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フードリンクレポート


洋風アレンジが斬新で人気!
気軽に作れる酢飯メニューの魅力に迫る。

2010.10.22
酢飯を使った料理といえば、「握り」や「ちらし」など和の「寿司」が定番だが、最近は見た目も楽しく鮮やかな彩りの新しさのある酢飯メニューが人気だという。その盛付けは目を引き、特に女性客の間で話題になっている。各店の工夫を凝らしたアイデアメニューを紹介すると共に、洋風のアレンジにも対応できる「酢」の幅広さに迫る。レポートは国井直子。


デコ寿司「海鮮ちらし寿司パフェスタイル」1250円(「一の屋」)。

酢飯を洋風にアレンジするための工夫

「酢」はそれが主役になる料理といえば「寿司」「酢の物」などが分かり易く馴染みのあるところだ。又脇役としては「甘酢」「土佐酢」「黄身酢」など料理全体をまとめる調味料として色や香りを変化させ活躍する。元々の保存効果が高い点で「酢」は昔から重宝され、酢に漬けた「食材」は時間を置いても安全に食べることができる。それをベースに酢を使ったお料理はアレンジを重ね様々な美味しいメニューに発展してきたと言えるだろう。

 銀座の「酒菜庵 ちゃぼうず(中央区銀座一丁目)」(運営:中里有限会社)は新鮮な魚介類のお刺身をメインに旬の食材を中心にした和居酒屋。店内はカウンター席とテーブル席、団体利用にも使い易いこあがりの3つの空間を配し様々なシチュエーションで使い勝手がよい。


「ちゃぼうず」 店内。

 お刺身が美味しいことからもその場で「寿司を握ってほしい」というお客様からのリクエストは日常的で、その都度出来る限り対応しているという。料亭での本格的な日本料理から創作和食店でのアレンジを凝らした料理など幅広い経験を持つ料理長の萩原和茂氏は「酢」の扱いについてこう語る。「酢は主役にはならないが全体をまとめてくれるものという印象です。メインになる食材を決して邪魔せずそして欠かせない優れもので、特に春から夏にかけては爽やかさを意識した料理に多く使用しています」。


料理長の萩原和茂氏。

 又「洋」と「和」の違いについて「『洋』では塩とコショウが欠かせない調味料で、『和』のそれにあたるのが醤油と酢です」。洋風メニューであっても少量の醤油が隠し味で入っていると日本人には受け入れられ易いことは多くあるという。


タルトに見立てた洋風お寿司

 同店で人気の新しい寿司メニューは「サーモンといくらの海鮮タルト(1200円)」。「セルクル」という型を用い、酢飯や具材をミルフィーユ状に作り上げていく。酢飯、さくらでんぶ、酢でのばしたクリームチーズ、酢飯、たっぷりの万能葱の順で層を重ねる度に軽く押す。盛り付けるお皿には「黄身酢」と、日本料理の「たで酢」を洋風にアレンジした「バジル酢」をひく。そこへタルトの台あたる層状の酢飯を置き、その上面にスモークサーモンとイクラ、刻み海苔と白髪葱を飾り「タルト」に見立てて出来上がり。


海鮮タルトをつくる(調理工程写真)。


サーモンといくらの海鮮タルト 1200円。

 定番メニューでの人気は「海老のフリット カリフォルニアロール寿司(880円)」。飾りつけは季節にあわせて変えている。今時期は、どんぐりに見立てたうずらの卵や栗やさつまいもなどを使った秋のアレンジが美しい。中心にあるロール寿司は一年中定番で巻きの外側が海苔ではなく海苔は内側にくるスタイル。作る時はまきす(調理道具で海苔巻きを作るときに使う「すだれ」)に、海苔、酢飯、かつら剥きの大根(塩で柔らかくして酢漬けにしたもの)の順に一度のせ、それを一旦ひっくり返す。海苔が上面になったところで、海苔の上に大葉をのせて更にその上にタルタルソースと海老フライを置く。最後に大根が外側の状態で巻き込んでいくのだ。味を引き立てるタルタルソースには塩とコショウが元々入っているので、ここで使用する酢飯は通常よりも砂糖を控えて甘さが邪魔にならないように洋風アレンジならではの工夫をしているという。


海老のフリット カリフォルニアロール寿司 880円。


スプーンでいただくパフェスタイルのお寿司

「下町和食・銀座 一の屋(中央区銀座一丁目)」(運営:有限会社一の屋)ではガラスのグラスにお寿司を盛り付けたパフェスタイルが目新しい。同店はインテリアの素材の使い方にも特徴があある。金魚の泳ぐ石のテーブル席や木の格子から程よい明かりがさす心地よいこあがり席など、趣が感じられる大人の雰囲気の和居酒屋。


「一の屋」 店内。


「一の屋」 店内。

 料理長の中川大士氏が考案した「海鮮ちらし寿司パフェスタイル(1250円)」は見た目の楽しさと食感を特に大事にしたという。そのキーとなるのは通常のパフェによく使用されるコーンフレークにみたてた「発芽玄米フレーク」。この食感がいただく時に存在感を発揮する。作り方はまず、発芽玄米フレーク、その上に酢飯、カッテージチーズ、ネギトロを順に盛り、ここで一旦わさびと醤油とマヨネーズをブレンドしたソースをまわしかける。グラスの下まで味がいきわたり最後まで楽しめるようにという工夫だ。更に二段階目でパフェをつくりあげていく。先ほどのソースの上にアボガドとトマト、その上に海草(プチマリン)と酢飯を盛る。最上部のデコレーションには再度玄米フレークや生クリームをあしらったかのようにも見えるようにカッテージチーズを、そして海鮮類(芝海老、いくら、うに等)と薬味をバランスよく飾る。木のスプーンが添えられてスプーンでいただく。まさにパフェをいただく感覚の「海鮮ちらし寿司」だ。


料理長の中川大士氏。


海鮮ちらし寿司パフェスタイル 1250円。


アイデア次第でお寿司はより手軽に

 次に同店の女子会で特に人気という「豪華手毬寿司風三味幸福串みたらし団子仕立て(980円)」。同メニューも酢飯を使っているが見た目はみたらし団子そのもの。甘辛いべっこう餡にみたてたのは、味醂と醤油を煮きったタレで酢飯のお団子にたっぷりとかけられる。お団子には「うに」「和牛」「フォアグラ」と3つの豪華なメイン食材が添える形で付いている。お寿司のピンチョイスともいえる一品で、少しずつ色々楽しみたい女子にはたまらない。


豪華手毬寿司風三味幸福串みたらし団子仕立て 980円。

 三品目は「鮭といくらのわっぱ飯風 枡寿司仕立て秋飾り(890円)」。ひのきで出来た枡に「みつ葉」「大葉」「みぶ菜」と3種の「葉」が混ぜ込まれた酢飯が盛られている。3種の葉っぱの「ぱ」を掛け合わせた、メニュー名にも楽しさの隠し味があるオリジナルわっぱ風ご飯。作り方はそのご飯の上にしゃけをのせて枡に入れ、そのまま蒸し上げることで本来のわっぱ飯と同じようにひのきの香りをご飯にうつす。いくらや季節食材(むかごやぎんなん等)、紅葉のかまぼこなどを最後に飾って季節感を演出している。わっぱ飯という米を使った別のお料理と、お寿司をかけあわせ両方のよさをそのままにひとつの器に作り上げた、こちらも新しさが際立つアイデアの効いた逸品。


鮭といくらのわっぱ飯風 枡寿司仕立て秋飾り 890円。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年10月22日執筆


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