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フードリンクレポート


もう一つのレシピ カクテルにまつわるストーリー。
こんなカクテルに誰がした?あの美味しさとカッコ良さをもう一度! Day4

2010.6.11
近頃、カクテルを飲む機会が減っていませんか?今、若者を中心に“カクテル離れ”が進んでいます。居酒屋で飲んだまずいカクテルに懲りたから?本当に美味しいカクテルに出会ったことがないから?バーでスマートに注文し、丁寧に作られた美味しいカクテルを、名前の由来なんか語りながら飲む。かつて、カクテルにはそんなカッコ良さがあったはず。カクテル人気の復活を期待しながら、1ヶ月間美味しいカクテルを追い求めます!レポートは村田麻未。毎週水曜・金曜に掲載。全18回。


「テキーラ・サンライズ」って、なぜ有名になったか知っていますか?

もう一つのレシピ カクテルにまつわるストーリー

 先日、「モスコミュール」を銅製のマグで飲みました。続けて2軒のBarで。それぞれで聞いた、銅製マグの「モスコミュール」にまつわるストーリーが全く別の話でとても興味深いものでした。

 余談ですが、実は私、銅製マグの「モスコミュール」は初体験。カクテルなのに銅製の、しかもマグで?と、とても驚きました。オーセンティックなBarでは当たり前のことだそうですが、「モスコミュール」と言えば居酒屋カクテルの定番の一つというイメージがあり、恥ずかしながら正統派の「モスコミュール」を飲んだことが無かったのです。でも、同世代(20代〜30歳前後)の人で銅製マグのそれを知っている人はあまりいません。


オーセンティックバーではお馴染みの銅製マグの「モスコミュール」。

 話は戻って、1軒目でマスターから聞いた銅製マグの「モスコミュール」ストーリーは、アメリカの禁酒法時代までさかのぼります。“モスコ”=モスクワ、“ミュール”=ラバ(ウマとロバの交雑種、家畜。)という名からも想像がつく通り、アメリカでは労働者の飲み物として親しまれていたのですが、禁酒法時代それが飲めなくなってしまいます。そこで、考え出されたのが、銅のマグに入れることでお酒を連想させないようにし、かつその頃手に入りやすかったジンジャービアー(ノンアルコール)を使ってカモフラージュするという作戦でした。

 それですっかり納得していた私が、2軒目で聞いた話は全く別物。ウォッカブランドであるスミノフが単なるプロモーションの一環で、銅カップを売りたがっていたメーカーと組み、Barに売り込んで広まったというもの。

 調べてみると、他にもジンジャービアーの在庫処分のために考え出されたとか、諸説あるようです。どれも本当らしくもあり、作り話のようでもあり。でも、どれが本当なのかはあまり重要ではなく、それを語り継ぎながら「モスコミュール」を作るバーテンダーが素敵なのであり、それを聞きながら、思いを馳せながら飲むのが楽しいのです。

 別の日、「何かストーリーのあるカクテルをお願いします。」と訪れた「日比谷Bar」(池袋2号店)でオーダーしてみたところ、出てきたのは「テキーラ・サンライズ」。今や知らない人はいないくらい有名で、居酒屋メニューにも必ず登場するカクテルですが、元々はメキシコのマイナーなカクテルだったらしいのです。


いまや最も有名なカクテルの一つ「テキーラ・サンライズ」。

 それが、ローリング・ストーンズのボーカリスト、ミック・ジャガーが1972年のメキシコ公演の際に飲んで、いたく気に入り、毎日「テキーラ・サンライズ」を飲んだことから有名になったそうです。

 そんな話を聞くと、イメージが変わって、俄然カッコよく感じてしまうから不思議です。こちらも私は普段あえて頼まないカクテルですが、有名なカクテルにもストーリーがあり、丁寧に作られると本当に美味しいものです。


「日比谷Bar」(池袋2号店)店内。

 「日比谷Bar」では、現在、ストーリーにまつわるカクテルのタイアップ企画として、今年アカデミー賞で主演男優賞を受賞した映画「Crazy Heart」をイメージしたカクテル、その名も「クレイジー・ハート」を提供しています。


「Crazy Heart」とのタイアップ企画カクテル「クレイジー・ハート」(\1000)。


ジェントルマンジャック、ルジェ・ダブルカシス、レモンジュースを使っています。

 正直、映画を観ていないのでどれくらいイメージが重なるのかは分かりませんが、話の種に観る前、観た後に飲めたら面白いですよね。「日比谷Bar」では、定期的に映画や音楽とのタイアップカクテルを企画しているそうで、Twitterでもそんな話題をきっかけにお客さんとバーテンダーの会話がなされていました。

 カクテルにはカクテルの数だけストーリーがあり、そのストーリーを知ることで味わいが変わってきます。ストーリーと共に味わうのも、カクテルの楽しみ方の一つなのですね。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)


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