フードリンクレポート


フラダンスブームで女性に支持されるハワイアンダイニング。

2008.9.19
ハワイアンダイニングが根強く支持を伸ばしている。その背景にはダイエットや腰痛にいいというフラダンスのブームがあり、顧客の8割以上が女性という店も珍しくないほどだ。一方で最近はハワイに海外旅行に行く日本人は減少傾向にあり、必ずしもハワイに行きたいから、行ってきたからハワイアンダイニングでもないようなのだ。ハワイアンダイニングの強さの秘訣を探ってみた。


フラダンスショー

恵比寿と湘南にハワイアンが集積したリトルハワイ出現

 日本人のハワイ好きは今に始まったものではないが、なぜかハワイアンダイニングの店がじわじわと増えて確実に浸透しているような気がする。

 実際にそれは気のせいではなく、「マウカメドウズ」、「アロハテーブル」、「クアアイナ」などといったチェーンが駅ビルや商業施設によく入っていて、おおむね好評を博していることからも、最近10年ほどで、支持が広がっていることが知られるのである。


クアアイナ横浜ベイクオーター店

 その背景には女性に人気のフラダンスのブームがある。

「弊社の調べでは日本のフラダンス人口は40万人いて、さらに増えています。東京でフラの教室は電話帳に登録されているだけで115軒あり、中高年女性から若い女性へ広がっています。最近は小中高生も結構多いですよ」と語るのは、「マウカメドウズ」を展開するカフェ・マウカメドウズ・セクションマネージャーの入澤恒彰氏。

 東京の恵比寿は最近、“リトルハワイ”とマニアの間で呼ばれるほどのハワイ関連のショップ、ダイニング、フラダンス教室のメッカとなっており、全部合わせれば20軒を越える集積になっている。1999年に広尾にあった老舗フラダンス教室「カフラオ・ハワイ」が恵比寿に移転したのがきっかけと言われているが、「ロコズ・テーブル・マハナ」、「ツナミ」、「ロコブルー」などといった、ハワイアンダイニングの代表店も、恵比寿にある。

 一方で、湘南から東京へのハワイブームの波及という側面もある。おそらくハワイムードの店で最初にヒットしたのは、鎌倉・七里ヶ浜のカレーの名店「珊瑚礁」であり、特に1986年に海岸線の国道134号線沿いにオープンした「モアナマカイ店」は、オープンエアのテラスやたいまつを焚く、アロハシャツやムームーを着た店員が迎えるといった演出を目立つ形で世に問うた。


「モアナマカイ珊瑚礁」

 97年に横浜に「珊瑚礁」で修業した鈴木昌也総料理長を迎えた「サンアロハ」がオープンし、カレーのみならずハワイのローカルフードにも注力してヒット。湘南でも茅ヶ崎に98年「リキリキデリ」がオープンして、地元に元々あったサーフィンの文化と融合し、茅ヶ崎に独自のハワイアン業態の集積が生まれた。そして、2000年にサザンオールスターズの「TSUNAMI」が、同年シングルCDのトップセールスを記録する大ヒットとなって、ハワイブームが盛り上がった面もある。恵比寿のハワイアンダイニングの代表店「ツナミ」の店名が、サザンの楽曲に由来するのは明らかである。さらに、2006年には映画「フラガール」のヒットがあった。

 ハワイの料理には日系人の発想が多く取り入れられていて、代表的料理の「ロコモコ」というのは要はハンバーグ丼である。ただし牛肉の肉汁からつくられるアメリカ料理らしいグレイビーソースは、ぼやけたような味になることが多く、このソースを日本人の口に合うようにどう改良するのかが、各シェフの腕の見せどころになっている。

 そのほか、「スパムむすび」、もち粉を使った唐揚げ「モチコチキン」、「スペアリブ」、「ガーリックシュリンプ」、サーモンマリネの「ロミロミサーモン」、「アヒ」と呼ばれるマグロのポキ(ヅケ)、白身魚「マヒマヒ」のフライなど、ハワイ料理はどこか日本で見たことのあるような料理が多く、日本人になじみやすい面がある。

 コーヒーも名産のコナコーヒー、アルコールも「ブルーハワイ」、「マイタイ」などさまざまなトロピカルカクテルがあって、女性受けしやすいと言えるだろう。

 一方で、日本人のハワイへの観光客は、ハワイブームと裏腹に最近10年減り続けており、ハワイアンダイニングの中には顧客の大部分が実際にハワイに行ったことがない店も存在するのである。そのあたり、ハワイを忠実に再現するばかりが能ではなく、いかに日本人のハワイへの憧れを表現するかが重要なこの業態のポイントがある。


