・外食、エンターテイメント、マーケティング会社
SLDは、青野氏が学生時代の仲間と立ち上げたイベント&コンサート企画会社が母体。今も、ライブハウスやDJバーを経営、そして船上ライブ・イベント用に客船4隻を運営するなどエンターテイメント事業の比重も高い。
外食は、2004年に手掛けた吉祥寺シアター併設のカフェの運営受託を受けたことに始まり、6店舗を2年半の間に次々とオープンさせる。
1)2005年9月「Kawara CAFE&DINING 渋谷」(渋谷・公園通り)
カフェ&ダイニング
2)2006年3月「かわらや kawara-ya 渋谷」(渋谷・宇田川町)
もつ鍋ダイニング
3)2006年9月「かわら坐 kawara-za」(渋谷・宇田川町)
もち豚、豆冨、梅酒のダイニング
4)2007年4月「かわらや kawara-ya 新宿」(新宿3丁目)
もつ鍋&炭火串焼ダイニング
5)2007年9月「Kawara CAFE&DINING 新宿」(新宿3丁目)
カフェ&ダイニング
6)2007年12月「かわらや kawara-ya 庵 ann」(新宿駅前)
炭火&九州ダイニング
2005年の1店から始まり、毎年倍々ゲームで出店。そして、2008年4月に渋谷・宇田川町に出店が決まっており、これを皮切りに来年3月までに6店舗を出店し、12店舗体制にもっていくことを目指している。
エンターテイメント事業とのシナジーで、BGMやデザインに凝る。全店とも壁はオールアート。CDジャケットやライブパンフをデザインしているアーティストによるペインティングが施されている。最新の音楽が流され、最新のイベントチラシも設置され、カルチャーカフェの要素が強い。
「kawara-ya」渋谷店 エントランス
「kawara-ya」渋谷店 内観
「kawara cafe&dining」渋谷店 内観
「kawara cafe&dining」新宿店 内観
・イベント&コンサート企画会社で起業
青野氏は福岡で生まれ、鹿児島ラサール中学・高校を卒業し、横浜国大を卒業した秀才。大学生時代からイベント企画などを仲間と実施。ニューヨークでボートパーティーが流行っているという情報を聞きつけ、客船を借りてクルーズ・コンサートを開いたりしていた。
飲食店の企画がやりたいと思い、寿司店を展開しながら、ダイニングバーなどにチャレンジしている外食企業に就職が決まる。しかし、研修として現場のアルバイトを経験するが、企画の仕事を担うには時間がかかると判断し、同社への就職を中止。小さな音楽プロダクションに入社。しかし、会社の方針転換に伴い、所属事業部が閉鎖。独立を決意する。
当時は資本金1円で会社が設立できるようになった時代でもあり、大学時代の仲間とイベントやコンサートを企画する会社として、資本金5万円で、SLDを2004年1月に設立した。
学生時代からのクルーズ事業も続け、客船運営会社と定期契約し、現在は4隻の客船を運営している。ウェディングやパーティーというより、ライブハウスを船上にもってきたという発想。船上でのコンサートニーズを掘り起こし、年間100件以上のクルーズを扱っている。年々認知が広がり件数が伸びており、さらに提携する客船数を増やそうとしている。
外食は、カフェでライブを開催したり、店の広告デザインを請け負ったりしていたが、2004年、吉祥寺の吉祥寺シアターの併設カフェの運営に関わる。20〜30席の小さなカフェだが、劇場で公演がない時でも賑わうカフェにしようと、アートの発信や公演内容との連動を仕掛け人気店に仕上げる。運営受託という形式でリスクも少なく、安定した売上で長期的ビジョンが立てられる余裕が出来、そして、自社店舗へチャレンジする。
クルーズLIVE
野外LIVE
・自社カフェ・ダイニングに挑戦
2005年9月、「Kawara CAFE&DINING 渋谷」開店。通称カフェビルと言われ、「C65」「アプレミディ」といった隠れ家的な名店が入居していたビルの6階。ジェリーフィッシュの和カフェ「yusoshi」の跡。
