・ターリー屋は、インド料理を食べたことのない人向け。
わかりやすくて、入りやすいが店のテーマです。
日本には結構な数のインド料理店が存在します。しかし、そのほとんどはインド、パキスタン、ネパールなどの方が経営しています。数少ない日本人経営者の店舗でも、カレーをつくり、ナンを焼くのは、ほぼインド、ネパール出身の方たちが独占しています。つまりインド料理の調理技術はほとんど日本人に流れていません。かと言って、インドに勉強に行く日本人もほとんどいません。従って、現在の日本のインド料理店は、インド人がインド人の発想で作っている。インド通の人だけを対象に作っている店舗がほとんどといえます
本格的なインド料理を頻繁に楽しむ方は100人中2〜3人ではないでしょか。ターリー屋では、あまりインド料理を食べたことがない方、もしくは一度も食べたことの無い方を対象にしています。つまり、100人中97,8人がターゲットです。客層が異なるので、隣に本格的なインド料理店が出来ても全く怖くありません
ターリー屋では高校生がぶらりと入れる。しかも友達と二人で週に何回か利用することも日常的に見られます。「インド料理を食べに行く」という肩肘張った形ではなく、「カレーを食べに行く、ナンを食べに行く」感覚で利用して欲しい。
「好きなカレー屋は?」と質問された時に1番に名前が挙げられる店になりたい。本当はよく行ってるのに、恥ずかしくて店名を挙げられない店がありますよね。2番目は、3番は、と聞いていき、実は4番目の答えが本音だったりします(笑)
その為には、聞いた人が、おしゃれでカッコイイと思う店でなければならない。飲食店の場合のかっこよさはやはり「本物へのこだわり」だと思う。そこで、提供する料理はもちろん見た目も本物志向できっちりした服装、白い帽子に白いコック服を取り入れています。
コーヒーショップで例えると、スターバックスになりたい。
店頭のメニュー
フードメニュー
ドリンクメニュー
・ナンは店内のタンドーリ釜で日本人が焼く。
何をおいても本物が重要です。お客様から「日本人向けのカレーですか?」とよく聞かれます。しかし、インドのレシピで作った本物のカレーなんです。本物は、インド人だけでなく、誰が食べても美味しいんです。お客様へ上手に本物だと伝えたい。伝える努力を惜しまないようにしたい。
フランチャイズで展開しますが、日本人にタンドーリ釜でナンを焼いてもらいます。3ヶ月の研修期間で焼けるようになります。
実はピザを焼くより難しい。何もトッピングできないからごまかせません。
ちょっと油が付いただけで、その部分が焦げてしまいます。今、うちで雇っているックはネパール人なんですが、10代から焼いているので、彼にとっては何が難しいのか判らない。だから、日本人の素人に上手に焼き方を教えられない。ここが最大のネックでした。
しかし今は、自分も含めて、素人からスタートし短期間で技術を習得した日本人います。はじめてナンを焼く人が何につまずくのかがわかります。また、当然ながら細かいニュアンスも含めて日本語で教えられます。この体制が整ったことで、インド人を必要としないインド料理チェーンが可能となりました。
釜の中。西新宿7丁目店は炭で焼くが、他店はガスを使用。
・日本人の感覚で店づくり。
ターリー屋では、全てのナンはオーダーが入ってから焼きはじめます。しかも焼き上がってから15秒以内に提供することにこだわっています。熱くて持てないくらいですが、日本人にはこの熱さが美味しさにつながります。立ち上がるバターの香りが食欲を刺激します。この感覚は、他の多くのインド料理店では、なかなか判っていないようです。少し冷めてしまったナンを平気で出す店が非常に多いのが残念です。
手で食べる文化があるインドでは、ある程度冷ましてから提供するのが当たり前なので仕方がないのかもしれませんが・・・
ターリー屋では、食べ放題でも、15秒以内に熱々の出来立てを提供します。
・販促会社を設立し売上高10億に。
明治屋で6年間サラリーマンを経験した後、28才で独立しました。
元々レストランを経営したかったんですが、軍資金を貯めるために販促会社を立ち上げました。時期はビール戦争の時代。酒メーカーから仕事が山のように来ました。