平日にフラダンスショーを目当てに女性が押し寄せる店

「ロコズ・テーブル・マハナ銀座店」は、銀座地区にある唯一とも言えるハワイアンダイニングの店であり、2階建てで147席ある大箱ながら、3年目となる今も行列ができる繁盛店だ。

 経営はシーエーフードサービス(本社・東京都港区)で、ハワイアンダイニングを始めた理由は現会長、当時の社長がハワイが大好きで、日本の都会でハワイの雰囲気がするレストランを出したいという趣味が高じてのものだった。

「ロコズ・テーブル・マハナ」の1号店は浜松町店で、オープンして5年目になる。チェーンは順調に拡大し、今では浜松町、銀座のほか、恵比寿、赤坂見附、渋谷、新宿歌舞伎町、水道橋に店舗があり、渋谷店のみがFC店である。

 銀座店は浜松町店、フラッグシップの恵比寿店の次にできた3号店にあたる。


「ロコズテーブルマハナ銀座店」


「ロコズテーブルマハナ銀座店」 1階カウンター


「ロコズテーブルマハナ銀座店」 2階テーブル席

 しかし、当初から順調であったわけではなく、浜松町店が開店してから3、4ヶ月は閑古鳥が鳴いていたという。浜松町店立ち上げから同チェーンの成長を見届けてきた、江藤智昭・銀座店店長は語る。

「内装、雰囲気はしっかりつくっていたのですが、ハワイもバリも何でもありのリゾートダイニングになってしまっていて、コンセプトがお客さんとズレていました。メニューにポテトチップスや漬物盛り合わせを入れていたりといった具合ですね。ハワイに特化したメニューを提供し始めてから、お客さんが増えてきました」。

 ブレイクのきっかけとなったのは、ブライダルサービスの一環として、アルバイトのつながりでフラダンサーを呼んだことで、これが好評を博した。今でも浜松町店の売上の3分の1は、結婚式かその2次会である。2号店の恵比寿店以降はフラダンスショーを強化し、渋谷店を除くと全てステージを設けて、食事の代金のみで一般の顧客が鑑賞できる。


フラダンスショーは連日大盛況

 銀座店では20ものフラダンサーチームが在籍し、交替で毎週月〜水曜日の20時より約1時間のショーを開催する。どうすれば顧客に喜ばれるステージができるのか、営業が終わった後の深夜にリハーサルを行うなど、江藤店長とフラダンサーチームの共同作業で構成などは考えられるという。そのかいあって、月〜水曜日は連日満席の盛況ぶりである。

 顧客の85%ほどは女性で、年齢層も30代〜50代が中心と比較的高い。男性はほとんどが付き添いである。ハワイ好きな人、フラダンスを習っている人が主流で、近所に勤めている人ばかりでなく、埼玉県、千葉県などかなり遠くからショーを目当てに来る人が多い。

 同店で統計を取ったところ、顧客で実際にハワイに行ったことのある人は1割を切っており、ハワイに憧れる人を行った気にさせる店となっている。

 また、週末の土曜、日曜は打って変わって、結婚式とその2次会が主体となる。

 客単価は約3800円であったが、フードの値段を下げつつ4200円にアップさせる改革に8月よりチャレンジ中で、現状は4300円になっている。

 前面に打ち出していくメニューとして、醤油・味噌・BBQと3つの味がある「スペアリブ」(672円)、サーモンと野菜のマリネで“ロミロミ”とは揉むを意味する「ロミロミサーモン」(750円)、マグロのヅケ「ポキ」(819円)、ハワイのノースショア名物「ガーリックシュリンプ」(1134円)、指定農園の日替わり野菜を温かいアンチョビソースで食べる「農園パーニャカウダ」(1180円)を選定。


「スペアリブ」(手前672円) 「スパムとジャガイモのソテー」(奥525円)

 また、“PUPU”と呼ばれる前菜は200〜300円値下げして525円均一で、「スパムとジャガイモのソテー」、「あさりとブロッコリーの白ワイン蒸し」などさまざまに選べるようにした。

