2001.4.7
今月の特集 多彩な「味噌・醤油」の特徴をつかみ、料理に使いこなそう (1/3)面
「味噌・醤油」をもう一度基礎から 勉強してみよう
今月の特集キーワード  
  卓事情を反映する加工調味料の普及と業務用の需要増 1面
  土地の気候風土によって育まれ洗練された味噌・醤油 2面
  製造工程や調合、熟成で個性を発揮「色の分類」がおすすめ 2面
  高級・減塩・安全志向へより細分化が進む醤油の商品群 3面
  セレクトの幅もメニューの広がりも可能性は無限大 3面

 卓事情を反映する加工調味料の普及と業務用の需要増
 昨年夏、日清製油生活科学研究所が行った「食意識」調査で、「おふくろの味」を尋ねたところ、「煮物」「ご飯類」、そして「味噌汁」という回答が上位 を占めた。調査対象は全国の45歳以上の男女約750人。回答の具体的な内容は、煮物(29%)の「肉じゃが」をトップに、2位 のご飯もの(19%)が「炊き込み・混ぜご飯」や「ちらしずし」など。3位 には汁もの(11%)が入り、「味噌汁」「雑煮」などが挙げられている。調査対象がミドル・シニア世代であることから、和食が大勢を占めるのは予想どおりで、列挙されたメニューは味噌・醤油で味を整えたいわゆる伝統食が目立つ。
 しかし一方、「わが家の代表的な料理」という問いに対しては、「カレー」が1位 で15%。2位の「シチュー」(7%)が「味噌汁」(4%)を上回るなど、家庭の食卓の洋風化が端的に現れている。近い将来には「おふくろの味」にカレーやシチューが登場することはまちがいないが、この現象を消費者の味噌・醤油離れと捉えるのはやや早計のようだ。
 総務庁の統計によると、一世帯当たりの味噌・醤油の消費量 は年々減少傾向にあるものの、外食チェーンなどの業務用の需要は増加気味。さらに、一般 家庭で需要を伸ばし続けているのが、味噌・醤油をベースとした加工調味料の類である。醤油にダシを加えた麺つゆや柑橘系を加えたポン酢、ドレッシング、ゴマ和えの素、田楽味噌や酢味噌などなど、調理の手間を省く便利商品は年々ラインナップが充実し、売り上げも極めて順調に推移している。
 業務用の味噌・醤油と便利商品の需要増の図式からは、消費者の外食機会の増加と調理の簡便化という現代の食卓事情がうかがえる。古くから日本人に親しまれ、生活に深く密着してきた調味料だけに、その動向は日本の食文化そのものを映しているといえるのかもしれない。
◇個性的な味噌料理で繁盛するお店に学ぶ◇
   酒楽食彩『茂』

創作力のあるアイディア料理を生み出す
青木茂永さん
店長による店内デザインは、老若男女を問わずくつろげる、きどりのないシックなもの。カウンターとテーブルを含めた客席は40席
酒楽食彩『茂』
東京都大田区山王2-3-8
         大森ビルディング2F
電話:03-3776-1230
営業:17:30〜0:00
休日:日曜
 赤味噌を使い分け、既成概念にと¥らわれない独自の発想でメニュー展開を図る
新鮮キャベツとにんにくの辛さが見事にマッチした「パリパリキャベツのにんにく味噌・700円」。キャベツは甘みの強いものを厳選。シンプルな料理ながら後を引くうまさ
 東京のJR大森駅前から徒歩1分の好立地にある「酒楽食彩  茂」さんは、味噌を上手に使いこなす創作料理店。シーズンごとに変えるメニューは40〜50種類で、その中には必ず、味噌ベースの数種類のメニューを加えている。
「ふろふき大根の柚子味噌」や「パリパリキャベツのにんにく味噌」、「素麺のごま味噌だれ」「鶏のごま味噌煮」「米なすのねぎ味噌グラタン」が一例。
 味噌は赤味噌系(仙台味噌など)を使い分け、保存のきく香り味噌として常備しており、オーダー後、手早くテーブルに供される。 「味噌は工夫次第でいろんな料理に展開できる魔法の調味料。香り味噌は和・洋を問わず、コクのあるアレンジができて便利です」と、店長の青木茂永さん。
 青木さんに料理の手ほどきをしたのは、長年、銀座や新橋で飲食店を経営してきた母親。そのおふくろの味を引き継ぎながら、斬新なセンスを加味する努力を重ねているという。
和と洋の組み合わせのお手本!「米なすのねぎ味噌グラタン・750円」。とろけるチーズの下には、ねぎとおかかで風味をつけた特性のねぎ味噌が。相性のいいなすと味噌をチーズのコクで包み込んだ逸品
「味噌・醤油は煮たてると風味を損なう、あるいは味噌は洋風メニューには合わないなどの既成概念にとらわないことがメニュー開発のコツだと思います。好奇心のままに探求していくと、思いがけない新しい味が広がります」
 料理人としてお客様に向き合う謙虚さも大事だが、同等量のプライドも必要。教育機関や徒弟制度の中で、専門教育を受けていないことが、むしろ自分の強みだと胸を張る。イタリアン系のメニューから、味噌ベースの懐かしい味のラインナップで、幅広い客層を獲得している。