フードリンクレポート


ガールズバーの人気が加速、都内各地でブームの兆し

2007.9.12
女性バーテンダーがカウンター越しに接客するガールズバーが、都内各地の盛り場で続々とオープンしている。飲食業者が新事業として展開したり、各所にチェーン化をはかる業者が出現したりするなど、これまでのキャバクラを主流としたナイトビジネスとは、異なった動きも出てきている。大阪から上陸して2年、ガールズバーにいよいよブームの兆しが見えてきた。


「レッド・ブーツ経堂店」 スポーツをイメージしたコスチューム

カウガールの制服の女の子とお酒、雰囲気を楽しむバー

 東京都内の下北沢、恵比寿、経堂に店舗を持ち、本格的なガールズバー・チェーン構築を目指しているのは、「レッド・ブーツ L.A.」。

 経営は企業・店舗のコンサルティングなどの事業を行うエイトランド・コーポレーション(本社・横浜市中区)で、「これまでになかったようなことにチャレンジしたい」という、中川勝弘社長の意向で、昨年3月にまず20席のスペースで、小田急・京王井の頭線下北沢駅の近くに下北沢店をオープン。

 大阪を中心に既に関西ではブレイクしていたガールズバーではあるが、東京をはじめ首都圏では草創期にあたる開店であった。

 営業時間は夜9時〜早朝5時で、チャージはオールタイム50分1000円(税込み)。お酒をつくって会話をしてくれる、ガールズのバーテンダーたちは、カウガールのコスチュームを着用している。

 また、店内ではダーツで遊ぶこともできる。ただし、ガールズが一緒に遊んでくれるわけではない。

「クラブでもキャバクラでもなく、飲食業のバーですから、売るのはあくまでお酒と雰囲気だと考えています。オプションで女の子と会話がついてくるという感じです」と3店を統括する倉本潤氏は、コンセプトを語る。

 お酒は900円からあり、ビール、ワインなどもあるが、メインはウィスキーとカクテル。ウィスキーは、スコッチ、ブランデーを含めて約70種類あり、カクテルも約300種類そろえている。

 平均客単価は6000円ほどで、3軒目、4軒目の店として、0時を過ぎてからのほうが混む。

 オープン当初は、ガールズバーという業態が認知されず苦戦したが、今年に入ってから好転してきて、現在は地元の固定客も付いて、コンスタントに1.5回転くらいはするようになった。

 顧客層は土地柄若い人が多く20代〜40代の男性が中心になっている。


「レッド・ブーツ下北沢店」のカウガール


「レッド・ブーツ下北沢店」外観


「レッド・ブーツ下北沢店」店内


「レッド・ブーツ下北沢店」店内


新店舗はスポーツをテーマにチアガール風のユニホーム

 下北沢の1号店に手ごたえを感じた「レッド・ブーツ L.A.」は、今年5月にJR・東京メトロ恵比寿駅近くに恵比寿店をオープン。

 こちらは下北沢店が地下1階にあるのに対して1階の路面店であり、認知が進むのが早い傾向があるという。

 席数は23席で、下北沢店との違いはDJが入って盛り上げることで、現在は土曜日の深夜0時くらいからがDJタイムとなっている。なお、恵比寿店にはダーツは置いておらず、営業も8時からと1時間早い開店だ。

 顧客層は30代〜50代の遊び方を知っている会社員が多く、一見の客が主流を占めている。

 さらに、7月にはスポーツをテーマにした経堂店を、小田急線経堂駅近くにニューオープン。この店はチアガール風のユニホームで、既存の2店とはコスチュームを変えている。内装も大型のプロジェクターを導入して、スポーツの映像を流している。

 経堂店は35席と席数も多く広々としており、ダーツで遊べるスペースもある。顧客は地元の人が主流で、20代〜50代と幅広い年齢層を集めている。

 今後も、「レッド・ブーツ L.A.」は都内各地での出店を予定しており、本格的にチェーン化していく方向にある。

 バーテンダーのガールズは各店とも20人〜25人の在籍で、ピーク時には7、8人が入る体制。ダブルワークの人もいれば、大学生もいる。店舗が複数あるので、シフトが組めない時は他店から応援を融通しあえるメリットもある。

