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メディカル・レストラン

メディカル・レストラン

第8回「華味鳥」

12.01
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします
 
 
 
 前回、所長は秋の鯖雲のもとで十番を逍遥していたのですが・・いつのまにやら北風ピューピュー+風邪ひきゴホゴホの時期になってしまいました。私の外来は風邪の患者さんやインフルエンザワクチン接種目的で来院される方々などで「ごった煮+ちゃんこ鍋」の状況の毎日。。。

 うん?ちゃんこ鍋。。鍋かぁ・・そろそろ鍋の季節だよな〜。。うん!そうだ。今晩はあそこにすんべえ!っと訪れたのは昔懐かし銀座のおもちゃの「博品館」。以前あっしも子供の放牧によく訪れたもんです。雨の日風の日嵐の日。。。気候に関係なしの室内アミュージメントパークですから親も子供も大満足。おもちゃは買わされますが(泣)銀座でのお買い物や用事をこなしながら子供を満足させるにはここでしょう!

 昔は銀座で子供の放牧する場所はデパートの屋上と相場が決まってましたよね。しかし今のデパートの屋上はしょぼいしょぼい。閑古鳥さえ寄り付かない(笑)。そして季節によって寒いは暑いはでXX。二丁目のティファニー本店の所にあったサンリオショップもよかったのですが今はなく、銀座でイケテる放牧地は博品館ぐらいのもんです。

 その博品館の上に美味しい「水炊き」のお店があります。そうは言っても雰囲気もお味もおこちゃま向けのお店ではありません。場所がらか、接待のサラリーマン&これから同伴出勤されるおねえさまとそのお連れのグループでうまっておりました。ついつい出勤前のきれいなおねえさま方に目が五寸くぎづけの所長でした(爆)。


「華味鳥」

(住所)東京都中央区銀座8-8-11 銀座博品館5F
(電話)03-3569-1621
(営業時間)11:30〜14:00(L.O.) 17:00〜23:00(L.O.22:00)
        土・日・祝 12:00〜21:00(L.O.)
(定休)年末年始 お盆

 
さて、席に着きましょう。今夜の所長の夕食は、

1、小鉢と前菜
2、華味鳥刺し
3、明太子
4、もも肉の炙り焼き
5、博多華味鳥水炊き
6、麺類&デザート

 前菜類をつまみながらビールをコクコクやっていましたら突然目の前に美しい鳥の刺し身が!


華味鳥刺し

 一口食べるとこれがべらぼうに美味い!それもそのはずお店の名前になっている「華味鳥」という鳥は陽光の振りそそぐ鶏舎で大豆やヨモギや海藻などが入った専用飼料で育てられており、刺身のお味はさっぱりしているのに甘みとコクが感じられて素晴らしい味でした。

「このアテに合うのは焼酎でしょう!」ってのんべえのスタッフが言いだしたのでさっそく芋焼酎を注文。極楽のマッチングを楽しみました。

 次が明太子これも軽く表面に火がいれてあり舌の上に一粒一粒がころがるテクスチャーが心地よく・・「こりゃ日本酒でしょう!」って事になり今度は日本酒を。


明太子

 炙り焼きは油ののった華味鳥にたっぷりと香辛料がかけてありピリッと刺激的に頂戴します。ここではじめて油を感じる作品が登場しましたが、これもまた水炊きコースにほど良いアクセントをつける作意かと思いました。そして・・「こりゃまたビールでしょう!」ってお酒が一巡して振り出しにもどってしまいました(笑)。


もも肉の炙り焼き

 さてメインの水炊きです。前回の「ひむか」の時にも思ったのですがお鍋の美味しさを写真に撮るのは難しいですね。具は汁の中に入ってしまっているし、かと言ってお箸で具を持ち上げてる料理雑誌風の写真もいかにもって感じでイヤらしい。単に鍋がグツグツと沸騰している写真みても。。。感じるのは美味そう!ではなく熱そう!でしょうからね〜笑。