 ご飯物は、醤油ベースのソースが自慢のロコモコ、パスタ、ピッツァを各種そろえている。

 女性には欠かせないデザートは200円ほど値下げして、日替わりのアイスクリーム&シャーベット(399円)などが安く食べられるようになった。

 ドリンクにも特徴があり、全て662円で提供している各種ノンアルコールカクテル、アルコール度が低めのトロピカルカクテルの“ビーチカクテル”(各725円)が売りになっている。

 全般にトロピカルな雰囲気を持ちつつ、アルコールが少なめのドリンクを好む顧客が多い。


ビーチカクテルの「ラニカイビーチ」(左725円) ノンアルコールカクテルの「トロピカルオアフ」(右662円)


ハワイのローカルフードを日本人向けの味にアレンジ

 都内有数なダイニングのメッカである恵比寿は、ハワイアン関連の店の集積地、“リトルハワイ”でもある。恵比寿周辺にある、ハワイアンのレストラン、雑貨店、マッサージなどの店は15店ほどになる。

 そうした恵比寿のハワイブームを先導してきた店が「ツナミ」である。

「8年ほど前に出店した頃は、フラダンスの教室とまだハワイアンアパレルの店が1店あったくらいでしたね。ウチができ、すぐ近くにアパレルや雑貨の店ができ、たまたま融合して今のようになったのでしょう。雑誌の力も大きいですね」と経営するアドリブ社長・山岸大氏。

 山岸氏はサラリーマンをしながら飲食で独立するチャンスを狙っていたが、ハワイが好き、南国が好きということで、ハワイの緑と太陽ときれいな海をイメージして一年中心地よいレストランを目指した。

 料理はお酒を飲みながらおいしく食べられるものを出すのが前提で、ロコモコなどの伝統料理も日本人の口に合うようにアレンジを加えている。メニューの8割以上がオリジナルである。

 第1号店は横浜市青葉区の東急田園都市線・横浜市営地下鉄あざみ野駅近くに、13年前「ダイ」をオープン。ハワイのロードサイド店をイメージした開口部が広いテラス席のあるレストランで、当時はオープンテラスのある店も少なかったこともあって軌道に乗った。

 恵比寿駅東口の「ツナミ」は2店舗目の店でビーチサイドカフェをイメージ。恵比寿に出店した理由は、山岸氏の起業前に勤めていた会社が恵比寿にあり、土地勘があったからだそうだ。

 この店が評判になり、恵比寿駅西口の「ロイヤルパレス」、駒沢と下北沢のハワイの現地っ子ロコが住む家をイメージした「ツナミ」を次々とオープン。現在はハワイアンダイニングを5店展開している。なお、今年7月に恵比寿にオープンした「バンザイ」は食の安全・安心をテーマにした、和の創作レストランだ。


「ロイヤルパレス」のエントランス


「ロイヤルパレス」店内


「ロイヤルパレス」のカウンター席

「ロイヤルパレス」はハワイのホテルのレストランをイメージしており、1年ほど前にビルの建て替えで移動してきた。東口の「ツナミ」に比べて、リゾートレストラン的な意味合いを強く出しており、ゆったりとこじゃれたカクテルを片手にコースを食べたい人のニーズを汲んだ内装となっている。席数は約50席。

 顧客層は女性7割、男性3割で、平日はOL、サラリーマン、休日は主婦やフラダンス教室帰りの人、ダンスが趣味の人が多い。

 客単価はランチ1200円、ディナー3000円、通しでは2000円ほどで、2.5回転くらいする。結婚式の2次会需要もある。

 雰囲気を味わいに来ている人が多いが、味にも力を注いでいる。

 サーモンマリネサラダの「ロミロミサーモン」(880円)、マグロを使ったポキサラダ(880円)、ボリュームがあって甘辛い「ハワイアンスペアリブ」(1600円)、デミグラスソースに近いオリジナルソースを使った「ロコモコ」(980円)、スパイシーなオリジナルの「モチコチキン」(920円)などの独自のアレンジを加えたハワイアンフードの人気が高い。


「ロミロミサーモン」(880円)

 ドリンクは、オリジナルの「ビールカクテル」である、「マンゴビア」、「グァバビア」、「パインビア」(各780円)が人気。また、ハワイアン・トロピカルカクテルである「ブルーハワイ」、「チチ」、「ハワイアンスプモーニ」、「マイタイ」などもコンスタントなオーダーがある。


「ロコモコ」(980円)とビールカクテルの「グアバビア」(780円)

