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産地直送の旬のカキが食せるオイスター・ダイニングバー
「Ostrea 銀座8丁目店」
(東京・銀座/オイスターバー)

第329回 2010年8月17日

左から仙鳳趾(北海道、390円)、かき小町(広島、440円)、広田湾(岩手、390円).。
 バル. ジャパンが経営するオイスターバー&レストラン「Ostrea (オストレア)」。

 同社の主力業態で、2007年7月に赤坂見附に1号店をオープン。翌08年3月に銀座8丁目店、同9月に六本木店、09年6月に銀座コリドー通り店を展開と、都内の繁華街に4店を擁している。

 そうした中でも銀座8丁目店はカキだけを食べてお酒を飲んでいくバー利用の人が少なく、レストラン需要が多い異色の顧客層を持つ店なのだという。

「ほかの店が路面なのに対して、ビルの上にあるからでしょうか。銀座という立地ですし、予約していらっしゃる方も多いです」と小澤将生店長。


店内(禁煙席)。

 男性が女性を連れてくるパターンが多く、デート需要や早い時間帯はクラブに行く前の同伴でよく使われている。また男性の場合、接待の団体客も多い。奥には個室も用意されている。年齢的には、男性は30代から60代まで。女性は20代から40代が中心になっている。


個室。

 一人で来る人はカウンターで寛ぐパターンが主流だが、カウンターのあるほうはテーブル席を含めて喫煙できるゾーンになっている。

 店舗の間取りとして、エレベーターを上がるとワインセラーが見え、正面にカキの展示と厨房があり、左右に喫煙席と禁煙席の座席が完全に分かれている。なので禁煙ゾーンにタバコを吸った人の煙が到達する度合いは非常に少なく、実質的な分煙も達成できていると推定される。

 顧客単価は8000円くらい。銀座にあるオイスターバーにしては、イメージほど高くない。

 メニューの値段は、生カキは1個400円前後で各種ある。それ以外のレストランメニューも43もある充実ぶりで、焼きガキ(420円)、カキフライ(420円)のようなカキ料理や、生で食べるカボチャ、いろんな色のカブやトマトなどマニアックな野菜が満載の「有機野菜のバーニャカウダ」(1500円)が人気だ。

 コースもあって、3種のカキプラッター付きで4900円など。

 ワインは4台の大型ワインセラーがエントランス付近に設置されるほどの力の入れようで、産地ではオーストラリアとニュージーランドが特に充実している。そのほかの国でもフランス、イタリア、スペイン、ドイツなどが揃っている。種類は300種にも及び、値段も1本2850円から上は12万円まで、お好みに応じて楽しめる。


エントランス近くのワインセラー。

 お酒はワイン以外にも洋酒はまんべんなく品揃えしており、日本酒、焼酎もある。

 バル. ジャパン代表の藤野豊氏には、1つの素材にこだわった専門的な料理店を経営していきたいといった考えがあり、営業統括部長ともどもカキが好きだったので、オイスターバーを出店した経緯がある。藤野氏には「東京のオイスターバーは高い」との不満があり、安価で安全なカキを提供するために、さまざまな努力をしている。

 まず第一に、お店で出されるカキは産地直送である。なので、最短で前日に獲れたカキが次の日にはお店に届けられ、安くて鮮度のいいカキが顧客に提供できる。

 産地は、北海道、岩手、広島、長崎、冬は三重などで、普段から海外を含め全国各地の12、3種類のカキを食べ比べることができる。季節によっても、カキが一番おいしい産地が変わるし、種類によって全般にやわらかい食感のカキもあれば、コリコリと歯ごたえの良いカキもある。そこがカキの奥の深さだ。


人気が高い北海道の仙鳳趾(せんぽうし)。

 カキは生命力の非常に強い生き物で、水から離れても2週間くらい生きているという。しかし、体内の養分を使いながら生きているので、身がどんどん小さく縮んでいく。カキの鮮度の問題として、水揚げして1日で旨み成分であるグリコーゲンが半減し、2日では3分の1に減ってしまう。築地市場を通すと通常水揚げして通常5日くらいでお店のメニューとなるので、かなり味が落ちている。味覚の点でも鮮度は非常に大切である。

 そして安全の問題であるが、カキは扱いが難しい食材で、何か食中毒の症状が出た場合、消費者からまず疑いがかけられる。保健所も消費者の肩を持つ傾向があるので、特に冬のノロウィルスの時期は注意が必要だ。リスク管理が面倒なのが日本でオイスターバーがなかなか普及しない一因になっているのだが、何か嫌疑がかけられた場合にも、払拭できるように安全管理が徹底している。今まで「Ostrea」では食中毒事件は起こっていない。

「カキの殻を剥くのを絶対にアルバイトには任せません。社員が責任を持って作業します。殻が貝殻の中に入ると水で洗い流さないといけないので、海水も一緒に流れてしまいます。水で貝殻を落とす工程に使う水量を最低限に抑えて、海水を含んだままでカキを提供しないとおいしくないですからね」と小澤店長。


小澤将生店長。

 1日に出るカキの数は400個ほど。これを1人で作業すると9時間かかるそうだ。その大変な作業を社員が懸命に行って、顧客にカキを提供しているのだ。特に7月31日から一週間全店で開催した、赤坂見附店3周年記念のカキ半額フェアーでは1日に600個ほど売れる盛況だった。味を保つため、使う水も普通の水道水よりも塩素を多く残した塩水を使用している。


開店前の殻剥き作業。


1日に出るカキの数は400個ほど。

「Ostrea 」の生ガキは、鮮度が高く、貝殻の中に海水を多く含んでいるので、ソースをかけず、レモンとライムの汁をギュッと搾って食べるのを、店員は推奨している。それだけ東京で一番おいしいカキを提供できていると自信があるということだ。

 カキを安価で安全に、かつおいしく提供することにこだわるオイスターバー「Ostrea 」。中でも銀座8丁目店はダイニングの要素も強く備えた進化形の店と言え、日本でオイスターバーという業態が一般的なものになるか、牽引車として期待したいお店である。
 

Ostrea 銀座8丁目店
住所 東京都中央区銀座8-9-15 JEWEL BOX GINZA 8F
電話番号 03-3573-0711
営業時間 月〜金 17:00〜翌2:00(L.O.1:00 )
土・日・祝 17:00〜23:00 (L.O. 22:00)
定休日 無休
客席数 85席
客単価 8,000円
目標月商 2000万円
開店日 2008年3月29日
経営母体 株式会社バル. ジャパン
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年8月5日取材

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