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フードリンクレポート


日本は取り残されている!?最新バーボン事情。
ウイスキー人気はホンモノか?現場潜入レポート Day 20

2010.4.28
ウイスキービギナーのレポーター村田麻未が、毎日ウイスキーを飲みながら「ウイスキーのある風景」を体当たりレポート。1ヶ月の連載もいよいよ最終週。まだまだ尽きないウイスキーの魅力と現状を最後まで追い続けます! 毎日連載。全21回。


今季初めて発売された「フォアローゼズ」の“プライベート・セレクション”とは?

日本は取り残されている!?最新バーボン事情

 これまでこの連載ではあまり取り上げなかったバーボンですが、れっきとしたウイスキーの一ジャンル。バーボンと言ったらココというお店を最後に取ってありました。昨年9月に渋谷にオープンした「Craftheads」。バーボンを200種類以上も揃え、日本ではここでしか飲めないバーボンも、馴染みあるバーボンも、あらゆるバーボンが揃っているお店です。


カウンター奥の棚には、ウイスキーがずらり。これ以外にも倉庫にストックが多数あるそう。


ウイスキーともう一つの売りはビール。常時20種類位のタップ(生)ビールと数十種類のボトル生ビールを揃えています。

 私にとってバーボンとは、学生時代、大学の側の安いバーで先輩に付き合わされて飲んだ、「フォアローゼズ」や「アーリータイムズ」、「ワイルドターキー」のソーダ割りのイメージ。決して美味しかったイメージはなく、自分からは頼まないお酒でした。

 そんな話をオーナーの野村さん(通称マイケルさん)にしたところ、「まずはコレを飲んでみて。」と、ちょうどアメリカ出張で買い付けてきたばかりと言う、とっておきの「フォアローゼズ」を出してくれました。


とっておきの「フォアローゼズ」。ボトルの首の部分に“Private Selection”という文字が見えます。

 これは、文字通り“特別な”「フォアローゼズ」。樽固有の香りがそのままにボトリングした、ブレンド前のウイスキーなのです。熟成過程で樽ごとにイースト菌の種類を変えることで、樽別に香りの違うウイスキーを作り、それをブレンドして複雑な香りを出すそうですが、そのブレンドの前の状態の物。私が飲ませてもらった「floral yeast」は、まさに花の様な香りがグラスいぱいに漂い、うっとりするようなウイスキー。あまりに風味豊かなので、「これがあの、学生時代に飲んだことのある、フォアローゼズ?」と疑ってしまいました。

 それにしても、イースト菌の種類で香りを変えるなんて、ビックリです。もちろん、日本では手に入らず、出荷数が限られているため(11種のイーストで11種類のプライベート・セレクション。各100〜200本。)アメリカでもなかなか入手が困難だとか。


「OBSQ」というのがイーストの種類で、花の香りなので「floral yeast」。この種類は199本出荷されてそのうちの1本という意味。

 このプライベートセレクションは今季からの発売だそうで、バーボンマニアの間では大きな話題。「去年くらいから、アメリカでは“マイクロディスティラリー”と呼ばれる小規模の蒸溜所がブーム。全米のあちこちに小さな蒸溜所ができ、こだわりのハイエンドなウイスキーを作っていて売れているんだよね。」とマイケルさん。そんな高級ウイスキーブームの流れの中で、このスペシャル・セレクションのようなウイスキーが発売されるようになったのではと。

「でも、日本にはそんなウイスキーは入ってこないし、いまだに定番のバーボンしか流通していない。日本には全く危機感がなくて、取り残されているよ。そのうちアメリカにそっぽ向かれるんじゃないかな。」とも。そんなことが起こっているとは、知りませんでした。

 次にマイケルさんは、「ワイルドターキーも飲んでみる?」と。あまりいいイメージのない私はちょっと悩みましたが、チャレンジしてみることに。出てきたのは、「ワイルドターキー14年」。普通、「ワイルドターキー」は8年がメジャーで、見かけても12年。この14年も普段はお目にかかれない貴重なバーボンです。


「ワイルドターキー14年」。通常の物とは全く違う、カッコいいボトル。

 こちらも飲んで目からウロコ。まろやかな甘みも感じる、複雑で芳醇なウイスキー。私がかつて飲んだ「ワイルドターキー」は何だったのでしょうか?飲み方や飲む場所も多いにイメージダウンにつながっていたのかもしれません。もちろんこれは「ワイルドターキー」の中でも美味しい一品だと思いますが、私のイメージが覆される一本でした。出来上がった先入観に捕われたまま、敬遠しなくて良かったです。

 他にも、ここには「ワイルドターキー」だけで12種類もの品揃えがあるそう。「アメリカのその辺のBarより、バーボンの品揃えはいいはず。ましてや日本ではどこにも負けるわけにはいかない。」という自信をのぞかせるマイケルさん。年に1〜2回は直接アメリカに直接買い付けに行き、何十本ものウイスキー買って来るそう。品揃えの豊富さに納得です。


蒸溜所の解説やバーボンの作り方も詳しく書かれたメニューブック。蒸溜所との強いコネクションも。

 しかし、こんなにウイスキーの品揃えが多い同店でもビールとバーボンを飲むお客さんの割合は8:2くらい。バーボンを飲むお客さんは多くないとか。ウイスキーの中では、スコッチやジャパニーズウイスキーが人気の日本。でも、今回先入観を覆されるような美味しいバーボンと出会い、よりカジュアルに楽しめるバーボンはもっともっと飲まれてもいいのにと思う私です。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)


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