 基本的にはガールズは話し好きの女性を集めているが、それだけではなく全員がお酒の勉強をしてカクテルをつくれることを目指している。特に下北沢店の場合は、ほぼ全員がつくれるようになっているという。


「レッド・ブーツ恵比寿店」外観


「レッド・ブーツ恵比寿店」女性スタッフはピーク時には7、8人いる


「レッド・ブーツ恵比寿店」店内


「レッド・ブーツ経堂店」大型スクリーンが店の中央に鎮座


「レッド・ブーツ経堂店」店内


「レッド・ブーツ経堂店」親しみやすいガールズ


「レッド・ブーツ経堂店」ダーツでも遊べる


ガールズバーとダーツバーがドッキングした複合業態店

 都内でおそらく最初にガールズバーの業態を展開したのは、京急線青物横丁駅近くにある「ライジング」であろう。

 オープンしたのは一昨年の11月で、この店の特徴としてガールズバーとダーツバーの複合店となっている。つまり、ガールズバーとして利用する人は女性バーテンダーが付き、ダーツバーとして利用する人は付かない。

 チャージはガールズバーとしては1時間1000円、ダーツバーとしては何時間いても300円であとはゲームごとに料金が発生する。

 ドリンクはソフトドリンク525円からあり、お酒も生ビールやカクテルが700円からとバーとしては安めの料金設定。ウィスキー、バーボンが主流だが、ボトルも焼酎が2000円から、ジャック・ダニエル4500円と安い。

 フードも野菜スティック、ミックスナッツのようなバーのメニューばかりでなく、パスタ、カレー、チキンライスといったお腹にたまるものもあり、全て1000円以内で提供している。

 25席あるが店内は活気があり、特に金曜日の夜は会社帰りの人や近所に住む常連で、満席状態になるほど盛況。ガールズバーとしての利用は3割ほどであるが、金曜日には5人〜7人のガールズが出勤し、なかなか華やかである。

 顧客の年齢層は20代〜60代と幅広く、年配の人も多いのでバーボンが結構出るのだという。顧客単価は4000円ほどだ。

「女の子は15人くらい在籍しています。ルールを守れてまじめに来てくれる人を採用していますね。飲食の延長線上で女の子が付いてくるというのが基本で、楽しんで過ごせる空間を目指しています」と店主の澤崎政雄氏。

 ダーツを目的に来た人が、その日の気分によってガールズバーとして利用するなど、相乗効果は出ているそうだ。

 また、ランチタイムは500円から提供しており、徒歩7、8分ほどの距離にある品川シーサイドにあるオフィスワーカーの来店も多数あって、毎日満席となる。特に、黒豚&地鶏ハンバーグ(600円)の人気が高い。ソフトドリンクは、プラス100円で付けられる。

 ランチタイムは「ハッピーアワー」と称して、ダーツが1ゲームにつき100円のサービスを行っている。ご飯のついでにちょっと息抜きに遊んで帰る人も多く、夜の集客につながっている。


「ライジング」店内


「ライジング」高級な熱帯魚が泳ぐ水槽が出迎えるエントランス


「ライジング」広いダーツスペース


「ライジング」顧客は地元住民や近隣の会社のオフィスワーカー


「ライジング」ガールズバー利用者のチャージは1時間1000円


「ライジング」気まぐれパスタ・ハマグリの白ワインソース(945円)


ウィスキー、バーボンのボトル主力にミドルの集客好調

 飲食からガールズバーに本格的に参入する動きもある。

 渋谷駅前でも立ち飲み系や庶民的な酒場が集まる渋谷中央街に、昨年8月にオープンしたのが、「ラッツ・バード」。

 経営するスリー・ディという会社の母体となっているドリームダブルコーポレーションは、10年前に設立され、飯田橋を中心に「プロント」、「とり鉄」、「土間土間」といったFC店を複合的に手がけてきた。

「最初は飲食のノウハウがなかったので、本部のバックボーン、支援を仰いでFCをやってきました。そろそろやり方もわかって、オリジナルの業態をと考えたのがガールズバーでした」(スリー・ディ取締役高橋朋宏氏)というのが出店の動機だ。

