・2004年、ソウル開店。2008年、東京開店。
キム氏は、家庭の主婦。夫が自然保護運動の活動家である縁で、野草に興味を持った。そして夫の定年退職、子供の成人を契機に、ソウルの高級住宅街、三清洞(サムチョンドン)で2004年に「ソソンジェ」を開店。三清洞は、600年前の朝鮮王朝時代の都、景福宮(キョンボクン)の隣に位置する高級住宅街で、宮廷料理や家庭料理のレストランが多数あるエリア。
「ソソンジェ」ソウル店 外観
「ソソンジェ」ソウル店 店内
自然保護活動として各地を旅し、野草が食材として使えることを学ぶ、自分で店を開いて実践する。「ソソンジェ」の料理は、摘み草料理とも言われる。もともと、野草は薬用として珍重されていたが、これを初めて料理に使った。
韓国で話題店としてマスコミによく取り上げられる店だが、日本のメディアにもよく登場している。スチュワーデスの間で人気になり、日本人客が増えた。「クレア」、「Dear」、「レタスクラブ」など日本の雑誌の韓国特集に取り上げられている。
この流行に敏感な日本人の間で話題の店が、東京・麻布十番に、ソウルと全く同じ味で海外初出店。招聘したのは、キムチ製造販売の大手、東亜トレーディング株式会社。そして、仲介、プロデュースしたのが、有限会社柴田陽子事務所。東亜トレーディングはブランディングの一つとして質の高い韓国料理店を求めており、柴田陽子氏が同社に「ソソンジェ」を提案して東京出店が決まった。
「ソソンジェ」東京店 和食店のようなカウンター
「ソソンジェ」東京店 スタイリッシュなテーブル席
「ソソンジェ」東京店 靴を脱いで上がる個室
・手作りの発酵調味料
ソウルの店は通常のテーブル席の他に、韓国でよくある靴を脱いで上がる板張りの大広間スタイル席がある。韓国式大広間のテーブル5卓と通常のテーブル席で、約40人が座れる。昔の伝統的な家を使った、素朴な店舗。化学調味料を使わずに美味しい味をだすため、フード原価率は4割もかけている。
最近、韓国では伝統的な料理に興味を持っている若者が増えており、彼らの心をとらえて、2004年のオープン時から繁盛店。中心客層は、専門職に就く30代。女性の比率がやや高い。
人気の秘密は、発酵調味料。野草と砂糖を半分づつ加え、3ヶ月間発酵させる。すると、砂糖の甘さがなくなり、野菜エキスとなる。さらに、そのエキスの部分だけを涼しい場所で3ヶ月間寝かせて完成する。野草を10種類以上ミックスしたものを中心に、梅など季節の果物や野菜・野草を使って様々な発酵調味料を作る。
発酵調味料 (左から)10種の野草+砂糖、梅+砂糖、ジャコ+塩
10倍に薄めて、甘味を出す際や、肉を柔らかくする際などに使用される。少し舐めると、強烈な味で、体から元気がわき出るような感じがする。本来は薬用につかわれるもの。実際に調味料を舐めただけで、翌日には疲れが取れたという方もいる。
韓国料理は、酢っぱくて辛くて刺激的という印象があるが、「ソソンジェ」では刺激的な香辛料や化学調味料も一切使用していない。それが日本人の口にも合う。他の韓国料理とスタイルが全く異なる。
・ソウルと同じ味にこだわる
東京への出店オファーを受けた時、キム氏は、「日本人が韓国まで来て自分が作ったものを食べて喜んでくれ、嬉しかった。東京に出せば『ソソンジェ』のことをもっと多くの日本人に知らせることができる。ご飯を人に作ってあげることは、その人に『福』をもたらすこと。たくさん『福』をもたらしたい」と嬉しくてしかたなかったと言う。
海外出店は、東京しか考えていなかったようだ。東京は韓国料理がちゃんと伝わってない感じがしていたそうで、「ソソンジェ」の料理はソウル本店と全く同じものを提供することに拘っている。
日本で手に入らない食材は韓国から持ち込み。発酵調味料は当面、ソウルから持ち込むが、東京の野草などでも作ることを考えている。東京店の料理長は日本人だが、キム氏は、月に1〜2度来日しミーティングを行い、メニューを変更も頻繁に行う予定だ。
野草から取った発酵調味料を使った新たな韓国料理。既に、韓国で食したことのある日本人が数多くいることが、「ソソンジェ」の強み。幅広い韓国料理への理解も日本人の間で進んでおり、じわじわと口コミで話題になりそうだ。
クジョルパン
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