「不動産価値は高くない。駅から遠いし、目立たない。しかし、カフェビルとしてのブランドはある。しかも、『yusoshi』の跡で縁起がいい」と出店を決めた。約2千万円を投資し、スケルトンから内装を作り、20坪で35席を確保。
「特徴を付けないと生き残れない」と、青野氏が子供の頃によく食べていた、両親の出身地である山口県の郷土料理「瓦そば」を思い出す。そして、名物として採用。
「瓦そば」は、明治10年、西南の役の際、熊本城を包囲した薩摩軍の兵士が瓦を使って、肉や野菜を焼いて食べたとの古事をヒントにゆでた茶そばと肉、錦糸卵を焼いた瓦にのせたもの。ねぎと紅葉おろし、レモンなどを独特のたれに混ぜ、茶そば、錦糸卵等と一緒に食べる。家庭では、ホットプレートを使って調理するほど、浸透した食べ物だ。
そして、取り皿も特注の小さい瓦を使用。「取りづらいが、それ位インパクトがあった方が良い。インパクトがあればお客は忘れない。今のところ、店名に『瓦』を使った店舗ばかり。統一感は、お皿が瓦なことです」と青野氏は瓦にこだわる。
1号店は初月から黒字。カフェビルのバリューと、以前の「yusoshi」と勘違いして入ってくるお客にも、「変わったんです。良かったら入って下さい」と説明。3階、4階、5階は人気のカフェ、それらが満席だと6階まで上がってきてくれた。
「集客はビルの力です。でも、カフェ好きな方々に受け入れられる店が作れました。同じビルにはお客の選択肢に入らず退店していったところもありました。少なくとも、ウチは最低限、お客の心を読み取ることができました」と自信をのぞかせる。
名物 「瓦-kawara- SOBA」
「瓦-kawara-プレート」
「瓦-kawara- パフェ」
「ティラミス」
・2008年度中に倍の12店舗に
各店とも、20代・30代の女性グループ客を意識しており、実際に女性比率が8割を占める。瓦の皿が人気で、ショップカードにも瓦の絵を採用し、1号店は瓦1枚、2号店は瓦2枚など、特徴の瓦を様々な所でアピールしている。
「かわらや」はモツ鍋をメインにしたダイニングバーだが、モツ鍋に頼っている訳ではなく、夏場でも売上は落ちない。
全店とも壁はアーティストによる手書きアートで飾られ、ソファー席を設けたり、「抹茶と豆乳のカクテル」「キャラメル豆乳のカクテル」などちょっとこだわったカクテルも提供し、女性客同士が寛げる雰囲気を作り出している。
メニューは、コックレスが基本。職人と契約しメニュー開発を行っているが、同じ業態で異なるメニューも許可し、各店毎のオリジナルメニューも人気だ。
従業員教育は、現場でのOJTが中心。さらに会議が多く開かれ、店長に限らず、新人でも出たい人なら誰でも参加できる店長会議を月に1度。そして、マネージャー、店長、副店長、アルバイトチーフが集まる役職者会議を月に2度開催している。年齢の近い若い男女なので、毎回会議は盛り上がっている。
飲食事業部会議
また、エンターテイメント事業は外食事業にも、いい影響を及ぼしている。例えば、所沢の航空記念公園で音楽イベントを開催した際、外食事業が出張して露店を運営。店舗スタッフも屋外での活動を楽しんでいたそうだ。
既存店はトータルで黒字。営業利益でも10%は超えている。FL値の目標は50%。「バラツキがあり、50%を少し超える店もあるが、無理に50%にするのは良くない」と考える。
7店目を本年4月に渋谷・宇田川町にオープンさせる。今までは30坪程度の店ばかりだったが、今度は60坪、100席のカフェ・ダイニングを作る。「大手居酒屋チェーンの居抜き物件ですが、内装を残して、カフェにコンバージョンするので、逆に面白い店になりそうです。可能性の高い立地なので、勝負します」と闘志を見せる。
「目標は4月から始まる2008年度中に、新規6店を作ること。渋谷、新宿、池袋、恵比寿など都心の立地を狙っています。それができれば12店になります。上場できるレベルまでは最速で持っていきたい。上場すればいいというものではないが、上場すれば出来ることも増えると思います」と倍々ゲームで店舗数を増やし続けようとしている。
「カフェ・ダイニング」という若い業態をテーマに、27才の青年社長は邁進している。まずは、2008年度の目標を乗り越え、店舗数2ケタの壁を突破して欲しい。