「社員にはハワイ研修も行っていますし、BGMのハワイアンミュージックの選曲は任せています。ここのお客さんは、ハワイにこれから行くか、行って帰ってきたような人が多く、よくパンフレットをテーブルで広げてみていますね。リピーターが多いのもうれしいです。課題はお客さんがどうしても4月から9月に集中してしまうことで、ハワイでよく食されているベトナムのフォーを導入するのも面白いと今、考えているところです」と山岸氏。

 アイデアマンの山岸氏であるだけに、冬場を乗り切るパワフルな提案を期待したい。


現地の食べ歩きからつかんだ食文化を伝えるべく起業

 さて、ハワイアン関係のショップ、レストランが集まる恵比寿において、個店の路面店として、しっかりした顧客をつかんでいるのが「ロコブルー」だ。

 場所は恵比寿駅東口より徒歩7、8分の、あいおい損害保険本社ビルの近くにある。

「コンセプトは、日本にいながらハワイの現地人が集うようなレストランを、料理、雰囲気で実現させるということですね。観光客が来るような店は狙っていません」と、代表の山田拓洋氏はきっぱりと語った。


「ロコブルー」外観、内外装は店主のアイデアが盛り込まれている。


「ロコブルー」店内


「ロコブルー」のカウンター

 ハワイ好きの山田氏は、勤めている頃から7、8回、1週間ほどのスパンでハワイ旅行に繰り返し行き、いつか飲食店をやりたいとの希望もあって、勉強もかねて現地のレストランをよく食べ歩いた。

 地元の伝統的なローカルフードばかりを、1日5食以上食べまくった日も多かったそうだ。そうした中でハワイの料理は元々あったものは少なく、多くの移民によっていろんな文化が融合して形成されたものだとつかんだ。

 そこで、ハワイ現地の料理の良さを伝えるような店が、日本にまだあまりなかったので、起業を決意した。

 オープンは2003年で、恵比寿の周囲にちょうどハワイアン関係の店が増え始めていたという、タイミングも良かった。席数は30席ある。

 顧客層は20〜30代の女性が中心で、7〜8割が女性。学生から、近くの会社員、場所柄もあって芸能人やモデルなど顧客層は幅広いが、フラダンスを習っている人が多いという。男性は付き添いで、男性だけのグループはまず来ない。

 近所にはフラダンスの教室も多く、ダンス、雑貨などのグッズ、そして食事と一通りハワイに関したものが楽しめるのが恵比寿の良さでもある。

 客単価はディナー約3500円で、2回転ほどする。ランチも営業しており、こちらの客単価は約1000円。あいおい損害保険をはじめ周囲にはオフィスも多く、昼も2回転ほどと、コンスタントに売り上げている。

 人気ニューは、グレイビーソースとホワイトソースの2種類がある「ロコモコ」(945円)。特にグレイビーソースは半日かけてじっくり煮込んでつくるから、仕上がりはデミグラスソースのように濃厚で、ちょっと驚く。また、「ロミロミサーモン」(893円)は生のサーモンでなくスモークサーモンを使い、トーストに乗せて食べる独自のスタイルを取っている。衣にモチ粉を使い岩手産の若鶏を揚げた「モチコチキン」(945円)や、「ガーリックシュリンプ」(998円)の人気も高い。料理の種類は50種類ほどあり、沖縄料理なども一部取り入れている。


「ロコブルー」の「ロコモコ」(945円)と「ロミロミサーモン」(893円)

 ドリンクはハワイのビール、南国カクテルが人気で、カクテルは1000種類くらいは提供可能という。その中でも、オーダーが多いのはカシスをベースに、グランベリー、マンゴー、グレープフルーツ、レモンをミックスしたカクテル「フラガール」(1260円)で、ノンアルコールも可能である。グラスに巻いてある花輪は持ち帰ることができるが、そのあたりの工夫も女性に好まれる秘訣だ。そのほか、フレッシュパイナップルを使った「ピニャ・カラーダ」、おなじみの「ブルーハワイ」、「マイタイ」などもよく出る。


人気カクテルの「フラガール」(1260円)

「日本人は仕事や家事に追われて、疲れているから、のんびりしたいのだと思います。ハワイの風土が日本人にどことなく合っているので、その雰囲気を体感できれば癒されるのではないでしょうか」と山田氏。

 これからも近隣のハワイ関係のショップと力を合わせて、ハワイのローカルフードの良さをアピールしていきたいという。


横浜の観光客から支持される、カレーが自慢の行列店

 1997年横浜市中心部の中区山下公園、大桟橋の入口にあたるエリアにオープンした「サンアロハ」みなとみらい本店は、「昼のハワイ」がテーマ。炎のトーチが目印で、店内はハワイアンミュージックが流れ、アロハシャツやムームーを着たスタッフが笑顔で迎えてくれる。


