での過ごし方が発信できれば素晴らしいのではないかと思う。
今の勢いを見ていると、欧米の文化を早くから受け入れて、地元に根づかせてきた湘南地域ならば、それも不可能なことではないだろう。
取材・執筆 長浜淳之介 2006年8月12日