フードリンクレポート
【分煙条例、ちょっと待った!】
9割が喫煙の個店、どうすればいい?
間宮 園子氏
和食居酒屋「助六」 代表
「助六」の暖簾の前に立つ、間宮園子氏。
・公務員・会社員に愛され、横浜で23年
「助六」のある相鉄線星川駅に繁華街はない。新しい商業ビルも建たず、飲食店も数えるほどしかない。周辺には、区役所、消防署、郵便局などの官公庁とNTTなど大手企業がある。以前より、官公庁や会社で働く方々が増えているので、持ち帰り弁当店は増えたが、飲食店は増えていないのが現状。繁華街も隣の駅まで行かなければない。
週に3日も来るような馴染みのお客に支持されて、間宮氏の家業として23年間営業を続けてきた「助六」。間宮園子氏は、4年前に「助六」の代表となった。それまで、際コーポレーションのイタリアン「リースコーピオン」の厨房で3年間修業した。
「リースコーピオンには際コーポレーションの総料理長を始め、実力のある料理人が揃っていました。そこでアシスタントとして、和洋中で幅広く料理の勉強をさせていただきました。中島武社長にも、おたまで頭を叩かれました(笑)」と間宮氏。
実家が人手不足となり急遽、4年前に跡を継いで代表となった間宮氏は、まず店舗改装を手がけた。そして、「居酒屋」から、和食専門店のカラーを出すため「和食居酒屋」に業態名を変更。
4年前に改装した「助六」外観。常連客が中心で目立った看板はない。
「帰ったら店はぼろぼろ。これでは若い人は働きたくない。半年求人募集をかけましたが、一人も来てくれませんでした。これでは一生来てくれないだろうと思い、改装を決意しました」
20坪に1500万円をかけて、カウンター、テーブル、座敷合わせて45席の店に改装。昔からのお客にも愛されるよう、流行りだったスタイリッシュではなく、落ち着いたデザインを選んだ。改装とともに、売上は1.5倍に上昇した。
「しまほっけ炙り」など、シンプルなメニューだが素材にこだわった手作り和食、390円の生ビール、7000円で焼酎一升瓶キープなどの安価なドリンクが集客のポイントだ。客単価は3〜5千円と他の店より高めで、管理職クラスの方々が主なお客となっている。さらに、全員女性スタッフで運営していることも魅力となっている。
「特大 しまほっけ炙焼き」880円(税別)
日南地鶏を使った、串焼きの盛り合わせ。2本で400〜480円(税別)
・お客の9割が喫煙
「オフィスワーカーのお客様が多くて、9割はタバコを吸われます。もちろん、全席喫煙です。各テーブルには最初から灰皿を2つセットし、1人ずつ使えるようにしています。灰皿の交換もまめに行い、吸いがら4本以内で交換するルールを作っています」と、愛煙家を大事にしなければ商売にならないのが現状。
テーブルには灰皿を2個ずつセット。
神奈川県の分煙条例は仲間の外食経営者の間で話題になっておらず、このまま条例が通過してしまうことに不安を感じている。
「分煙条例は誰かが反対してくれて、成立なんかしないだろうと甘く考えていました。でも、私たちが反対の声を上げなければ変わらないと分かりました」という。意外に神奈川県内でも知られていないのかも知れない。
「うちの店で、喫煙・禁煙と席を分けて、タバコの煙を外に出すダクトなどの設備を作る余裕はありません。ましてや景気の先行きが思わしくない今です。神奈川県でダクトを作ってもらえないんでしょうか? 一度、ご自分で飲食店を経営してみて下さいと言いたいです」と憤りを感じている。
今のままで、「助六」が分煙条例に従えば、全面禁煙しか選べない。お客の9割が喫煙という現状で、生き残ることは難しいだろう。下がった売上を補償してくれるはずもない。
「分煙をやりたい店がやればよいし、お客様も店を自分で選べばいいと思います。タバコを吸うことは法律で認められていることです。吸うか吸わないかは自由。それを県が言うのはおかしいのでは。よけいなおせっかいはやめて欲しい」
この分煙条例で最も大きなしわ寄せがくるのが、個店だ。今回のインタビューでそれをはっきりと認識させてくれた。
・分煙条例、賛否両論を神奈川県に届けよう!
外食業界の将来に大きく影響する条例。外食業界でさらに議論を盛り上げよう。下記のURLからアクセスし、メールで意見を神奈川県に届けよう。
パブリックコメント
意見応募期間:2008年9月16日(火曜日)〜平成20年10月27日(月曜日)
下記から神奈川県宛メールしてください。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/gan/pubcom/tobacco_pubcom02.html
神奈川県横浜市保土ヶ谷区川辺町6 西方ビル1F
電話045-333-2024
*日祝は休業
【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年10月14日取材