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カフェでも洋風アレンジの寿司メニューが人気! 食材の組み合わせや発想は無限。

2010.11.10
見た目も楽しく鮮やかな新しさのある寿司メニューが話題になっている。前回に引き続き人気メニューを有する外食店を取材した。各店それぞれのアプローチの仕方から、寿司メニューのバリエーションの広さに迫る第二弾。レポートは国井直子。


「ダイニングカフェ ホーム」のデコ寿司。

テラス席でいただく酢飯料理

 9月にオープンしたばかりの「ダイニングカフェ ホーム」は表参道駅と明治神宮前駅の中間辺りに位置する日の光が心地よいカフェ。グランドオープンと同時に料理長に着任した高野耕作氏は15年以上寿司店で技術を磨いた寿司職人、ディナータイムのグランドメニューには「だし巻き卵(700円)」や「アサリの味噌汁(400円)」などカフェでは珍しい品揃えも見受けられる。ランチタイムはビュッフェスタイルとなっているがパスタ等と並んでちらし寿司のセレクトもあるのが面白い。

 高野氏はカフェでの料理について「外国のものと日本のものを融合させるのは単純なものではなく、やはりひとひねりが必要です」と語る。定番のカフェメニューに和の食材やテイストを少し足すことで新しい味を作り出す。例えば魚貝食材で作る定番パスタ「ペスカトーレ」には鰹節をあえて、香りをたたせている。その風味と味のバランスはお客様にも好評だという。


「ダイニングカフェ ホーム」 店内。


高野シェフ。

 現在差し込みメニューで人気なのは「グラス寿司」と題した2品(ディナータイムのみの提供)。どちらもグラスの側面から食材がカラフルに見えて目でも楽しめる。
「和牛の炙りグラス寿司青のり入り(900円)」は底面に酢飯をひき、その上に青海苔、再び酢飯、炒り卵、レタスの順にしきつめていく。上面には塩コショウで味付けをし、さっと表面を炙った茨城産の和牛を盛り付けわさびを添えている。青のりの磯の香りと塩味が絶妙なバランスだ。


和牛の炙りグラス寿司青のり入り(900円)。

 2品目は「サーモンとプリプリ海老のグラス寿司(800円)」。酢飯をひいた上にとびっこ、再び酢飯、塩コショウで味付けをし炙った築地直送の新鮮なサーモンと海老を飾り、最後は自家製パセリマヨネーズで濃厚に仕上げられている。

 テラス席もウリの同店ではグラスをドリンクだけではなく料理にも上手に使うことは日の光が料理に入り込みより一層、目を引くようだ。


サーモンとプリプリ海老のグラス寿司(800円)。

■「HOME」
東京都渋谷区神宮前5-11-1
電話:03-3406-0310
http://cafehome.jp/


見た目のポップさを追求

「隠れ和食 だいぶつころころ」はソファやテーブルや明るさ等がそれぞれの大小の個室が多く配される和居酒屋。店内中央には大きな大仏、小さな大仏がころころと沢山飾られていてテーマ性のある面白い空間。

 同店ではパフェスタイルの洋風酢飯メニュー「カリフォルニアライス サンデースタイル(980円)」が人気。


カリフォルニアライス サンデースタイル(980円)。

 グラスの上面が広いので「食べやすいのがいい」とこのグラスを選んだという料理長の小野賢(おのまさる)氏。上部に大胆飾られたパイナップルは、中華料理で酢豚にあえる調理方法もあるように酢には特に合う果物。今回酢飯をベースにしたこの料理には味の面だけではなく、グラスを華やかにしパフェ感を演出するビジュアル面でも一役かっている。その他に海老マヨとアボガドを酢飯の上にトッピングし濃厚でクリーミーな仕上がりだ。若い20〜30代前半のお客様や合コン利用の多い同店では中央に飾って皆でつまむ逸品としても人気。見た目のポップさを意識して狙った点はターゲットにもそのまま受け入れられている。


小野賢氏(「だいぶつころころ」料理長)。

 2品目は「薔薇サーモン焼霜寿司(680円)」、こちらも「見た目のキレイさ」を意識した点は「カリフォルニアライス サンデースタイル」と同じだ。桜でんぶをまぶした酢飯を一番下にひき、その上にアボガド、次は白いままの酢飯、錦糸玉子と層になるように重ねていく。最後に炙りサーモンを薔薇に見立ててグラスの上部に飾る。味が和風であってもデコレーションで洋風の華やかさを上手に表現するように工夫している。


