2001.3.10 |
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今月の特集 これで客を呼ぶ!ネーミングにこだわる(2/3)面
『お客に愛されるネーミング』
成功した商品から学ぶ!
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子供の名前だってイメージが先行する
ご存じのように、子供の名前には時代ごとに流行がある。女の子に、「子」をつけない。人気タレントの名前が流行したりする。
最近では、「さやか」、「あやか」、「はるか」などのひらがな名とともに、ヨーロッパ的な響きに漢字を当てはめた名前もよく見られる。「萌音(モネ)」、「摩亜沙(マアシャ)」、「樹理亜(ジュリア)」など、響きの美しさや雰囲気の良さが決め手になっているケースが増えてきている。
★ヒット商品からネーミングのコツを学ぼう!★
その2『通勤快足』 |
【英語の名前を見直し】 |
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1986年にレナウンが発売した抗菌防臭加工の靴下「通
勤快足」は、ネーミングの力によって爆発的にヒットしたひとつの典型である。同商品は、その十年前から「フレッシュライフ」という名前で売られていた。しかし売上げは伸びなかった。もちろん商品としての質や機能性は「通
勤快足」とほとんど変わりがなかった。 水虫や足の臭いに悩まされているビジネスマンにとってはうってつけの商品だった。にもかかわらず、ヒット商品には遠く及ばなかったのだ。
そこで、ネーミングの見直しが行われて。候補にあがったのは、「清潔太郎」「清潔民族」「水虫嫌い」「爽快」「アシ(足)クリーン」など50以上。その中でインパクトがあったのが「通
勤快足」だった。発案者は実際に京王線の「通勤快足」で”通勤”していた社員だったのだ。
しかしすんなり決まったわけではなかった。日本語ネーミングがダサくないか、駄
洒落っぽくないか、今一つマジではないか、などの理由で反対意見もあった。
そんな危惧を吹き飛ばすかのように、ネーミングの面白さも手伝って、初年度の売上げは「フレッシュライフ」の十倍にも跳ね上がった。 |
ところで、ネーミングでイメージを作るときには「意味イメージ」、「音感イメージ」、「視覚イメージ」の三点を考えるとよい。
第一の「意味イメージ」とは、商品の中身をピタリと言い表すイメージのこと。
例えば、スタンダードゲームとなった「オセロ」(ツクダ・オリジナル)。このネーミングは、シェイクスピアの名作「オセロ」からとったものだ。
黒人のオセロ将軍と白人の妻という設定は、コマの両面を白と黒にして使うゲームにはぴったりだった。
第二の「音感イメージ」とは、読んだときの音の響きや発音のしやすさのこと。
例えば、テレビ・プロデューサーの横澤氏(現在は、吉本興業東京支社長)は、「笑っていいとも!」「オレたちひょうきん族」など、フジテレビ時代、ヒット番組のタイトルを考える際には、書き言葉としてではなく、話し言葉つまり耳からのフィーリングを重要視したそうだ。
第三の「視覚イメージ」はロゴやマークのデザインの良さのことだ。また、カタカナ、ひらがな、漢字、ローマ字の組み合わせでインパクトを強くすることだ。
例えば、「ザめしや」という名の食堂チェーン店がある。「めしや」というと大衆食堂のイメージが強いが英語の冠詞The(ザ)をつけることで、おしゃれな雰囲気をプラスさせ、女性やファミリーでも気軽に入れるようにしたのだ。
では、このネーミングの三ポイントを具体的に、商品や店舗の名前を例に挙げながらみていこう。
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「見た目」のインパクト
「見た目」のインパクトは、どれだけ視覚に訴えるか、つまりどれだけ目立つかが勝負だ。以前は、商品イメージや飲食の内容を伝えることが重要視されていたが、最近では、字面
