フードリンクレポート
ハイネケンも“麦芽100%”。
しかも、飲みやすい。マイナス2度でも美味しい。
ハイネケン ジャパン株式会社
「ハイネケン エクストラコールド」のサーバー。
・「ハイネケン エクストラコールド」でイメージ訴求
専用のサーバー3台をつなげて、マイナス2度で抽出する「ハイネケン エクストラコールド」が人気だ。昨年5月から始め本年2月末現在で、57店舗のプレステージの高いレストランを中心に販売されている。ビールサーバーの注ぎ口(タップ)が凍っており、カウンターでのインパクトは強烈だ。
その「ハイネケン エクストラコールド」で使われるハイネケンも、通常のハイネケン生も全く同じビール。同一の樽から0度〜マイナス2度と通常の5〜7度の2種類のハイネケン生ビールを提供できる仕組み。「ハイネケン エクストラコールド」扱い店は基本的に、この2種を提供しているが、お客からの注文数は圧倒的に「ハイネケン エクストラコールド」が多いという。通常のハイネケン生ビールよりも、メニュー価格は10%程度高いにもかかわらず、お客からその価値を認められている。
これが、ハイネケンブランドのイメージアップに繋がっている。昨年1年間のビール5社の出荷量は6.5%減にもかかわらず、ハイネケンは前年プラスとなった。
「トップクオリティのレストランで『ハイネケン エクストラコールド』を扱っていただいています。その店では販売量が増え、お客様はハイネケンにプレミアムなイメージを持たれています」とバンド氏は言う。実際に本年1〜2月も瓶・樽ともに前年プラスと好調だ。
オフィス内のバーコーナーにて、ジョン・バンド氏(ハイネケン ジャパン代表取締役)
「ハイネケンを日本で“Significant Premium Beer(重要なプレミアムビール)”に育てるのが私の使命です。そのプレミアムなブランドイメージは業務市場で作られます。『ハイネケン エクストラコールド』や、サッカーの『UEFAチャンピオンズリーグ』への協賛の2つを主要な活動として、”Give everybody Heineken premium experience(皆さんにハイネケンのプレミアムな体験を与える)“ことでイメージを作っていきます。」
さらには、食事前に一杯ひっかけるヨーロッパの習慣“アペ”を日本に普及させようと、昨年から“ハイネケン・アペ”の活動を始めた。お客の少ない17〜19時の早い時間帯の集客策として参加する飲食店が徐々に増えている。
「DRUNK BEARS」のハイネケン・アペ
「AUXBACCHANALES」のハイネケン・アペ
・麦芽100%なのに、ウェル・バランス
ハイネケンは1863年、オランダ・アムステルダム生まれ。約150種のブランドを所有し、170ヶ国以上で販売される世界第2位のビール会社。日本ではキリンビールとの合弁会社であるハイネケン ジャパンが輸入販売している。ロングネック瓶、ハイネケンダークはオランダから輸入されているが、鮮度が求められる樽生、ラガータイプの瓶・缶はキリンビールが製造。
原材料は全てヨーロッパ産で、“麦芽100%“。特徴は、麦芽100%なのにフルーティーで、バランスが良くて、飲みやすい点。麦芽100%と聞くと、味が濃いイメージがあるが、全く異なる。しかも「ハイネケン エクストラコールド」のように0度〜マイナス2度で提供しても味や香りのバランスは変わらず、美味しく味わえる。
その秘密は、“ハイネケンA酵母“という独自の酵母にある。1886年にルイ・パスツールの弟子だったエリオン博士によって分離培養に成功したオリジナル酵母。フルーティーでバランスが良い独特の風味の源。この”ハイネケンA酵母“は、現在もハイネケンビールのためだけにオランダで培養され、各国のハイネケン製造工場へ送られている。
日本でも「エビス」「プレミアムモルツ」と麦芽100%ビールが昨年あたりから、プレミアムビール市場を広げている。しかし、国産ビールが非常に強くて、国際ブランドのシェアは低いのが現状。
日本に着任して1年も経たないバンド氏は日本のビール市場のユニークさを指摘する。
「海外に比べ、生ビールのウエイトが高いのに驚きました。日本はまったく違います。海外ではビールをブランドで指名しますが、日本では各社とも生ビールのクオリティが高いのでブランドは関係ありません。日本の消費者は生ビールにいいイメージを持っています。 生ビールのイメージでハイネケンを楽しんで欲しい。」
「ヨーロッパには様々なビールがあります、日本には様々な料理があるのにビールの種類が少ない。日本でもプレミアムビールの市場は広がると思います。ハイネケンが持つ約150種のブランドを次々と日本に持ってきたいですね。」と、バンド氏は日本市場の可能性に期待している。
欧米で販売されている、家庭用サーバー。米国では約300ドル。日本未発売。
【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年3月12日取材