2001.3.10
今月の特集 これで客を呼ぶ!ネーミングにこだわる(3/3)面
『お客にされるネーミング 成功した商品から学ぶ!
今月の特集キーワード  
  消費者はネーミングにこだわる! 1面
  品種改良よりネーミング 1面
  子供の名前だってイメージが先行する 2面
  「見た目」のインパクト 2面
  「音感」で勝負する 3面
  短い字数で「意味」を伝える 3面
  今後、ネーミングに求められるものは? 3面


 「音感」で勝負する
 音感は、読み上げてよい感じがするかどうかという評価基準だ。
 例えば、大人気のチョコレート菓子「ポッキー」(江崎グリコ)。食べると”ポッキンポッキン“と折れる爽快な響きがする。製品を音で表現した新しいネーミングの試みだった。あまりにもシンプルすぎて拍子抜けするような命名法に思われるが、消費者には新鮮でわかりやすく親しみやすいと受け止められた。
発売後三十年以上を経て、なおも売れ続けているロングセラー商品の原動力の一つがネーミングだったことは間違いない。
 従来のネーミングの開発作業では、意味や文字の善し悪しの検証に主に時間がかけられ、「音感」については、語感がいいかどうかが軽い問題になるだけであった。
 しかし、最近では現代人の音感が格段に鋭くなったなかで、意味よりも音を優先させて言葉をとらえる傾向が強くなってきており、「音感」の重要性が非常に大きくなってきた。
 意味のわからない外国ブランドが、音の響きがいいだけで人気商品になっているのも、音感優位 の現状を証明している例である。
 人はまずイメージを買うという。ネーミングはその商品のイメージを伝えるきっかけとなる。だから、ネーミングは単にものの名前としての役割だけではなく、イメージ作りという面 でも重要な意味をもつのだ。
 「Friponne(フリポンヌ)」はフランス語。”いたずらっ子“という意味。同名の飲食店があるのだが、フレンチレストランでもなく、ビストロでもない。オーナーが沖縄出身ということで、メニューに沖縄料理がみられるのである。ただ、一見しただけでは全く意味不明。メニュー内容とのミスマッチが面 白いのかも?
 「ペピタ」はスペイン語。 ”小さい“という意味で、店内の狭さからつけたという。それぞれの言語がもつニュアンスが耳を、食欲を刺激する。
 イタリア語のリズムをうまく利用したネーミングがある。「たんとくわんと」(イタリア料理)。”たくさん食べなさい“をもじったものだ。また”おしゃべりして、食べちゃお“をもじって、「ペッチャオ・クッチャオ」(イタリア料理)という店名を付けた店舗もある。

 
★ヒット商品からネーミングのコツを学ぼう!★
その4『お〜いお茶』
【インパクトのある商品名は日常的な会話から】
 緑茶飲料のトップブランド「お〜いお茶」は、1989年2月、すでに発売されていた「缶 入り煎茶(緑茶)」のネーミングを一新して売り出された。  緑茶を缶 入りにすることは難しいと考えられていたが、技術陣の努力で85年に世界で初めて緑茶の缶 ドリンク化に成功した。ところが画期的商品にもかかわらず、売上げは思うように伸びなかった。その原因は、「お茶を飲むのに百円は出せない」という消費者感覚と商品の中身をストレートに表現した「煎茶(せんちゃ)」という商品名のインパクトが弱いだけでなく、読みにくく、馴染みにくいということがあった。このため、新しいネーミングが再検討された。  家庭の中で日常的に使われている言葉、「お〜いお茶」。消費者の耳に残ってるフレーズでありヤング層に家庭の雰囲気を味わってもらうネーミングとして「お〜いお茶」を使うことにしたのだ。  ネーミングを変えて効果は大きく、販売量も大きく伸びた。さらにペットボトル化にも成功して、毎年最高売上げを更新している。
 
 短い字数で「意味」を伝える
 俳句や短歌のように、短い字数ながらも、そのネーミングによって特定の情景やイメージを消費者に思い描かせることができるかどうかで、ネーミングのPR力に大きな差が生じる。
 例えば、昨年の流行語大賞に輝いた慎吾ママの挨拶「オッハー!」などは、話し言葉や掛け声がそのまま使われたものだ。「お〜いお茶」などもその例(コラム参照)。
「楽しみ料理 とりあえず」(無国籍料理)、「けしからんうまい」(ラーメン)、「ありがとう。」(自然派ラーメン)、「ちゃんと。」(無国籍料理)、「やくそくげんまん」(居酒屋)、「よってこや」(ラーメン)、「うふふのふ」(惣菜料理)など、飲食店のネーミングにも使われ出している。 「パセリの森」(レストラン)、「マルコの家」(無国籍料理)や「カルビの海賊」(焼き肉)、「素晴しき人生」(串焼き居酒屋)、「月の家」(創作料理)などは、物語や絵本をイメージさせるようなネーミングだ。
 今後、ネーミングに求められるものは?
ネーミングの流行りは、商品の機能特性をストレートに表現する名前から、商品との関連性は薄くても目立つことを主目的とした面 白ネーミングへ、さらに、一極集中型から分散傾向へといわれるように、ターゲットを絞ったマーケティング展開が導入されるにつれ、使い手の気分やシーンを彷彿とさせるイメージ型のネーミングが多くなってきている。
 このような流行りの変化は、商品開発やコミュニケーションともシンクロしているから、流行の方向性と合っているかどうかは、店舗の名前を考案するときには考慮しなくてはならない。
 商品がヒットするには、必ずワケがある。ヒット商品のネーミングを参考にしながら、インパクトのある店舗名やメニュー名のヒントにしたいものだ。