の面白さを表現したネーミングが目立つようだ。
例えば、関西地区では、関西弁をもじった店名が多い。「CoCo壱番屋」(カレーハウス)は、「ここ、一番や。」をもじったもので、「ここ」のローマ字表示と「一」ではなく「壱」を使うことで新鮮なイメージを与えている。「愛に恋(あいにこい)」(居酒屋)は「会いに来い」をもじったものだ。さらに「恋恋(こいこい)」(=来い来い)(居酒屋)もある。「笑笑」(居酒屋)は、「わいわい」、「わらわら」、「クスクス」などと読ませる。
このような「もじりネーミング」は、ワープロやパソコンの普及が影響している。文字変換をしていて、思わず面
白い変換が表記されたという経験をおもちの方も多いはずだ。「一気飲み」の一気から「一揆」(居酒屋)が、「免許皆伝」から「麺許皆伝」(ラーメン)が誕生した。「酔虎伝(すいこでん)」(居酒屋)は中国の名作「水滸伝」をもじったものだ。また、居酒屋が「胃酒屋」になったりもするのである。
海外のファッション業界では、漢字をプリントしたTシャツがここ数年にわたって流行している。これによって、若者に漢字嗜好が目立つようになってきているという。
例えば、商品と文字の意外なマッチングで新鮮な感覚を生み出したケースとしては、パナソニック(松下電器)のハイビジョンテレビ「画王」がある。AV・ハイテク業界では、カタカナや英語によるネーミングが氾濫しているが、その市場のなかに突如現われた「画王」は、従来ハイテク商品にはタブーとされていた漢字を用い、しかもこれもタブーだった濁点を敢えて使ったネーミングで、強いインパクトを出すのに成功したのである。
オムライス専門店の「赤井商店」は、あえてレトロな名前にして、その郷愁が受けている。「頑固(がんこ)」(とんかつ)や「一生懸命」(居酒屋)は漢字のもつ固さと内容の硬さを逆手にとった
ネーミングだ。「薔薇亭」(カレーハウス)や「自由軒」(食堂)、「宇宙軒」(食堂)もその”古めかしさ“が反対に”新鮮さ“を醸し出している例である。
焼き肉といえば、牛肉をイメージする。そこで、「牛若丸」や「丑家(うしや)」などが登場している。奇抜さでインパクトのある表記のひとつとして、数字がある。
「551 蓬莱(ごごいちのほうらい)」(中華料理)は、”ごごいち“の方が、耳障りの良さで、馴染み深いものだ。「肉十八(にくじゅうはち)」(焼き肉)は算数の九九をもじったものだ。
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★ヒット商品からネーミングのコツを学ぼう!★
その3『写ルンです』 |
【素朴な疑問をそのまま商品名に】 |
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レンズつきフィルムの代名詞となっているのが「写
ルンです」。富士フィルムが1984年の創業五十周年を記念して、新しいコンセプトのもとに研究開発に着手。二年後に発売されたのが「写
ルンです」だ。フイルムにレンズをセットした”レンズ付きフィルム”で。フイルムメーカーでなければ発送出来ない画期的なカメラだった。
フイルムにレンズをつけるという発想とそれを実現する技術は脱帽ものなのだが、なんといってもこの商品がヒットした秘密はネーミングだ。
紙のボディーについてるレンズは、その軽さといい、雑誌の付録のような感じを与えた。誰もがこのカメラを最初に手にした時に抱く疑問はあった。
「これ、写るんですか?」もちろん開発者としては。「大丈夫です。心配ありません。ホントに写
るんです。」 このような会話は、試作品の段階からあったと言う。当然、発売後には消費者との間にかわされることは十分に予想された。それならば、その会話をネーミングにしてみてはどうだろうか?
”私、これでも、ちゃんと写るんですよ”と商品に自己主張させるのだ。そこで決定されたのが「写
ルンです」。”るん”を”ルン”としてウキウキ、ルンルンとしたおチャメなノリを出したのが、ウケたのだ。 |