フードリンクレポート


280円均一の「鳥貴族」、日本一の焼き鳥チェーンを作る。
株式会社イターナルサービス
代表取締役 大倉 忠司氏

2007.6.22
料理、飲み物ともに280円(税込294円)均一料金と、店舗での串打ちにこだわり、若者に人気を博す「鳥貴族」を作りだした。15年近くの歳月をかけて、大阪を制覇。2005年には東京に進出。1000店舗の日本一の焼き鳥チェーンを目指す、イターナルサービスの大倉社長に焼き鳥店の魅力を語ってもらった。



280円均一の看板の前に立つ大倉社長


焼き鳥の魅力を知った

 お酒が好きで、高校時代からスナックに通ってました。スナックで働きたかったが、親に反対され、とりあえず料理の勉強をしようと、大阪あべの辻調理師学校に入学。

 卒業後、大阪リーガロイヤルホテルのイタリア料理店で3年半働きました。調理師志望でしたが、最初はホール係に配属され、接客に目覚めました。

 その後、梅田のパブラウンジで働き、将来はパブを経営したいと思ってました。

 地元に「焼き鳥 大吉」があり、よく飲みに行ってましたが、そこのオーナーに気に入られ、いっしょに独自にチェーンを作らないかと熱心に誘われ、その情に負けて、オーナーの片腕として、3年間で、焼き鳥店を7店舗作りました。


250円均一で、料理もドリンクを提供する「鳥貴族」開店

 25才で独立。オーナーと店舗の展開方法や組織作りの方針で意見が合わなくなったので、ついに独立しました。

 1985年に近鉄俊徳道駅に「鳥貴族」1号店を開店。料理もドリンクも全てのメニューが250円均一の焼き鳥店です。現在は280円(税込294円)です。付き出しも出さない、明朗会計です。20才の時に通っていた炉端焼きが230円均一だったんです。お客として、均一価格が面白かった。

 1号店は、1年間厳しかったです。1年経ってようやくじわじわと売上が上がりだしました。その間、不安でしたが何もしませんでした。元々、販促はしない主義です。オープン時の半額セール2日間だけしかやりません。

 当時は、「むらさき」「つぼ八」など居酒屋ブーム。もう1店出そう。一緒に始めた副社長と2人で資金を集めどうにか2店目を出しました。しかし、2店目が開店する前に、1号店の売上が上がってきたんです。

 2店目はお祭り居酒屋「えんにち」。均一価格にはしませんでした。こちらは失敗です。この時に、副社長が辞めてしまいました。

 焼き鳥「鳥貴族」で行こうと決めました。理由は、
1)スタッフを教育しやすい。
2)厨房がシンプル。
3)均一価格が無理なくできる。

 お客様は、20〜30代の若い方々です。女性客も多くて、男女比は6:4。繁華街の店舗では女性客の比率が高くなります。


「鳥貴族」ファサード


「鳥貴族」東京進出

 大阪で直営・FC合わせて43店舗まで行きました。ローカルばかりで展開していましたが、初の商業立地、道頓堀に出店、当たりました。その後、難波、梅田も当たりました。

 2005年に東京進出1号店を中野に直営で出店しました。中央線・中野駅北口の2F物件。最初は家賃の高い山手線を避け、中央線を中心に展開しようと思いました。新宿から吉祥寺を攻めよう。

 客単価は大阪2100円台。東京2000円台。東京の方がお金を使わない。メイン顧客である若者は、大阪の方がお金を持っています。東京は家賃や駐車場代が高く、余裕がないのでは。

 一見、東京のお客さんはやり易いと思いました。クレームを言わない。大阪は直ぐにクレームを言ってこられます。

 1年間はまた、苦労です。東京では知名度が低く、お客が来ない。創業当時を思い出してしまいました。

 高円寺北口に東京2号店を作りました。この店舗は単価が特に低いです。様々な新業態の実験店が出される町として有名です。ここで売れれば、どこでも売れると言われているようです。

 淡麗生の700ml大ジョッキと食べ放題のキャベツだけで帰る学生がいるんですよ。因みに、キリン淡麗では日本で一番安い店です。また、販売量も日本一です。


FCはオーナーは増やさず、店を増やす

 FCは、のれん分けで1991年に始めました。社員の独立FCです。現在の加盟店オーナーは15名。オーナーを増やさず、店舗を増やします。気心の知れたオーナーさんばかりなので、新店の出店も皆さん、慣れたものです。

 営業利益は、20%くらいあります。ロイヤルティーは面積に関係なく、月5万円の定額。加盟金は50万円。非常に安いです。

 東京は現在は、直営のみ。酒類以外の仕入れ価格が合わず、FCはストップ。鶏肉卸は規模の小さい所ばかりです。大阪から京都に出店する際も大阪の鶏肉卸が京都の卸を紹介してくれるだけ。東京は、今の仕入れ価格で10店舗目まではがまんして実績を作り、その後、再交渉するつもりです。

 宴会メニュー「28とりパーティー」を6〜7年前に始めました。1人2800円で2時間飲み食べ放題です。但し、人数枠を8名とし、友人を連れてきてくれることを想定しました。しかし、意外と皆さん食べられないので採算が合うのです。


「鳥貴族」店内


「鳥貴族」店内


「鳥貴族」料理


将来、上場を目指す 

 接客重視です。お客さんの喜ぶ顔を見て、自分も嬉しいと思えなければ辞めろと言ってます。人間が好きでないとできません。

 大阪は知名度が高いので、リクルーティングは簡単。しかし、東京では難しいです。でも高円寺で成功したら、どこでも行けると思っています。

 弊社と競合している同業他社の焼き鳥が冷凍に代わってしまいました。ウチは手打ちに拘っています。店頭にも「店で串刺し、だからおいしい」と看板をだしています。

 上場を考えています。以前は年商100億円、5年後と思っていましたが、早めて50〜60億円で考えています。求人や立地で有利になりますから。東京でも、新宿や渋谷なお繁華街で勝負をかけたい。大阪は、知名度があるので路面に出店する必要がないんですけど。

 焼き鳥チェーン日本一を目指します。10年で1000店舗です。実は焼き鳥チェーンは小規模な企業が大半で、大きくなれないんです。理由は、前にも触れましたが、規模が小さい鶏肉卸ばかりだからです。

 海外も行きたいです。大阪の店にNOVAの外国人講師が来てくれるんです。彼らはお金にシビアなんで、料理や飲み物を注文する度に、灰皿にマッチ棒を1本づつ入れていくんです。会計計算がしやすいんです。外国でもイケルと思っています。

「永遠の奉仕」をテーマに全国、そして海外展開をしていきます。


「鳥貴族」コンセプト

1.280円(税込み294円)均一の低価格
2.20〜30代のお客様をターゲット
3.国産フレッシュ鶏肉の使用
4.各店舗での串打ち(ネタの新鮮さ)
5.丸太・椋木材を使用し、非日常で癒しの空間
6.活気ある雰囲気





大倉 忠司(大倉 ただし)

株式会社イターナルサービス代表取締役。昭和35年、大阪府生まれ。昭和60年に「鳥貴族」1号店を開店。平成17年に東京進出。現在、大阪69店舗、兵庫は3店舗、京都1店舗、東京は9店舗の合計82店舗を直営・FCで展開。平成19年3月期のチェーン年商は45億円。

株式会社イターナルサービス http://www.torikizoku.co.jp/index.html

【取材】 安田正明(やすだまさあき) 2007年6月15日