「サンアロハ」みなとみらい店


「サンアロハ」みなとみらい店の店内


スタッフ集合写真

 今日のハワイブームのまさに原点となった店の1つだ。まるでリゾートに来たような気分を満喫でき、行列のできる店として数々のメディアに取り上げられている。経営はビッグバンという会社で、総料理長・鈴木昌也氏は鎌倉・七里ヶ浜のカレーの名店「珊瑚礁」の出身。

「オープンから数年で行列ができるようになりました。当時はまだハワイアンという業態が新鮮だったので、人気店になれたのだと思います」と、広報の近藤愛味さん。今も、大桟橋、山下公園、横浜スタジアムでイベントがある時には行列ができる。

 その背景には「珊瑚礁」仕込みのカレーの評判が高まったこともあった。鈴木総料理長によれば、「サンアロハ」のカレーは、味はよりマイルドに、雰囲気はハワイっぽく仕上がっているとのこと。水を一切使わず、乳製品をふんだんに使ってコク、まろやかさ、あと味のスパイシーさを持ったソースを完成させた。仕込みは48時間をかけて熟成させ、秘伝の香辛料がたっぷり入っている。


人気のカレーを中心としたメニュー

 なお、鈴木総料理長はプライベートでアロハを着用するほどのハワイ好きで、ハワイにも年に何回か旅行するという。

 席数は80席で、個室の24席はペット同伴可。

 顧客層は20代〜50代と幅広く、男女比は4:6で女性のほうがやや多い。ハワイアン業態としては男性が多いほうであるのは、カレーが目当ての人が多いからかもしれない。コアな年齢層は30代で、平日は会社の同僚・カップルが多く、休日はファミリーや大桟橋、中華街などに観光に来た人が主流だ。顧客単価は昼1100円〜、夜は約2500円となっている。

 2005年には、藤沢市内小田急・片瀬江ノ島の駅近く、新江ノ島水族館の向かいという好立地に湘南店をオープン。さらに、2007年には横浜市港南区の京急、横浜市営地下鉄の上大岡駅前ショッピングセンター「カミオ」に、上大岡店をオープンさせている。現在は神奈川県内に3店ある体制だ。


「サンアロハ」湘南店、入口の彫り物は鈴木総料理長が自ら彫った。

 人気メニューは、カレーではジューシーでやわらかな豚肉が1枚どんと乗った「豚肉の煮込みカレー」(1415円)が特に顧客からの支持が高い。「限定ロコモコ」(1090円)は、通常の1.5倍というビックなアメリカンサイズのハンバーグがご飯の上に乗っている。ソースは、グレイビーソース、デミグラスソース、調味料などを絶妙に合わせた特製ソースとなっている。

 ドリンクはハワイアンビールの人気が高い。「コナビール」の「ビッグウエーブ・ゴールデンエール」、「ロングボード・ラガー」などだ。

 今後はハワイなどへの海外出店、FC展開なども考えていくとのことで、パイオニアとしてのパワーは健在である。


チャコールグリルとナチュラルハーブの提案が好感触

 今年3月13日にさいたま市大宮区の大宮駅ビル「ルミネ2」4階のレストランゾーンにオープンしたのが、「ラナイ・ハワイアン・ナチュラル・ディッシュズ」。

 経営はゼットンで、同社としては6店目のハワイアン業態であり、中目黒にあった店を閉めて、大宮に新店をつくったことになる。


「ラナイ ハワイアン ナチュラル ディッシュズ」外観


「ラナイ ハワイアン ナチュラル ディッシュズ」店内

 単純にハワイアンの店ではなく、チャコールグリルとナチュラルハーブや有機野菜を使用した健康食メニューが売りでもある。チャコールグリルでは、「ポークスペアリブ」(1150円)、「ビーフステーキ」(1750円)、「鮪のレアグリル」(1250円)、「チキンのグリル」(1280円)、「ハンバーグ」(1150円)をメインディッシュとして提案。また、ローズマリー、バジル、イタリアンパセリ、ディル、タイムなどといったナチュラルハーブを随所に使っている。


「ポークスペアリブ」(1150円)

