フードリンクレポート


ピザで楽勝!
株式会社トップ・ブレイズ 有限会社RAKUSHO
代表取締役 附田 国造氏

2007.7.13
ピザを武器に、宅配「ピザ・カントリー」、立ち飲み「VOCO 凹」と快進撃を続けるトップ・ブレイズの附田社長。ピザ焼き職人のケータリングも始めた。見慣れた商材でも金をかけず知恵で勝負すれば、成功できることを教えてくれる。



釜焼きピザ


グローバル・ダイニングで独立資金が半分に

 防衛大学に行きたかった。パイロットになりたかったんです。家が貧乏で、学費がかからず、しかも給料までもらえる大学(特別国家公務員)です。1年間浪人して2回受けましたが、落ちてしまいました。それで、埼玉大学理学部物理学科に進みました。しかし、学費と生活費を稼がないといけないので、バイトを常に3つくらいかけ持ちしていました。稼がないと学校に行けないし、学校に行くと稼げないという厳しい状況でしたね。

 そのバイト先の1つがイタリア料理店だったんです。キッチンに入って、働きました。それが面白かった。3ヶ月で大学を中退し、飲食の道に入りました。21才の時、ある飲食企業の社長にかわいがられ、役員にまでなりました。しかし、独立資金を貯めるために、相変わらず、倉庫や弁当屋でバイトをかけ持ちしてました。

 当時、グローバル・ダイニングが話題で、独立する前に、一度働いてみようと思い、入社しました。最初は、たまプラーザのモンスーンカフェのホールで働きましたが、大型店では全く自分は無力でした。個店でしか働いたことがなかったんです。店長とけんかになり、恵比寿モンスーンカフェに移動になりました。

 でも、給料が安かった。しかも、かけ持ちでバイトできないくらい忙しかった。23才の時、バイトと仕事で貯めた貯金が600万円ありましたが、生活費が足りずバイトも出来ず、1年で300万円にまで減ってしまいました。このまま、勤め続けていると、独立資金は減る一方でした。


300万円で居抜きピザ店オープン

 川口の家の近くにイタリアンレストランがありました。ある日、その前を通ると閉店のお知らせが貼ってありました。ドアを開けて、店主に閉めるなら譲って欲しいと交渉しました。14坪ですが、ピザ釜があったんです。イタリア料理店で働いていたので、ピザは得意でした。300万円を元手に、不動産屋に100万円、造作に100万円、運転資金に100万円と計算しました。

 グローバル・ダイニングに働きながら3ヶ月間で準備をし、1月31日に辞めて、翌日の2月1日にオープンしました。かつて一緒に働いていたパートナーと前の店主の下で働いていた女の子の3人でスタートしました。

 300万円の資金も、壁紙の張り替えやらの内装修理に思った以上の出費です。不動産屋に「僕を信じて下さい。ぜったいにやりますから!」と拝み倒し、敷金などの初期費用の半分を待ってもらいました。オープン時には1万8千円しか手元にありませんでした。それをレジに入れてのスタートです。

 売上は1日目2万円、次も2万円、週末に4万円。初月の売上は100万円。仕入れを差っぴいて現金で40万円貯めました。ここで勝負に出たんです。「40万円を全て広告に使おう」。チラシを作って、駅前で撒いたり、ポスティングをしました。すると、翌週から1日2万円が10万円になった。2ヶ月目には月商300万円です。


ピザ宅配専門店に転換

 そこで「宅配やろう!」。バイクを2台買って宅配を始めました。宅配のバイトをしたことがあったので要領を知っていました。受注システムなど入れる金は無く、図書館からゼンリンの地図を借りてきてコピーして壁に貼って、届け先を確認していました。宅配で、月に100〜150万円の売上プラスです。チラシを撒けば撒くほど、面白いように注文が増えました。

 テーブルを取っ払って、宅配専門に転換することを決めました。イートインでは、14坪では平均月商で250万円が限界でした。この時に店名を「ピザ・カントリー」に変更しました。これが、今の柳埼店です。宅配だけで、12月には380万円に達し、その後も350万円で安定です。営業利益で20%以上残りました。

 ピザは儲かります。社員達と「苦しくなったらピザをやろう」と常に言っています。今は、チラシをまかなくても、ネットの「出前館」などで損益分岐まで売上げは十分に作れます。

 仕入れを安くしようと思い、全国の個店のピザ店に電話を掛けて、食材の共同仕入れを働きかけました。一部チェーンのピザ店もチェーンの看板を降ろしてまで参加してくれ、今は20店舗程で共同仕入れをしています。元チェーンのピザ店は月商が100万円下近くまで下がったお店もありますが、ロイヤリティも無くなり利益は確保できています。自分で好きなメニューも自由に導入できるので、喜んでいます。チーズなどもチェーン店が使わないような切れ端部分を使ってありえないくらい安く仕入れています。


ピザは儲かる。苦しくなったらピザ!