 出店にあたっては、大阪の有名店を30店近くも、何回も通ってリサーチしたという。

 オープンしてから最初の半年は知名度もなく、顧客の来店もパラパラといった状況だったが、顧客に“紹介カード”を配り、持参した人に女の子が一発芸を披露するなどといった、クチコミの効果が表れて、今年の春先より売り上げが上昇してきたそうだ。

 スタッフの時給も上げて、ダブルワーク、フーリーター、学生を問わず、きれい系、かわいい系、カッコいい系の女性バーテンダーを確保する戦略を取り、ていねいな言葉遣いと顧客の空気を読む接客姿勢を身に付けさせる教育も実った。

 顧客層は40代が中心と渋谷にしては年齢は高め、それに合わせて30人弱在籍するガールズの平均年齢も、21歳を少し越え、新宿あたりの繁盛店に比べればやや高めだという。制服はエロカッコいいをテーマに数種類ある。

 内装はテーブル、椅子ともに白を基調とした清楚な雰囲気でまとめており、席数は25席ある。

 顧客の滞在時間は2時間弱で、平均単価は6500円。チャージは1セット30分1500円が基本で、2名以上なら1000円に割引となる。なお、女性は500円である。

 ドリンクはウィスキー7割、焼酎2割、その他1割といった割合で、圧倒的にウィスキーが中心。1杯735円からあるが、基本はボトルで8割〜9割の顧客がボトルで飲むという。主力のジャック・ダニエルは6090円、焼酎は黒丸3990円などとなっている。

 フードはミックスナッツ、チーズ盛り合わせから、ピザ、スパゲティまで。バーらしいメニューは一通りある。

 ドリンクやフードをつくるのも、会計もすべてガールズが行う。

 顧客の入りは、2〜3回転、金曜日で3.5〜4回転といったところで、夜9時〜12時までが一番混む。終電が過ぎて早朝までは、そこそこといった感じだそうだ。

 ガールズはピーク時には8人〜11人、それ以外の時間帯は5人〜8人が出勤している。

 好評につき、年内に渋谷で2号店をオープンする予定だ。


「ラッツ・バード」白を基調とした店内


「ラッツ・バード」ウイスキーのボトル売りが中心


業態転換でガールズバーとカフェの二毛作店を試みる

 店舗をリニューアルするにあたって、ガールズバーに業態転換する店もある。

 東京・六本木の「4 COUNT BAR & CAFE」は、以前同所にあった「4 COUNT BAR」を今年6月22日に改装オープンしたもので、夜はガールズバー、昼はバリスタのいるカフェという二毛作店として運営していく方針を固めた。

 元々はサントリーが提案し、女性のフレアバーテンダーが華麗な技を見せるカジュアルなバー業態であったが、経営もジャパンフードシステムズから、横浜市内に炙り焼きダイニング「はな火」など4店及び新宿、立川にも和食居酒屋を展開してきた、飲食に進出して6年目のディネットに変わった。

 サントリーとディネットはミーティングを重ね、円形のカウンターはそのまま残し、モダンな若者向けの内装から、アメリカの古き良き時代の倉庫をイメージしたクラシックな雰囲気に、店をつくり変えた。

 また、ゆったり座れるテーブル席、個室もそなえ、その部分は女性が付くのでなく、通常の接待や合コンで使う居酒屋のようなスペースとして営業していくという。席数は約50席。

 現在のシステムは、まずお通しとして1000円で5品が盛られた前菜が出てくる。そして、ガールズバー営業であるカウンター席のみ、1時間ごとに1000円のチャージが付く。女性のみでの来店の場合は、チャージを取らない。料金体系は今後、見直す可能性もあるとのことが、女性が付いた場合にチャージが発生するシステムは変わらないそうだ。

 ドリンクは、リニューアル前から人気があった、オリジナルのウィスキーをベースにした炭酸のきいた飲みやすいカクテル、マグヤマザキ(900円)や、シュータースタイルでコーラで割る、スキッピングジャック(700円)などは、そのまま店の名物として残っている。

 フードは、リニューアル当初は食材にこだわった高単価のものを中心に提供していたが、今後ガールズバーとして足場を固めていく過程で、一般のバーらしいメニューに移行していく予定だ。