スーパーの酒売り場にマネキンを派遣して、試飲販売を行う仕事です。売りは、「売り切るまでやります」。とにかく体を張って信用を勝ち取っていました。時には売れ残ったら、社員をサクラにして買い切るなんてこともありました。当時は酒メーカーのほぼ全部と取引をしていました。
遅刻を出さないことも売りでした。派遣スタッフには仕事を始めるまでに3回会社へ電話をかけさせます。起きた時、家を出る時、現場に着いた時の3回です。電話がかかってこなければトラブル発生と見て、こちらから電話を掛けるんです。そのため担当者が前の晩から泊まり込みで待機するという日々が続きました。1日に約500人を異なるスーパーに派遣するんですが、遅刻をゼロにするために色々な仕組みをつくりました。このことで、徹底させ続けて初めてノウハウと呼べるんだと実感しました。
私は、プレイングマネージャーとして、ずっと若者達と体を張って仕事をやってきました。
・販促費カットで会社を整理。
酒メーカーの販促費が一気にしぼんで行ったんです。販促費カットです。大阪にも支店を出したりしていました。気がついたら簡単には小さくなれない体制になってました。
いつも無理をしていました。とりあえず、どんどん仕事を取って、後でこなす方法を考える。そんなやり方でいつも何とかなってきました。過去に超えたことがあるから、無理をしてこなしていける。迷ったら「やる」です。
しかし、社長の私は本当にできるのかと内心はヒヤヒヤのし通しです。
年末は特に需要が多く、毎年「次のクリスマスは越せるか?」と無事に仕事がこなせなければどうしよう、と胃を痛めてました。
余力のある内に会社をたたもうと決めました。仕事が減って、同じ給与体系で従業員に払えなくなり、従業員から不信感を持たれ、モチベーションも下がりました。歩合制で20代で月40〜50万円稼ぐ社員もいましたから、意欲は下がりますよね。
売上が激減して社員のモチベーションが下がれば会社は終わってしまいます。結果的には金銭的な迷惑をかけずになんとか会社を清算する事になりました。
・人と同じ業態はやりたくない。
人と同じ事をやるのが嫌いです。同じ事をやっても勝つのは難しいです。
インド定食は人から「いいね」と言われてたらやってなかったですね。ひねくれてるんでしょうか?「そんなの絶対上手くいくわけがない」と言われると燃えるんです。
販促の会社をたたんだ後、1年間のインタバルがありました。もともと、飲食店をやりたかったこともあり修行と思い、ある居酒屋でアルバイトを経験しましたが、人を沢山使い、儲からない業態だと思いました。
少人数でできる業態を探したんです。そこで出会ったのがインド定食です。
マスコットの3輪車
・「ターリー屋」をワールドスタンダード業態にする。
夢は世界に打って出ること。インド料理店のど真ん中でやって勝ちたい。インド料理店の多いロンドンなどに出したい。
国内では、3〜5年でフランチャイズで100店舗にしたい。直営の実績から判断するとビジネスエリアに出せば高い確率で成功できると思います。今、新宿(ビジネスエリア)に3店出店していますが、全て黒字で推移しています。
現状では夕方5時までに一日分の売上を稼ぐことを目標に運営しています。お陰様で、各店舗ともほぼ毎日実現できています。昼の売上で十分なんです。夜は休む。ビジネスエリアにぴったりです。ただし今は夜もやっていますが。
今の3店は土日も営業していますが、実は平日より儲かったりする。他の店が閉まっているからです。皆と違うこと、やってないことを狙うべきです。
ターリー屋の業態は、私が始めた4年前には誰一人「いいね」と言ってくれなかった。でも今は3店全てが黒字で、フランチャイズ展開を始めました。
「ターリー」とはお皿のことです。『1000円以下のワンプレートスタイルのインド料理定食屋』が最初のコンセプト。本物のインド料理を定食スタイルで、リーズナブルに且つ気軽に楽しめる業態を目指しています。
恐らく日本人でナンを焼けるのは今、50人くらいしかいません。フランチャイズに加盟して、51人目、52人目・・・とナンを焼く技術を広めて行きたい。
収益的な魅力としては、小規模な店舗でも売上が稼げることです。第1号店の西新宿本店では17坪で月商約650万円です。1日10回転以上まわっています。
将来は、日本発のインド料理店フランチャイズとして世界進出を目指します。そして最後に、「そんなの絶対にムリ」と言って欲しい。
取材 安田正明 2006年9月22日