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フードリンクレポート


ドバイの発展でインド・中東・アフリカの「インド洋ダイニング」が勃興。
<後編>

2008.4.30
パリやニューヨーク経由で世界的に注目されつつある「インド洋ダイニング」。後編は、シリア、レバノン、エジプト、アフリカ、そしてアフロフレンチを取り上げる。


レバノン料理。ピーナツ味のドレッシングがかかった、ファラフェル(そら豆のコロッケ)サンドイッチ

ドバイのホテルで勤務したシェフがシリア料理店オープン

 イランの西隣のアラビア語を公用語とするアラブ世界は、イラク、東地中海、アラビア半島、エジプト、北アフリカと広大な地域に広がっており、料理も5つくらいの地域的なまとまりがあるという。つまり、日本で言えば関東、名古屋、関西、沖縄のような味の微妙な違いがあるというわけだ。

 東地中海地域にあたる、シリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナは、今は英仏の植民地支配を受けた後に別々の国になっているが、元々はシャームと呼ばれる同一の地域で、料理も大差ないのだという。

 東京の郊外・吉祥寺にある「カフェ・レイラ」は、シリアの世界遺産の街パルミラ出身のオーナーシェフ、アルカエム氏が開いたシャーム料理の店で、オープンして1年ほどになる。

 アルカエム氏はホテルマネジメントを学び、ドバイのホテルで勤務した後、来日。約4年間英語教師をしていたが、「本物のアラブ料理を食べさせる店が日本にはない」という思いが高じて、レストラン開業にいたったそうだ。吉祥寺を選んだのは外国人も多く住んでおり、アラブ料理に親しんでいる人も多いからだという。

 シリアの料理というと遠い国の料理のように思えるが、もう日本にも違う形で入っていて定着しているものもある。たとえば「ピタサンド」は、日本ではアメリカやヨーロッパの料理と思われており、元々はイスラエルから来たものと考えられているが、イスラエルも含んだ東地中海の食べ物である。

「カフェ・レイラ」でも、「ファラフェル」という豆のコロッケや野菜の入った「ピタサンド」(1000円)は人気メニューの1つだ。

 シャーム料理ではいろんな種類の豆がよく使われ、「ホモス」というヒヨコ豆のペースト(500円)は名物。全般にスパイスを多用するが、辛く刺激の強い味付けではないので、日本人にとっては食べやすいほうの部類だろう。

 そのほか中東の料理では欠かせない、「シシカバブ」(1800円)、「チキンカバブ」(1600円)はもちろん、トルコの「ドネルケバブ」風の焼肉に、チーズ風味のガーリック味が付いたアラビアンマヨネーズをかけてロールパンにサンドした、「シャワルマ・サンドイッチ」(1000円)、「キッベ」というシリアの牛肉か羊肉を使う餃子と肉まんの中間のような料理、「ケンタッキーをシリアから撤退させた」という伝統的なフライドチキンなどが味わえる。

 特にお勧めなのは、「マクルベ」(2000円)と呼ばれる炊き込みご飯で、チキン、揚げナス、トマトを鍋の底に置き、その上に米を乗せ、スープとスパイスを入れて炊き上げ、提供するときは鍋を逆さに向けて、具が上部にくるようにする。ちなみにマクルベとは、アラビア語で“逆さま”を意味するそうだ。

 全般に野菜、ヨーグルトを多用し、ヘルシーな印象がする料理である。

 食後のデザートには、パイの中にビスタチオナッツが入った蜂蜜漬けの甘いスイーツ、「バクラワ」が一般的だ。

 ドリンクはアラビア、トルコ、ヨーロッパ、メキシコのビールのほか、各種カクテルなどもある。

 また、「シーシャ」(水タバコ、800円)は、32種類もの豊富なフレーバーを誇り、ダブルアップル、メロン、ローズ、マンゴーあたりが人気だが、カプチーノ、コーラ、キュウリといった変り種もある。

 靴を脱いで上がって、じゅうたんがひかれた床にまったりと座って食べるスタイル。イベントでベリーダンスのショーを開催する日もある。

 顧客単価は3000円ほど。顧客は女性と外国人が多く、外国人でも特にアラブ人とドイツ人が多いとのことだ。

 レバノン料理を提供する店としては、かの日産自動車とルノーのCEO、カルロス・ゴーン氏の夫人で、レバノン出身のリタさんの経営する、「マイレバノン」が2004年代官山にオープン。06年には元麻布にカフェスタイルの2号店「マイレバノンカフェ」もオープンしている。


「マイレバノン」 店内

「ピタサンド」、「レバノン風ピザ」、ひよこ豆のペースト「ホムス」、「レンズ豆のスープ」、「ケバブ」、そら豆のコロッケ「ファラフェル」といったシャーム地方の料理や、レバノンのワイン、アラビアンコーヒーなどが味わえる。

 代官山本店の客単価は3500円、ランチは1000円ほどで提供されている。

「レバノンのことを日本の人に知ってもらいたい」との思いで開業したそうだが、リタさんも現在はフランス在住でたまに来日する程度。外国人客が主流で、店員も日本語が通じない難点がある。


全文(有料会員専用)の見出し
日本人に合ったエジプシャンスタイルの創作料理を提案
エチオピア人シェフが「ローズ・ド・サハラ」の遺伝子を継承
アフリカ料理をフレンチ風にアレンジしたアフロフレンチ
砂漠から飲料水を掘り当てて海外にまで輸出するドバイ
(写真全21点)

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2008年4月18日

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