フードリンクレポート


2017年に100店舗。目立たず手堅く店舗を増やす。
株式会社ベアーズコーポレーション
代表取締役 中嶋 唯雄 氏

2007.6.16
「うの花」「ふくの鳥」など居酒屋13店舗を直営。大手居酒屋チェーンで鍛え上げられ、FC事業でスタート。10年目に直営にシフト。2007年6月期売上高8億8千万円。2017年に100店舗達成に向けて、年々の目標を着々と達成するベアーズ・コーポレーション中嶋社長。目立つ外食企業が多い中で、手堅くいくことの良さを気付かせてくれる。



セントラルキッチンから配送するトラックの前に立つ中嶋社長


フルコミッション営業で修行

 広島で、子供向け英会話教材の営業販売をフルコミッションでやっていました。会社に行くと10円玉を入れて使うピンク電話がずらっと並んでいるんです。電話代、交通費も自分持ちなんです。子供が好きなお話の英語のカセットテープを家庭のポストに投函し、それをきっかけに電話が掛ってくるのを待って訪問営業をします。1本25万円以上の教材です。フルコミなんでバラツキはありますが、週に20万円ということもありました。

 この時学んだのは、50軒まわってダメなら、100軒まわれ。
先輩はローンを組んででも欲しい物を手に入れる、返済するために働く。思ったことは必ず実現させる迫力がありました。売れるまで働く。土日もなく、1年間働きました。

 その会社で出世し、岡山のグループマネージャーになりました。子供のいる家庭の名簿を獲得するため、アンパンマンの映画に協賛し、映画館内でのプレゼントをもらう代わりに住所を書いてもらうという作戦を実行しました。しかし、思うように集まらず、アテが外れて、借金です。

 この時から「こんな高いものを子供に売っていいのか?」と思い始め、売れなくなってしまいました。ネガティブな発想になってしまうともう売れません。


かっこいいビーチハウスを建てたい

 妻の実家が東京だったんで、独立しようと東京に行きました。飲食店で独立しようと思い立ち、修行のために一軒家の懐石風イタリアンに就職しました。ウェイターです。当時はバブルだったので、大賑わいで芸能人も沢山来ました。

 しかし、そこで働くスタッフはモチベーション低かったですね。時間通りに来ないし、店の酒も勝手に飲むし。本当に経営がルーズに感じました。客単価の高い業態は自分には向かないな、と思いました。

 意気消沈して店を辞め、沖縄へ行ったんです。沖縄で働こうかと思いましたが時給が安い。その時、ビーチでかっこいいビーチハウスを見たんです。もう一度、東京で頑張って、かっこいいビーチハウスを建てたいと思うとファイトが湧いてきました。


独立制度に惹かれて居酒屋チェーンへ

 その後、独立制度で実績のある大手居酒屋チェーンに入社しました。

 オープニング募集で新店舗に配属され、洗い場から何から何までやりました。当時人気の居酒屋で忙しかったのですが、人手が少なく大変な苦労した記憶があります。

 5年後、FCとして独立させていただきました。研修制度がしっかりした会社で、節目ごとにに資格試験があり、通常は独立まで10年近くかかるところ、たまたま、立地が悪く、撤退物件があったので、そこをお願いして独立させていただきました。


まずはFCで体力を付ける

 48席のお店、開業当初、月商4百万円が2年後7百万円に上がりました。

 4年後、同じくチェーンのFC、食い処バーを新宿区でオープン。会社の体力が付くまではFCを増やそうと考えていました。独立して3年で止める会社は70%、5年で止める会社は80%。しかし、FCは年間3%しか脱退しない、と聞いていたので、リスクを回避し、成長する道を目指したのです。

 FCでしたが、メニューや出店の段取りまで自由にやらせてもらいました。元々、夜型の業態でしたが、ランチも始めました。料理も他店と違います。看板だけが同じ。自分の業態を作る勉強をしてました。

 この5年間で物件の見方、人・物・金の集め方を勉強しました。そして、有限会社から株式会社に変更。


FCの看板を返上、全て自社業態に 

 平成15年9月に、6店舗目で初のオリジナル業態を作りました。鉄板焼き居酒屋「ほたる」です。。FCだと守られている感じで安心感がありましたね。「ほたる」は第2の創業という想いで開店しましたが、思ったより伸びなかった。

 独立して10年目、平成18年5月に、とうとうFC全店の看板をチェーン本部に返しました。5店あったFC店舗を独自業態の居酒屋「うの花」に変更させました。

 2年後から自社でも独立制度を始めます。今年7月に飯田橋に21坪の店舗が出来ます。これが、独立者の収益モデルとなります。当社で働いているスタッフの内、3分の1は独立したいと思い、3分の1は社長と一緒に会社を大きくしたいと思っています。資金を貯めさせるため、スタッフへの株式分配も始めています。


「一の鳥」店内

「一の鳥」焼き鳥

 
「うの花」店内

「うの花」店内

 
「うの花」メニュー


2017年に100店舗

 2012年には売上30億円にし、2017年には100店舗にします。やりがいと給料が付いてくる会社にしたいです。

 将来の多店舗に備え、台東区根津にセントラルキッチンのある本社も買いました。毎日、ここからトラックで全店に半加工した人気のオリジナルメニューを毎朝配送しています。セントラルキッチン、自社配送は、チェーン店で学びました。

派手な店舗ではないので目立たず、じわじわと収益を上げていきたいです。今、生まれ故郷の山口県の食材を売っています。山口県の郷土料理を紹介することによって、弊社の店舗の個性が出せるとよいですね。

 私は、お客さんを喜ばせるのが好きですし、現場が好きなんです。


<ベアーズコーポレーション・共通コンセプト>

コンセプト ビジネス街に特化した和風ベースの飲食店
ターゲット 20〜40代OL、ビジネスマン
モチベーション ポケットマネーで仲間と気軽に立ち寄れる、飲食+コミュニケーションの場
メニュー 串焼きや鉄板焼き、産地直送野菜など特色あるメニュー構成
雰囲気 木や土壁、和紙などを使用した落ち着く雰囲気と個室空間
サービス お客様重視のホスピタリティーあるサービス、お客様を元気にする活気
客単価 昼820円、夜3200円





中嶋 唯雄(なかしま ただお)

株式会社ベアーズコーポレーション代表取締役。昭和41年、山口県生まれ。平成8年に居酒屋チェーンの独立支援制度を利用してFCとして居酒屋オーナーとなる。平成17年にセントラルキッチン建設。平成18年に全店を自社ブランドに変更。2007年6月現在13店舗を直営。2012年に売上高30億円、2017年に100店舗を目指す。


【取材】 安田正明(やすだまさあき) 2007年6月11日