薔薇サーモン焼霜寿司(680円)。


店内。

■「隠れ和食 だいぶつころころ」
店舗情報:東京都渋谷区宇田川町13−8 千歳会館B1
電話:03-5428-0230
http://www.secret-table.com/


食材の組み合わせは無限、ガラスのよさを活かす

 テーマレストラン&カフェの新宿5丁目にある「キリストンカフェ」。海外から取り寄せた祭壇やアンティーク家具、シャンデリアなどを使い教会をイメージした荘厳なムードのダイニングカフェ。2フロアのスペースで全380席という広さ。


店内。

 同店の料理は全般的に、イタリアン、フレンチ、スパニッシュなど洋食全般を取り扱い、カテゴリーにはあえてこだわらない。料理長の村上建司(むらかみたけし)氏は自身もホテルの洋食から和食、更にはエスニック料理などの様々な経験を積んでいる。「カテゴリにこだわらない、しばられないことが大事」と食材や調味料などの組み合わせを意識して無限にさせ、発想を広げようという考え方だ。


村上建司氏(キリストンカフェ料理長)。

 元々ご飯メニューとしてはダッチオーブンを使ったピラフやパエリアがグランドメニューで人気。今回はそれらのご飯メニューとは全く違う酢飯をつかった洋風テイストのメニューが新登場。「酸味の効いたサラダが今まであまりなかったのでサラダや前菜感覚で食べていただくのに丁度良いと考えています。自分が食べる側であればそういった食べ方をしますしお客様にもオススメしています」。

 一品目は「鮪と海老、アボガドのライスサラダ ガトー仕立て(980円)」。フラットなガラス皿にセルクルで型どった酢飯を中央に置いている。ご飯にはフレンチドレッシングやアボガドときゅうりを刻んだものも混ぜ込み塩で味を調整している。ケーキ状の酢飯の側面にはとびっことさくらでんぶを2色になるように貼り、上部に醤油であえたまぐろと醤油のゼリーをのせる。

「醤油のゼリーは面倒に思えるかもしれないが、醤油と白だしを1対1で混ぜゼラチンで固めるだけで簡単で使いやすいので家庭でもオススメです」と村上氏。ガラス皿の周りにはボイルされた海老とジェノベーゼペーストを飾って仕上げる。ジェノベーゼペーストにはにんにくやオリーブオイルで味もつけてあり、素材となっているバジルは魚介類によく合うので、好みでつけて食べるとさっぱりとしていた味が少しこくのある味になり二度楽しめる。


鮪と海老、アボガドのライスサラダ ガトー仕立て(980円)。

 2品目は「珊瑚礁に見立てたサーモンといくらのお寿司(680円)」。グラスに寿司を入れるスタイルだが、あえてその寿司をグラスに詰めるのではなく、手毬に一度丸く型どってからグラスに二つ入れている。こうすることで「水槽」のような奥行きの感じられる仕上がりになるという、メニュー名の所以だ。食べるときはお箸でつまむスタイル。手毬寿司の酢飯はオリーブオイルで香りづけされていて洋風のニュアンス。秋であれば飾る野菜を栗やキノコ類に変え寿司は穴子を握るとか秋らしい色合いを意識するなど、グラスの中でイメージをいかようにも変えられるという。


珊瑚礁に見立てたサーモンといくらのお寿司(680円)。

 料理の見せ方について村上氏は「『ベリーヌ(グラスにいれたスィーツこと)』を参考に『グラスに飾る』ということをひとつのジャンルと考えれば通常のメニューのジャンル分けと同じように色々出来ます。又カクテルなどからも学べるように『ガラスを使う』ということはそれなりの意味と付加価値があると思います」とまとめた。更に意識するのは立体感。「食べるものであるし、味付けや外食店としてのオペレーションはいつも考えていますが『見せるもの』としてひとつの『作品』の出来上がりを考えて取り組んでいます」。
 
 調理の気軽さと食べ易さ、そしてグラスだからこその見せ方など、洋風に酢飯をアレンジすることはバリエーションがまだまだ広がり楽しみ方に多様性があるといえるだろう。

■「キリストンカフェ 東京」
新宿区新宿5−17−13オリエンタルウェーブ8・9F
電話:03-5287-2426
http://www.secret-table.com/


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ)  2010年11月8日執筆


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