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よいもの美味しくからだにとり入れる
薬膳系 創作料理「八尋 (YAHIRO)六本木」
(東京・六本木/ヒーリングレストラン)
第296回 2009年12月15日
向かって一番左・管理栄養士千喜良たまきさん 左から二番目シェフ斎藤貴洋さん。
外観。
同店のオーナーは1977年に発表された「アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書」(通称:マクガバン・レポート)に賛同、病気になる前に日ごろの食事から見直し「体にいいものだけをとりいれる」「不要分は体から出す」という考えのもと今回のレストラン開発に取り組んだ。体に取り入れる野菜や魚など主食材は栄養豊富な旬のものをメインに使用し、又体から毒素や老廃物を流しだすという点でデトックス効果のある料理を提供する。本物の時代といわれる中でひとりずつ自らが健康の源である「食」について真剣に考え、食べるものを選んで向き合うことは大事であることをこのレストランを通し発信していきたいという。
料理人をはじめスタッフ達もこの想いを形にするため集まりひとつずつ具現化していった。マクガバン・レポートでも癌などの慢性病は薬では治らずバランスのとれた「食」そのものが最も重要であると提唱している。更に同店ではヒーリング効果を上げるため、ほとんどの料理に東洋(漢方)または西洋のオーガニックハーブを使用している。
メニュー監修は管理栄養士の千喜良たまきさん。管理栄養士として「ご病気の方だけではなく健康な人にも日ごろの食生活に対する意識や栄養相談は必要です」と語る。シェフの斎藤貴洋さんは栃木県で野菜を中心とするフレンチレストランで勤めた経験を持ち、自ら野菜を育て旬とその鮮度を直に学んだ。栄養価の高い産直素材を使用するのは、この頃からのこだわり。更に同店では料理に「漢方」や「オーガニックハーブ」を織り込んでいる。
特に栽培に3年掛かるという貴重な田七人参(中国では上薬という高級漢方素材)は同店独自のルートで仕入れられ、田七人参から出汁をとり全ての料理に使用する。田七人参は漢方薬として使われるのが通常で、出汁に使うことは珍しい。肝機能の向上・血液サラサラなどの効果が期待できる食材。健康食品として田七人参の錠剤(240錠(2ヶ月分)12,000円)も販売している。
乾燥の田七人参と瓶入り田七主根の錠剤。
看板メニューの田七鍋は美桜鶏と岩中豚と本日の鮮魚の3種のメイン具材と、スープの味を醤油ベースと味噌ベースの2種から選ぶことができる。豚肉は肉質も味もよくシェフが気に入った岩手県の岩中豚を使用。さらにその部位にこだわり豚足の上部だけを使いコラーゲンたっぷりに仕上げられた。
美桜鶏田七鍋。
こだわり素材として米もそのひとつ。特殊3分搗き米「芽ぐみ米」を使用。米殻を取り除き、胚芽の部分を残したもの。特許技術によって作られ栄養素が最大限に含まれている。白米よりもビタミンやミネラルが多く摂取でき、これに雑穀と魚沼産コシヒカリを混ぜて炊き上げ使用。ランチタイムは全メニューにこのごはんがつく。
ランチの定番 八尋カレー900円
野菜は栃木の自然の中のレストランでも経験を積んだ斎藤シェフの厳選素材を使用。旬のものや有機野菜を中心に取り扱い、野菜料理でありながらもエネルギーの湧くメニューを考案。そのひとつとして、メインディッシュのページには魚や肉料理と並び「炙り豆腐 味噌ラタトゥイユ(1,200円)」がある。こちらは田七出汁の入った自家製の豆腐を使用、色とりどりの季節野菜とあわせていただく。
炙り豆腐 味噌ラタトゥイユ 1,200円。
元気野菜のヒーリングサラダ 1,200円。
又野菜のドレッシングやその他ソースにはカナダ政府の厳しい検査(GMPライセンス)に合格したストラウス社の「メディカルハーブエキス」を使っている。聞きなれないが、もともと舌下から直接体内に摂取する目的で開発された天然ハーブエキスで血液の循環を正常化し心臓の働きを助けるとされる数種類のハーブが含まれるもの。ハーブレメディ(※ ハーブレメディ(Herbal remedy):ハーブ医学において「西洋医学の『薬』に対応するもの」を「レメディ」と呼ぶ)であるが健康調味料として料理への使用にも適している。エキス本品を同店にて購入することもできる。
ハーブエキス100ml100回分、12,000円で購入もできる。
デザートで人気なのは管理栄養士の千喜良さん考案「大根ゼリー(700円)」。透明感のある白さと丸い形状でつるんとした大根ゼリーはいただくとそのまま素材を感じられる。大根は煮ると甘くなるためその甘みを引き出し、はちみつで仕上げたオリジナルの逸品。
大根ゼリー 700円。
ドリンクメニューの頁にも「アンチエイジング」や「疲労回復」「滋養強壮」などの表記が並ぶ。たとえば「モーツアルト」と名づけられたカクテルはチョコレートのリキュールをつかい豆乳と組み合わせた健康的なカクテル。そのほかお客様の気分や体調にあわせ「味わい」「色合い」をアレンジしてくれるという。
ドリンク各種。
店内は天然素材のみを使用し木のぬくもりが感じられる明るく清潔感のある雰囲気。カウンター席も広々しており、奥には6名まではいれる個室の用意もある。全席禁煙で、テラス席(外)に喫煙ブースを用意している。又ヒーリング効果を高めるため身体をベストバランスに整えるサイマティクス・セラピー(音響療法)ルームも2010年2月に開設する。身体の中から外から真のヒーリングが堪能できる。
店内。
カウンター席。
メニューの表記は中医薬膳学の考えに基づき「温(身体を温める料理)」「寒(熱を冷ます料理)」「平(その中間)」と、五味(酸・苦・甘・辛・鹹)をマーク表示している。食材の組み合わせでバランスよく摂取することで心身の調和を保つことができるというのが薬膳料理の考え方だ。食事から飲み物まですべてに彩りと旬、健康と美容を意識していることがメニュー表からも感じられる。
東京の真ん中でレストランとして提供する以上、薬膳をうたいながらも「美味しくたべられる」というのが大前提。音楽などでエネルギーを感じるスポットは数多くあるものの健康イメージがうすい六本木という街でも「食事」「空間」「サービス」から「健康」「癒し」を感じられる場所として、お客様に楽しんでもらいたいという想いがある。同店を基幹店とし、今後は住宅街などで地域に密着した形で人々の食生活により馴染んで、提供する場を広げていきたいという構想もあるようだ。
【八尋 六本木(やひろ ろっぽんぎ)】
住所 | 東京都港区六本木4-12-11 TAKEOKA bldg. 2F |
電話番号 | 03-3478-8163 |
営業時間 | 11:00〜15:00、17:30〜22:30 (ティータイムは予約にて営業 15:00〜17:30) |
定休日 | 日・祝 |
客席数 | 41席 |
客単価 | ランチ1,000円、ディナー5,000円 |
目標月商 | 非公開 |
開店日 | 2009年10月5日 |
経営母体 | 株式会社ビープロデュース |
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
国井 直子(くにい なおこ) 2009年11月30日取材
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