博多華味鳥水炊き

 華味鳥の水炊きは、つくね、切り身、そして肝までが沢山入りお野菜もタップリ!コラーゲンの塊の様なスープは滋味溢れるお味で何倍でも飲み干せます。お野菜も残らず平らげました。

 最後に鳥スープを使ったおそばも美味しく、う〜ん満足。身体もポカポカ。心もホカホカ帰り道の寒さも心地よい、とっても豊かな気持ちになった今回のメディカルレストランでした〜。


鳥スープを使ったおそば

 飲みすぎたスタッフがトイレから帰ってきてお箸を持った所、「ありゃ?、なんやこれ?」なんと使ってた二本のお箸がコラーゲンスープでピッタリとくっついて離れないんです。「こりゃスゴイわ。所長!明日お肌ツルツルでっせ〜♪」まーオイラがツルツルになってもねぇ〜誰も喜ばないし・・・そこでハタと思い出したのがもう帰られてしまった銀座のおねえさま方。そうか〜毎晩お酒の夜のお仕事では肌荒れしますもんね〜。ここに水炊きを食べにこぞっていらっしゃるのは美味しいからって事以外にもお客様におねだりして「・・だってあそこに行くとお肌ツルツルになるんだもん。ねぇ〜連れてってたら〜ん♪」なんて事なんでしょうか?笑。

所長のコメント:
今回のテーマになっているコラーゲンですが、皆様はどんな感じの物質だとお考えでしょうか?

 コラーゲン・・それは皮膚、血管、腱、歯など殆どの組織に存在する繊維状のタンパク質で、からだを構成する全タンパク質の約30%を占めています。かなり大事なタンパク質だと言う事がわかりますよね。コラーゲンの生産所は、皮膚、軟骨や骨の細胞です。主として身体の色々な細胞の間を埋めて細胞同士をつなげバラバラにならない様に働いており、例えれば完成したジグソーパズルにつけるボンドみたいなもんですね。

 コラーゲンが多く含まれる食品は、鶏の手羽やガラ、豚足、豚耳、スペアリブ、牛スジ、フカヒレ、どじょう、ナマコ、魚の煮こごりなどです。

 一方、口から入ったタンパク質はアミノ酸まで細かく分解された後、腸管から吸収されると考えられています。ですから口から入れたタンパク質であるコラーゲンがそのまま吸収されて皮膚や関節や骨にペタペタとくっついて働いてくれるわけではありません。

 どんな栄養素やサプリメントでもそうですが、分解されずに作用して欲しい形のまま吸収されなければ本当に良い作用を及ぼしているかどうかは怪しいわけです。巷の健康食品売り場にいる風車ならぬ口車の弥七(爆)の言われるままに買いこんで毎日せっせと内服しても細かく分解されてしまってはなんの作用もないはずです。

 ところが最近、コラーゲンに関しましてはそうも言い切れない様です。

 コラーゲンが熱で分解されコラーゲンペプチド(まだかなりの大きさの分子です)になりますとそれらは大きな分子量のまま腸から吸収されるという報告が出てきております。このメカニズムとして、ある特定の信号となるペプチドを持つタンパク質は、大きな分子量のまま吸収されうること、また分子量の大きなペプチドは、小腸の細胞の隙間から吸収される可能性などが考えられています。人体の不思議なしくみ・・まだまだ未知の事は多そうですね。

 しかしスタッフが言ったような「明日お肌ツルツル。。」は誇張があるかもしれません。もしそうなるにしてもかなり後。皮膚の代謝はそんなに早くはないのです。だから「明日は彼とのデートだから今晩は水炊き〜♪」なーんてのは『付け焼き刃』ならぬ『付け焼き鶏』。まったくダメです(笑)。



 今回の水炊きに限らず鍋物は野菜がたっぷりと摂取でき健康メニューの代表選手です。お野菜はサラダで摂取しようとしてもそんなに沢山は取れません。サラダは野菜をナマのまま食しますからビタミンも熱で分解されない利点はありますが食物繊維の事を考えますと量も大事です。

