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現地濃度満点!癒しの沖縄料理。
「沖縄酒場 ゆくてぃ家」
(東京・下北沢/沖縄料理)

第346回 2010年12月14日


沖縄らしい明るい外観に、道行く人が足を止める。

 下北沢駅南口、にぎやかな下北沢南口商店街を3分ほど歩くと、鮮やかな紅型ののれん、沖縄風の瓦が目を惹く店が見えてくる。12月6日にオープンした「沖縄酒場 ゆくてぃ家(け)」だ。


カウンター6席、テーブル3卓、小上がりの計23席。こじんまりした温かい雰囲気。

 「ゆくてぃけ」とは沖縄の言葉で「くつろいでね」「ゆっくりしていってね」という意味。
オーナーは新宿・品川で「串揚立呑日向食堂」を経営する中嶽敏郎氏。「ゆくてぃ家」は3軒目の店舗となる。新宿店の店長を務めていた眞榮城(まえしろ)優次氏が沖縄出身で、「いつか沖縄料理の店をやろう」と意気投合、最適の物件を探し続けていた。


中嶽氏(左)と店長の眞榮城氏(右)。オーナーと店長、というより共同経営者に近い。

「店を開く時は、立地にはこだわります。人の流れや街の雰囲気、それから夜景、川辺といったロケーション。今回沖縄料理店を出店するにあたり、店長の眞榮城のイメージに合う街でと思っていました。連日5軒以上見て回るなど、物件は相当数見ました」と中嶽氏は話す。「場所の次は人。この人なら、という人物を見つけるのは難しいけれど、場所と人の二つがそろった時は素晴らしい店になります。」


デメリットだった柱は、アーティストの手で店のウリに。

“人”に重きを置く中嶽氏が目指すのは「息の長い店。個性のある雰囲気のよい店。スタッフもお客さんもみんなが楽しい店」。だから「この店は眞榮城に任せています。彼の沖縄の味が味わえる、彼のお店。僕は一緒にやらせてもらってる、という感じ」だそうだ。

 お店をやっていく上で、人の運や縁は欠かせないという考え方もある。店内に入ってすぐの太い柱は「真っ黒で、デメリットでしかなかった」が、店内施工を担当した会社のとある人が「この柱に絵を描きたい」と申し出てくれた。今年の春、表参道・アミーホールの壁面に絵を描き話題になったアーティスト・西岡生石さんだ。オリオンビールのイメージカラーや星マークを盛り込み、力こぶををモチーフ化した模様で、見るだけで元気になる素晴らしいアート作品になった。


チャンプルーはもちろん「ニンジンシリシリー」など家庭料理の定番が並ぶ。

「沖縄料理店をやるならこの名前で、と決めていた」と眞榮城氏が語るように、お店のコンセプトは、沖縄の家庭料理とお酒を実家にでも帰ったかのように、『ゆっくりくつろいで』食べてもらうこと。まずは定番メニューからスタートし、今後は創作料理をどんどん増やし、メニューはさらに充実・変化していく予定だ。


沖縄の人気陶器店から取寄せた味のある器。


もずく酢(380円)は眞榮城氏の故郷・南城市知念から取寄せている。歯ごたえが違う。


もっちり腰のある生麺を使用した珍しい沖縄そば(600円)。
 
 お店で使われている琉球グラスや器類は、現地からわざわざ取寄せたもの。また「これは店長のお母さんが作った野菜」「これは店長のいとこが採った海ぶどう」といった具合に、沖縄直送の野菜・海藻類があふれている。眞榮城氏の沖縄料理のベースは彼の母親の味。やさしいのに複雑な味わいの沖縄そばのスープにも、ほどよい酸味が後を引くもずくの自家製酢にも、眞榮城氏のバックグラウンドが隠されている。


「久米仙」「残波」などおなじみの品、手に入りにくい「宮之鶴」も並ぶ。


お店の秘密の場所(!)特別に仕込んだ泡盛は、記念日などにお客さんに振る舞う予定。

 取材をしたのはオープン3日後、まだ客層は定まっていないが「下北沢なので、若い学生が多いかと思っていた」が、今のところは串揚店の常連客に加え、会社帰りのサラリーマンや地元の人たちが中心だ。終電帰りの人もふらりと入ってくる。

 料理の価格帯は500円前後、ドリンク類はソフトドリンク300円、割り物400円〜、泡盛500円〜とかなりリーズナブル。「家庭料理だから手軽に食べてほしいという気持ちもありますが、価格競争対策の面もあります(眞榮城氏)」

 数年前の沖縄ブームで、沖縄料理店・居酒屋はすっかり定着。沖縄料理というだけで人が集まるという段階は既に終わり、味・値段・個性など、プラスαの強みで勝負することが必要だ。人気の下北沢エリアには、多くの飲食店が軒を連ねている。リトル沖縄のような温かさとのどかさ、そして“本物の味”を持つこの店なら、力強く生き残っていけるかもしれない。



【沖縄酒場 ゆくてぃ家(け)】
住所 東京都世田谷区北沢2-14-1 OTビル1F
電話番号 03-5779-8687
営業時間 17:00〜翌1:00頃
定休日 なし
客席数 23席
客単価 3,000円
目標月商 300万円
開店日 2010年12月6日
経営母体 中嶽敏郎
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
 小長光 あかね(こながみつ あかね) 2010年12月8日取材

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