フードリンクレポート


居酒屋日本一は「寅”衛門」(どらえもん・名古屋)がリベンジ。

2007.3.16
 巨大化した第2回居酒屋甲子園。居酒屋で働く若者にとって、居酒屋は学びの場との主張が、多くの若者を引き付けた。今年の日本一は、朝礼ブームの元祖「寅”衛門」。2回連続出場でリベンジを果たした。


日本一になった「寅”衛門」のスタッフ達


3/13、横浜に5千人が集結。

 第2回居酒屋甲子園は、天候に恵まれた3/13(火)にパシフィコ横浜にて開催された。全国から居酒屋の経営者やスタッフ達が5千人も集まった。昨年の第1回の約3倍もの観客を集め、NPO法人「居酒屋甲子園」とその理事長、大嶋啓介氏への注目がこの1年で一気に拡大した。

 全国から739店舗の居酒屋がエントリー。2006年10〜12月の3ヶ月間、覆面調査を実施。各回200点満点で、その平均点を競う。全国を3つのブロックに分け、各ブロックの成績順位1位、2位が大会に進出。その6店舗が、5千人の前で「店舗紹介VTR」と「成功活動事例プレゼンテーション」を行い、参加した観客が投票。得票数の最も多い店舗が1位となる仕組み。



 ステージに上がった6店舗は、

1)炭火串焼厨房 くふ楽 本八幡店
  千葉県市川市八幡2-13-17 電話047-333-6232
2)KOREAN CUISINE 雑菜
  兵庫県神戸市中央区下山手通2-12-6 ループトウアイイースト3・4F 電話078-321-3340
3)和の惣菜と旨い酒 合点 本厚木店
  神奈川県厚木市泉町2-9 成都ビル2F 電話046-226-5560
4)いなせ 寅”衛門
  愛知県一宮市栄3-7-8 電話0586-26-2388
5)囲酒家 永遠の縁卓
  広島県広島市南区段原南1-18-1 電話082-254-3663
6)東洋酒家はなれ
  群馬県高崎市飯塚町343-1 電話027-370-5405

 全国順位では東海・北陸・信越地区の第1ブロックで1〜4位を独占。そのため、3位の「JIGGER BAR St.Louis」(石川県)と4位「天晴れ〜あっぱれ〜」(新潟県)は、残念ながら特別賞となった。


2回連続出場の「寅”衛門」が日本一に。

「寅”衛門」のプレゼンテーションは、50人以上のスタッフを名古屋から連れて、まずは一糸乱れぬ踊りで観客の度肝を抜いた。昨年の大会でも踊っての表現は多様されていたが、今回は、同店だけ。もともと、同店ではバースデーイベントとして、店内のスタッフ全員で踊って、誕生日のお客を祝うことを行っている。

 その後、店のテーマでもある「おとうさん、おかあさん、わたしを生んでくれてありがとう」をスタッフ2人が体験談をスピーチ。親と反目し長く会話していないという女性スタッフが「寅”衛門」で働くことで、親と話ができ「ありがとう」と感謝のコトバが言えるようになったと発表。観客の涙を誘った。

 最後は、名物の本気の朝礼で締めくくった。大勢のスタッフが声を張り上げて、唱和する様は圧巻だ。

 前回は上位に残ったものの1位を逃した、同店の赤塚元気代表は、何としても日本一を獲りたいと再チャレンジ。そして、見事に1位を獲得し男泣きした。


大嶋理事長から賞状を受ける赤塚元気代表


「寅”衛門」の朝礼


 

投票基準は「最も自分自身にプラスの影響を与えてくれた店舗」

 他の5店舗も観客に与えた感動は負けていない。


お通しを廃止し、お通し代をお客に還元しようと訴えた「くふ楽 本八幡店」


阪神大震災の復興に、美味しい料理で貢献した「雑菜」


まわりの人に感謝の輪をつなげようと訴えた、連続出場の「合点 本厚木店」


オーナーの貧しい子供時代から、共に働く仲間に感謝を教える「永遠の縁卓」


飲食店経営の恩師を称え、スタッフに心から感謝する経営者のいる「はなれ」


 

第3回は、2008年夏

 居酒屋から日本を元気にしようと始まった居酒屋甲子園。この主旨に賛同し、今回も多くの著名外食人も応援に集まった。「サービスの神様」新川義弘氏、吉野家社長の安部修仁氏、「一風堂」社長の河原成美氏、「八百八町」社長の石井誠二氏が会場に参加し、「居酒屋甲子園」の活動を称えるコメントを述べた。

 この会場から日本中に元気を発信していくとともに、居酒屋を「学びの場」として、そこで働く者たちが日本中から集まり旧交を温めるとともに、各人の成長状況を確認し合う場としての役割も持っている。皆が頑張ってるんだから、仲間が支えてくれるんだから、オレも、私も辛くても挫けず頑張ろう、という気持を育む。居酒屋は、現代の寺子屋の役割を果たす。「居酒屋甲子園」は、この寺子屋の総本山と言える。

 働くものが幸せならお客も幸せにできる、とは、最近よく言われる「従業員満足(ES)」の発想。宗教的だと揶揄する意見もあるが、今回の各店舗のプレゼンテーションは、声を大きく張り上げる一辺倒ではなく、様々な表現方法が取られて、店の個性が表れ、好感が持てた。

 苦労話で感動するのは、「おしん」に代表されるように日本人のルーツ。私自身も涙腺が緩んで、何だか心が浄化された気がして、嬉しかった。

 大嶋理事長は、この巨大な影響力を持つようになった「居酒屋甲子園」をこれからどこに持って行こうとしているのか。これからの展開が気になるところだ。第3回は、やや延びて1年半後。何か、考える所があるのだろう。


 

【執筆】 安田正明  2007年3月16日