“PUPU”と呼ばれる前菜は、「アヒポキ」(680円)、「ロミロミ・サーモン」(650円)、「ガーリック・シュリンプ」(850円)などのハワイのローカルフードを提供。

「オリジナル・ロコモコ」(960円)、「アヒポキ・ライスボウル」(890円)といったライスボウルのご飯には「のりたま」が振ってある。これは稲本社長が実際にハワイのレストランを食べ歩いたところ、「のりたま」を振ってある店が多かったので採用している、一つのこだわりだという。なお、ライスは白米6割に対して、発芽玄米が4割配合してある。ロコモコのソースは、子牛のグレイビーソースで、醤油とミルクが隠し味として入っている。


ハワイ版ヅケ丼の「アヒポキ・ライスボウル」(890円)と「ブルーハワイ」

 また、コーヒーはハワイアン・コナ・コーヒーのブレンド「ムームーコーヒー」(480円)ばかりでなく、コナ100%のコナ・プライムも650円、700円、800円と3種類用意している。無農薬のハーブティー(480〜500円)が飲めるのもうれしく、ハイビスカス、ステビア、ローズヒップをブレンドした「プア」などが楽しめる。

 そのほか、ドリンクはハワイアンビール、ノンアルコールカクテルが良く出る。ノンアルコールカクテルではグァバ、ピーチ、パッションの「ティーソーダー」(630円)、さらにタピオカが入ったミルクティー「モミティー」(630円)の評判が良い。“モミ”とは現地の言葉で真珠を意味する。

 席数は店内とテラスが半々ずつくらいで、計160席あるなかなかの大箱だ。来店数は平日で約400人、休日で約700人に達するが、7割が夕方4時までやっているランチと、ランチ需要が大きい。なので客単価は約2500円とあまり高くない。

 顧客層は女性が7割と多いが、「ルミネ」のシッピングバッグを持った人、若い奥さん、ショップの販売員が主流。そこは、埼玉県下トップの1日の乗降客約75万人を誇る、駅直結のファッションビルの中の店といった要素が強い。

 6月〜9月はテラスでビアガーデンもやっていて、こちらは1人2000円の飲み放題と、1人1800円のバーベキューセットの人気が高く、客単価は4000円ほどになる。


テラス席

「ハワイアン料理の人気は、2年前に公開された映画『フラガール』の影響があると思います。今は食堂使いに近くてリピート率も高く、予想以上の回転数ですが、初めての冬を迎えてお客さんが減ってきた時に、単価をどう上げていくかという課題は残ります」と、阿座上喬史店長は好調な現状に甘んじず、気を引き締めている。

 具体的にはフラダンスショーの導入を検討しており、このあたりはハワイアン業態では実績のあるゼットンのこと、手抜かりはないだろう。南国ムードを醸し出すデザインは、神谷デザイン事務所が手掛けている。


ハワイアンフード強化を打ち出すコナコーヒーチェーン

 ドトールコーヒーが経営するハワイアンリゾートカフェのチェーン「マウカメドウズ」は、展開して既に12年になり、ハワイアンブームの先駆者として数えられる店の1つだ。

 第1号店は「カフェ・コナファーム」の名で「恵比寿ガーデンプレイス」に出店。その後、駅ビルなど商業施設のインショップを中心にオープンを重ね、12店のチェーンとなっている。エリア的には、東京、神奈川、埼玉と首都圏1都2県に店舗があり、1番店は川崎アゼリア店、次いで小田原ラスカ店の売上が大きい。


「マウカメドウズ アトレ」大井町店外観


「マウカメドウズ」 アトレ大井町店店内

「マウカメドウズ」の名はドトールコーヒーが、ハワイ諸島最大の島であるハワイ島に所有する農園の名前に由来している。

 第1号店は、同社がハワイ島に「コナファーム」という南国の花のフラワーガーデン、フルーツガーデン、バーベキューができる観光農園をオープンしたことにちなんで開店。その後、「マウカメドウズ」というハワイ島最大のコーヒー農園を取得。その際に、山側にあった元々の「マウカメドウズ」を「マウカメドウズ・マウンテン」に、海側にあった「コナファーム」を「マウカメドウズ・オーシャン」にそれぞれ改名して、合わせて「マウカメドウズ」と呼ぶように変更した経緯がある。2つの農園の総面積は、東京ドーム16個分という広大なものである。それで、ハワイアンリゾートカフェのチェーン名も2号店目からは、「マウカメドウズ」に統一された。