 そして生野菜は身体を冷やします。それに比べて鍋は寒い頃にはピッタリですし、夏でもこの頃は冷房が大抵のレストランや職場に完備されてて室内に入るや否や我々の体はヒエカチの冷凍エビ状態。特に女性は冷え性の人も多く、夏でもホカロンを愛用されてますよね。ホカロンと鍋で身体の外と内と両方から身体を暖めて自律神経を正常に戻しましょう。

・・と言う事で、遅くなりました!今回の『健康×美食ラボ』からの提案は、

「温かい食事や飲み物をすすんで摂取すべし!」

 上記の様にあったかいお料理は身体を温めて自律神経に良い作用を及ぼします。

 そもそも暖かいという環境は健康と長寿への何よりの近道なのです。日本では沖縄県。アメリカならハワイ州。平均寿命NO.1の場所は基本的には暖かい土地です。「イヌイット(エスキモー)の人にはほとんど動脈硬化がない!」と言っても極地の環境のため平均寿命は長くはありません。我々人間は冬眠のできない恒温動物である事を思い出して下さい。外からだけでなく身体の内からも温めて健康で長生きをする体内環境を自分で作り出しましょう。

 さて、話は変わって入院患者さんの事を考えてみましょう。患者さんは様々のご病気を抱えて入院していらっしゃいますがどんな病気も自律神経へ影響を及ぼしその調節機構を破壊します。ところが、入院患者さんのお食事を考えてみますとハフハフするぐらいアチアチのお鍋やシャブシャブなんてメニューはないですし、実際今の医療体制では不完全ながらもなんとか保温した病院食を提供するのが悲しいかな精一杯です。また、患者さんへの差し入れにしましても、御寿司や果物、お菓子など冷たい料理や冷蔵庫で保存する物になってしまします。

 これって自律神経系までも考えた細やかな加療を考慮しますとおかしい事ですよね。病室におりますと歩ける人でもベッドで寝ていることが多く(ご病気なのですから当たり前ですが)長時間横になっておりますと下肢を中心に循環が悪くなり自律神経系の失調との相乗作用で益々体調不良に陥ります。

 重症の方はご無理でしょうが歩ける人などは食堂に集まってみんなで鍋などつつき笑いながら食事をすれば免疫力もアップし絶対に病気の改善にはいいと思うのですが。。。今の日本の医療事情では望むのにはかなり無理があるかもしれません。


■所長の独り言

 今回、華味鳥という鶏を美味しく頂戴しましたが、良い環境下で良い飼料で飼われた鶏は良質な蛋白質が豊富で余計な脂も少なく味も大変良かったです。この様に一般的に食べている餌と環境で全ての食材の味がみごとに変わるわけですね(勿論、採取のしかたや採取された後の処理と運搬のしかたも大事です)。

 ところが、生育している環境を勝手に人間が想像して有名になっている物もなかにはおります。

 その代表選手は「鳴門の鯛」。あの鳴門の渦の激しい水流に揉まれながら鯛の筋肉が締まって美味しくなる。。。と言う見て来たような大ウソが流布しております。私も子供の頃にその様に教わり、あの激しい渦の中を頑張って泳ぐ涙ぐましい鯛の姿を想像して感心しておりました。「苦労して成長するからこそ立派な鯛になれるのです。人も同様に逆風にめげずに苦労を重ねると・・・」と先生に教わった記憶が。。

 ところが激しい水流で揉まれればもまれるほど魚の肉は固くなり身は細くなり美味しくなくなる事が判明し、鳴門の鯛が美味しくなるのはあの近辺の餌が良質で豊富な事が本当の理由だと言う事も解明されたそうです。

 人間って「ほー。なるほどね!」っと納得させられる話に乗りやすいんでしょうね。だから週刊誌のネタも読者が喜ぶ様に毎週名手がその壷をおさえながら作るのでしょう。。。書かれる方にはとっても迷惑な話なんですけどね。。。

執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2006年11月27日

『健康×美食ラボ』所長
医学博士 岡野喜久夫

岡野内科診療所院長
東京都港区新橋1-18-14 三洋堂本館ビル8F
03-3502-8060

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