フードリンクレポート
ウイスキーブームを引き継げるか。
ジョニ黒とハーパー、キリンに移行。
ハーパーのマーケティングを担当する末田明氏(左)と、ジョニ黒を担当する松浦純也氏。
・ジョニ黒は若者にはモダンに映る
1980年代辺りまで高級スコッチウイスキーの代名詞として知られたジョニ黒。小売価格一万円という時代には贈答用として日本家庭のサイドボードを飾ってきた。ところが85年ころから並行輸入が盛んになり、価格がどんどん下がってきた。モエヘネシー・ディアジオの販売先の約9割が量販店、いわゆるスーパーやディスカウントストア、コンビニとなっていた。
今回、ジョニーウォーカー ブラックラベルをキリンビールは外食市場にも売り込む。キリンビールの営業マンが約20万件の生ビール販路を活用して、居酒屋などでの扱い店を開拓している。また、これ以外の外食店向けに、輸出元のディアジオ社とキリンが共同で設立したマーケティング会社、キリン・ディアジオの専任営業チームが活動している。東京・大阪・名古屋で若者向け洋風業態(“モダン・オン・トレード(MOT)”と呼ばれている)での扱い店開拓を行っている。
ちなみに、ジョニ黒よりアッパークラスの「ブルーラベル」などは、10月以降もモエヘネシー・ディアジオが販売している。ジョニーウォーカー・ブランドは2社に分かれて販売されていることになる。
ジョニ黒はハイボールブームに乗り、国産ウイスキー「富士山麓」の廉価版に加え、本格派ハイボールとしてオンメニューするよう提案している。
ジョニ黒
ジョニ黒を使ったブラックグラスハイボールのPOP。
消費者調査を行うと、ジョニーウォーカーの認知度は高いが、年配の方々の間では「古臭い酒」、40代の方は「オヤジ世代の酒」というイメージがあるが、若い世代では他のスコッチに比べると「現代的」と好意的。スタイリッシュになったボトルデザインやF1レースへの協賛などが若者に響いているようだ。
・ハーパーは、現代のスタイリッシュさを追求
1980年代バーボンブームで一世風靡したハーパー。通常のバーボンが西部劇のイメージを持っていた中で、唯一の都会派バーボンとして個性を放っていた。ソーダで割った、今で言うハイボール「ハーパー・ソーダ」はバブル時代のディスコ等ではキラー・ドリンクだった。
I.W.ハーパー
ハーパーソーダのPOP。
ジョニ黒に比べ、量販店での販売比率は約4割と低く、外食市場で売れ続けてきた。ボトルキープアイテムとして根強い人気がある。
キリンビールは、バーボンとしては既に「フォアローゼズ」を持つ。2002年にキリンが買収したブランドだ。棲み分けで、キリンビールが強い居酒屋ではフォアローゼズが優先される。従って、ハーパーの販売は、キリン・ディアジオが直接営業する前出のMOTを中心に展開される。
現在のハーパー・ユーザーは、バーボンブームを経験した40代以上が中心。20代では認知が低く、MOTに集まる若者を啓発することが必要。そのためには、ハーパーらしい都会的でスタイリッシュなイメージ、しかも現代風に変えたイメージを作りだそうとしている。
キリンビールにとり新たに加わったジョニ黒、ハーパーの外食市場での活動はスタートしたばかり、来年に向けキリンビールらしい新たな戦略が生み出されようとしている。ハイボールブームを引き継ぐ、ウイスキー復権に向けての試みがキリンでもなされている。