 コンセプトは創業者で現会長の鳥羽博道氏がハワイのコナコーヒーの飲み口の良さにほれ込んで、ハワイアンテイストのリフレッシュできるカフェをつくりたいと発想したことによる。ハワイの農園はまさしく楽園を実現したものであり、その環境を日本で楽しんでもらおうという趣旨だ。

 コーヒー豆は自社工場で、直火焙煎で焼きが深くつくっており、ドトールの技術によりコクがあってさわやかさのある飲み口に仕上がっている。「ハワイコナブレンド」(500円)は、コナコーヒーにプラスして独自のほかの産地のコーヒーをブレンドした、この店の看板メニュー。

 しかし、せっかくなら飲みたいのはハワイの自社農園で育てられた、コナ100%コーヒーで、「100%ピュア」(500円)、最高級の「エクストラファンシー」(600円)はお勧めメニューだ。

 もっとこだわるなら、「ピーベリー」(650円)がある。コーヒーの実の中には2つの種が入っていて、その種がコーヒー豆と言われるのだが、稀に4%ほどの確率で1つしか種が入っていないものがある。それを「ビーベリー」と呼び、豆が丸いのが特徴である。希少価値のあるコナの「ビーベリー」コーヒーは、滅多に飲めるものではなく、「マウカメドウズ」ならではのメニューと言える。

 フードは、従来よりワッフルに定評があり、「キャラメルチョコバナナワッフル」(630円)などは、人気が高い。9月17日よりメニューを改訂。ハワイを意識した新規メニューを投入する。


「キャラメルチョコバナナワッフル」(630円)

 まず「ハワイアンロコモコ」(870円)はバター、ワイン、たまり醤油を使ったオリジナルソースが面白い。「スパイシーボウル」(870円)は、ハラペーニョ味の辛いミートソースがかかった丼だ。


「ハワイアンロコモコ」(870円)

 デザートでは、ハワイ特有の高さを出した皿盛りのケーキを提案する。たとえば、「彩りフルーツのミルフィーユ」(600円)は、サクサクのパイにさまざまなフルーツ、クリーム、アイスクリームなどが挟み込まれ、ボリュームたっぷりである。


「彩りフルーツのミルフィーユ」(600円)

 顧客単価は約900円。記者が訪問した、アトレ大井町店は53席とチェーンでは平均的な広さで、オープンして11年になるが、平日5回転、休日7回転する盛況を保っている。顧客は女性が8割で、20〜40代が主力になっている。平均滞在時間は約45分で、ドトールチェーンの10〜15分とは性格を異にしている。

「駅ビルのアトレで買物をされた人の休憩場所に使われていますので、午後2時から4時くらいにお客さんが集中します。これまではワッフルを目的に来られるお客さんが多く、リピート率も高いのですが、今後はよりハワイ色を強めて、ハワイにしょっちゅうは行けないけれどもリラックス、リフレッシュしたい人の期待にこたえたいです」と、同社カフェ・マウカメドウズ・セクションマネージャーの入澤恒彰氏は今後の抱負を語った。


茅ヶ崎から発信する日本発パシフィック・リムとは?

 ハワイアンダイニングを語る上で、どうしても外せないのは、湘南の茅ヶ崎である。茅ヶ崎にはハワイ関連のフード、雑貨、ファッションを合わせて15店前後の店があり、隣接分野のサーフィン専門店はその倍の30店もの集積がある。

 その茅ヶ崎のサザンビーチちがさきに臨む、ハワイからのコンサルティングを入れずに、日本人スタッフだけで初めて開いたパシフィック・リム専門店が「リキリキデリ」だ。


「リキリキデリ」外観


「リキリキデリ」店内

 パシフィック・リムというと、ハワイ発祥の西洋、東洋、ハワイの食材や調理法が融合したクロスカルチャーな料理というような意味合いを持つ。ローカルフードとの違いは、ロイ・ヤマグチ氏のようなシェフの創作力によって、世界の美食家をうならせるまでに高められた料理というようなニューアンスだろうか。しかし同店の場合は、ハワイ郷土料理も取り入れて、メニューを構成している。

オープンして10年だが、当初の5年は辻堂寄りにあり、現在地に移って5年になる。“リキリキ”とはオアフ島にあるハイウエイの名で、現地の言葉で「急げ、急げ」の意。

 ランチ、2時〜6時のアイドルタイム、ディナーと3種類のメニューを持つのが特徴。ランチの単価は約1200円で、女性が8割と圧倒的に多く、フラダンスを習っている人が多い。ディナーの単価は約2500円で、年齢層は20代〜60代と幅広く、家族やカップルが中心だ。