 ピザは釜とコンベアで焼く方法があります。釜とコンベアでは焼き上がりがは全くちがいますが、宅配し30分も経つと、釜で焼くのもコンベアーで焼くのもさほど変わりはありません。しかし、他のチェーンに負けるなというプライドを釜は持たせることができます。

 粉モノは儲かります。特にピザは儲かります。原価は100円くらいですが、2000円とかで売れる。お好み焼きと原価は同じなのに、お客は高いものと思っていて、買ってくれるんです。

 しかも、自信が無くてもできます。入って一ヶ月目の新人も、1年以上やっているベテランもピザを釜で焼いてしまえばそんなに変わりませんから、本当に失敗しにくい料理です。原価を上げる必要も無いし、サービスレベルを上げる必要もありません。

「ピザ・カントリー」はFC展開しています。加盟金10万円、ロイヤルティ月3万円の固定です。加盟店は11店舗ありますが、全て店名は異なります。最近、加盟希望の方がやってきますが、居抜き物件がなかなか出ない。居抜きを利用して、損益分岐点を下げないと利益が出ません。共同仕入れの仲間を通じて居抜き物件情報を探しています。開店資金300万円でできる居抜き物件で損益分岐点を170万円に設定しています。

 宅配ピザは飽和状態と言われますが、当社のスキームならエリアシェア5%で十分商売できます。シェア50%を取るのは難しいけど、5%なら能力が要らず、誰でも取れます。「ピザ・カントリー」千葉・川間店は10坪ですが、月商800万円あります。12キロ四方に競合が全く無いんです。

 ピザを始めて今年で11年間。今でもピザは凄いと思います。


立ち飲み「VOCO 凹」で釜焼きピザのケータリング進出


ワイン&ピザ「VOCO 凹」外観

 テーブルサービスがやりたくなりました。宅配ピザは資金集めのためだけで、一刻も早く止めたかったんです。1000万円の資金ができ、三軒茶屋で10坪の立ち飲みを始めました。串焼き立呑「でこ(凸)」です。そして、2号店のスタイリッシュなワイン&ピザ「VOCO 凹」。500円でお客の目の前で焼くピザがウケました。客単価1800円ですが、営業利益で20%以上残ります。500円でみんな安いと喜んでくれますが、原価率は何と25%です。メディアに数多く取り上げられ、話題になりました。

 次に始めたのが、釜焼きピザのケータリング。「VOCO 凹」からケータリングする形にしています。釜焼き職人がお客の家に行って目の前でパフォーマンスをしながらピザを作って焼きます。5〜10名様向けで3万円から、20〜50名様向けの10万円のコースまであります。家庭のコンロを使うピザ焼き釜を作って、目の前でパフォーマンスをしながら焼きます。現在は、月に10件の注文です。今度、初めてチラシを作ってDMしますので、反響が楽しみです。


ワイン&ピザ「VOCO 凹」店内


暖簾分けで100店舗構想

 五反田で20坪2フロアのイタリア料理の店舗も居抜きで買い取りました。店舗流通ネットのリース物件で、残りの3年間のリース期間を引き継ぎました。頑固なシェフがいて、彼に店を任せています。

 これからは直営店はなるべくやりたくないです。いづれは暖簾分け制度で100店舗にしたい。5年間その店で働いて、お店の償却が終われば店長に店を無償で譲る。売上は本部に計上させ、売上の1%だけは本部にもらい、残りを各オーナーに返す仕組みを考えています。

 今は、FC,直営ともに赤字店舗は1店舗もありません。


自分、スタッフ、お客にとり「楽しいこと」がすべての判断基準

 飲食に加えて、外貨投資、不動産の分野を始めました。勉強会で知り合った仲間を引き込んで、新しいビジネスを始めました。飲食事業はRAKUSHOという会社で運営していますが、その上にホールディングカンパニーとして、トップ・ブレイズという会社を新たに作りました。「トップ・ブレイズ」の意味は、最高の輝きです。

 会社のモットーは「楽勝、楽笑、楽生」。今年、すごく上手くいってます。自分が何かをやる時の選択基準は、自分、スタッフ、お客が楽しく笑えるかどうかだけを基準にやってきました。儲からなくても、楽しければやってます。楽しいことは必ず良い結果がでます。

 9月には、フードリンクセミナーで知り合った、エムグランドの井戸社長と共同で会社を作ります。井戸社長の「ステーキ&ハンバーグ けん」と私のピザ宅配をミックスさせた郊外型ファミレス兼宅配店です。すごく楽しみです。




附田 国造(つくだ くにぞう)

株式会社トップ・ブレイズ 有限会社RAKUSHO 代表取締役。1977年、青森県三沢市生まれ。2001年に居抜きピザ店を買い取って独立。宅配店に転換し、「ピザ・カントリー」として千葉・埼玉県で2店舗。2006年に東京・三軒茶屋で立ち飲み「凸」「凹」を開店。2007年五反田にイタリアンレストラン「IL FUMO」 ワインとピザの「VOCO凹」はメディアに多数取り上げられ話題に。釜焼きピザのケータリングサービスもスタート。FC店舗を含めた年商は10億円を超える見込み。

株式会社トップ・ブレイズ
 http://www.top-vlazz.co.jp/


【取材・執筆】 安田正明(やすだまさあき) 2007年7月10日