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フードリンクレポート


こだわり素材一つで、定番カクテルがおすすめカクテルに変身!?
こんなカクテルに誰がした?あの美味しさとカッコ良さをもう一度! Day9

2010.6.30
近頃、カクテルを飲む機会が減っていませんか?今、若者を中心に「カクテル離れ」が進んでいます。居酒屋で飲んだまずいカクテルに懲りたから?本当に美味しいカクテルに出会ったことがないから?バーでスマートに注文し、丁寧に作られた美味しいカクテルを、名前の由来なんか語りながら飲む。かつて、カクテルにはそんなカッコ良さがあったはず。カクテル人気の復活を期待しながら、美味しいカクテルを追い求めます!レポートは村田麻未。毎週水曜・金曜に掲載。全18回。


こだわり素材一つで大変身。

こだわり素材一つで、定番カクテルがおすすめカクテルに変身!?

 居酒屋の定番カクテルも、作り方一つで美味しさが全然違ってくるというのはDay5やDay7で紹介しましたが、作り方と同様に大きな差が生まれるのは素材選び。全てクオリティの高い物を使うのは無理でも、一つ、こだわりの材素材に変えるだけでさらにグレードアップしたカクテルとなり、そのこだわりがセールスポイントにもなります。

 最初に出会ったこだわり素材のカクテルは、「ソルティドッグ」。ウォッカをグレープフルーツジュースで割るという、とてもシンプルなカクテルで、今や居酒屋のみならずカラオケボックスのカクテルメニューにも名を連ねる定番カクテル。

 ちなみに、この「ソルティドッグ」が誕生したのはイギリスで、名前の由来は、「甲板員」という意味のスラング(俗語)“ソルティドッグ”から。甲板員が船の甲板の上で汗だらけ、塩だらけになって働く様子から名付けられたものとか。いまや、ウォッカベースのカクテルの代表格ですが、もともとジンベースでしかもライムジュース割りだったというのも興味深いところです。

 先日、「Bar Sona」(銀座)で「ソルティドッグ」を頼んだところ、マスターの関さんが取り出したのは、パッケージされた塩。なんでも、能登、輪島の塩で、“海塩”なのだそう。


こだわり素材の輪島の海塩。

 これをライムで湿らせたグラスの口に丁寧に付けて、ウォッカ(これは普通にスミノフ)を注ぎ、生から絞ったグレープフルーツを注ぐだけ。


ウォッカとグレープフルーツジュースのみのシンプルさ。

 飲んでみると、不思議なくらいうまく味が一つにまとまって、実に美味しかったんです!塩をグラスにつけたカクテルにありがちな、最初グラスを口に付けた時のピリっとした感じは全く無く、塩のまろやかな塩味が来た後に、グレープフルーツの酸味とうまく調和して塩の旨みさえ感じます。自然な物同士だけが出せる調和なのかもしれません。


今回も今まで飲んだことのない「ソルティドッグ」でした。

 関さんによると、この海塩はミネラルバランスが血液とほぼ同じ塩だそうで、塩自体の味が自然で旨みを感じる素材のようです。塩一つでこれだけ印象が変わるのかと、本当に驚きでした。

 もう一つ驚きの味だったのが、「BAR 酒仙堂」(銀座)で作ってもらった「カシスソーダ」。定番過ぎて、そしてシンプル過ぎて、わざわざバーで頼むことも思いつかないカクテルですが、これも素材と作り方次第で全く別物に。

 ここでは、クレーム・ド・カシスがこだわり素材。クレーム・ド・カシスの産地であるフランスのディジョンでも有名な「フィリップ・ド・ブルゴーニュ クレーム・ド・カシス」。まず濃さが違います。通常のものより、さらにとろっとした濃厚な質感で、色も非常に濃いクレーム・ド・カシス。

 まずは、絞ったレモン汁を氷が入ったグラスに注ぎます。ここも実はポイント。カットしたレモンを絞って入れる程度の量ではありません。20mlくらいはあったでしょうか、かなりのあらかじめ絞ってあるレモン汁を加えます。


レモンたっぷり絞って用意。

 そこへ、カシスを加えて、ソーダを注ぎます。カシスが濃厚で比重が思いので、よくマドラーでかき混ぜて完成。


この甘酸っぱいフレッシュ感、なんとも言えません!

 レモンの酸味と濃厚なカシスの甘みが絶妙なバランスでマッチ。レモン汁をたくさん入れた意味が分かりました。カシスが濃厚なので、バランスをとるためには、ある程度の量が必要だったのです。濃厚なカシスの風味がとても引き立ち、濃いカシスなだけに割っても鮮やかな色がキープされ、まさに“すぐり”(カシス)色。これが、ホンモノのカシスソーダだったんですね。


枝になったままの実物のすぐり。カウンターに活けてありました。こんな演出も粋。

 こだわり材素材一つで、カクテルがさらにグレードアップ。こんな工夫も挑戦してみる価値ありです。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)


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