 それに対して、アイドルタイムは1000円未満の単価のメニューも多く、丼のご飯も多めに盛ってある。顧客層は男女を問わずサーファーが主流。人気の「TSUNAMI丼」(850円)は、日本ではシイラと呼ぶマヒマヒという白身魚をフライにして、甘酢タレをかけた丼だ。

 96席あり、夏は3回転、オフシーズンの冬でも1.5回転はする。今年は茅ヶ崎にちなむサザンオールスターズが活動休止前となる最後の年ということで、全国のファンが茅ヶ崎を訪れているが、この店も恩恵を受けているとのことだ。

 ウエディング需要も多く、夕方から夜に予約がよく入る。国道134号線を挟んですぐ海という立地を生かして、2階テラス席から見えるように、海岸で2人の門出を祝福する花火を打ち上げる演出は、深い感動を与える。烏帽子岩をかなたに見ながら、相模湾に夕日が沈んでいくサンセットもロマンチックだ。なので、サンセットを眺めるカフェとして、使う人も多いそうだ。

 パシフィック・リムの実例として、2つの料理をつくってもらった。メインディッシュから「ポークリブのアリィーステーキ」(1680円)は、ケイジャンスパイスのきいた骨付きポークステーキで、マンゴーマスタードソースでいただく。豪快でボリューム感ある盛り付けは、ハワイ島のキラウエア火山をイメージしている。なお“アリィー”とは現地語で「王様」の意味だ。

 前菜から「フライドヌードル入り春巻き」(760円)は、焼きそば入りの春巻きを、エビチリ、カレー、ホウレンソウと3色のカラフルなソースでいただく、見た目も楽しいメニュー。


「フライドヌードル入り春巻」(760円)とハワイでいま人気のカクテルの「ラバフロー」(1200円)


「ヤミヤミビーフ」(1680円) ヤミヤミは美味の意でココナツミルクが隠し味。

 これらに合わせるカクテル「ラバ・フロー」(1200円)は、キラウエアの溶岩を思わせる、ハワイで一番人気のココナッツテイストのカクテルだ。

 また、ローカルフードでは、ロコモコ発祥の地、ハワイ島ヒロ「カフェ100」のメニューから「キラウエアロコモコ」(580円)というメニューを提案。これは、メキシコ料理の「チリコンカルネ」とスパム、目玉焼きの乗った、地元で人気のロコモコである。

 日本では同店でしか食べられないという、ハワイで人気のスイーツ「アサイーボウル」は、栄養価の高いブラジル原産アサイーの果汁を凍らせて、アサイー自体は味がないのでマンゴー、バナナ、パインなどで味付けし、シリアル、牛乳と一緒に食べるもので、最近ハワイでは朝食として定着している。日本でもアスリートの中に愛好者が増えており、これから人気が出そうなスイーツである。


ハワイの朝食として定着したアサイーボウルが食せる店は日本でここだけ

「スタッフにはハワイ通やサーフィン、フラダンスに詳しい者もいます。海風やハワイのゆったりした音楽を感じてもらう癒しの空間でありたいです」と、橋本貴幸店長。

 今年7月には1ヶ月間「丸ビル」の湘南・鎌倉フェアに出店した。今秋も「コレド日本橋」で弁当を販売する予定で、東京での知名度も浸透してきている。


ハワイに行った気にさせる癒し空間をいかにつくるか

 以上、ハワイアンダイニングの各店がいかなる店づくりを行っているかを見てきたが、顧客が女性中心ということもあり、単価がせいぜい3000円台と低く、ランチ需要が多いことに気づかないだろうか。アルコール度数は全般に低めで、ノンアルコールカクテルが結構人気である。

 また、フラダンスでダイエットと言っているわりには、皿はアメリカンサイズで大盛りである。顧客はどちらかと言えば大食いで、カロリーが高めであろうがあまり気にしない傾向があると見て良さそうである。

 そして全般に癒しがテーマになっているが、夏に強く、冬に弱い業態であり、冬をどう乗り切るかが各店の知恵を絞るところだ。

 いずれにしても、ハワイアンダイニングはフラダンスの勢いが続く限り安泰ではないだろうか。そして、取材したほとんどの店主がハワイ好きであったことからも、ハワイが好きでないとなかなか打ち出しにくい業態と言えそうである。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2008年9月17日執筆