 顧客層は40代中心に、30代後半〜50代までが主流。土、日は結婚式の2次会、クラブイベントなどのパーティー需要が多く、1カ月に2、3回開かれるペースにある。

 10時〜19時はカフェタイムで、メインのコーヒーはバリスタがいれるエスプレッソ(380円〜)、コーヒー(580円〜)など。デコラティブに泡に描いていく、カフェアートは必見である。

 また、ランチタイムはランチプレート(950円)があり、どの時間に来店してもワイン、ビール、カクテルなどのアルコールが飲めるようになっている。



「4 COUNT BAR & CAFE」外観


「4 COUNT BAR & CAFE」円形カウンターがメインとなったシックな内装


「4 COUNT BAR & CAFE」夜の円形カウンターはガールズバーになる


「4 COUNT BAR & CAFE」名物カクテルのヤマザキマグ(900円)


「4 COUNT BAR & CAFE」バリスタが描くデコラティブなカフェアート


浴衣ガールが接客する焼酎バーが歌舞伎町にオープン

 さて、カウガール、チアガール風など、制服のコスチュームも多様化が進むガールズバーであるが、浴衣を制服に取り入れた店も出てきた。

 新宿・歌舞伎町のさくら通りにある「SAKURA」がそれだ。オープンは今年の5月25日。焼酎をメインに据えた店で、和のイメージから浴衣を制服にしたそうだ。

 席数はカウンター8席、テーブル席8席の計16席で、テーブル席の顧客には女性バーテンダーがテーブルの横に付いて、立ったまま接客する。

 チャージ料は1時間2000円で、以降は30分ごとに1000円となる。ドリンクは1杯1000円前後のものが多い。サービス料とTAXを合わせて10%がそれにかかってくる。

 自慢の焼酎は芋を中心に、麦、米、黒糖から牛乳のようなかなりレアなものまで、約200種類がそろっている。そのほか、梅酒、ウィスキー、バーボン、カクテルもあるが、基本は焼酎好きな人たちが集まるバーである。

 少し奥まったコマ劇場寄りの場所にあるが、浴衣姿のガールズが靖国通りまで出てティッシュを配るなどして、集客をはかっている。ティッシュを持参した人は、ドリンク1杯が無料となる。

 顧客層は20代〜50代のサラリーマンが主流で、1人か2人連れで来る人が多い。シックな内装の落ち着いた雰囲気の店であるためか、ガヤガヤと騒ぐ人はほとんどおらず、静かに飲んでいる人が大半であるという。

「静かな感じで女の子と飲みたい人が多いですね」とスタッフのじゅりさん。客筋はいいようだ。

 顧客の入りは、夜が深まるにつれてだんだんと集まり0時頃にピークとなり、終電とともに入れ替わって再度混んでくるというサイクル。終電までに来る人は1時間、2時間程度の短時間で帰るが、終電後に来る人は3時間、4時間と長居して始発までを過ごす人が多いという。ラストオーダーは早朝4時半で5時には閉店になるが、その頃には始発が動き出すから、歌舞伎町で楽しくかつリーズナブルに夜を明かす場所として、活用されている。

 ガールズは平素は3人〜4人、金曜日のみ5人〜6人が常時出勤している。在籍は9人ほどだというから、出勤率の高いスタッフで固めているのだろう。

 フードも乾き物、揚げ物など、バーでよく出されるメニューが一通りそろっているが、お勧めは自家製肉じゃが(1000円)だそうだ。


「SAKURA」和をイメージして制服に浴衣を採用


「SAKURA」看板


「SAKURA」落ち着いた雰囲気の店内


「SAKURA」バックバーには焼酎がすらり


キャバクラの深夜営業規制強化がビジネスチャンスに

 以上、見たように東京のガールズバーはようやく業態の認知が進んで、チェーン化の動きも一部に出てくるなど、普及期に入ってきたように思える。意外にもキャバクラなどナイトビジネスからの進出よりも、居酒屋などの飲食業からの進出や他業種からの新規事業が目立つのは、お酒に対する知識が必要だからか。各店の「女の子で売るというよりも、あくまで飲食の延長線上にある店」との営業姿勢も、印象に残った。

 風俗営業の規制が強化されて、キャバクラの深夜営業ができにくくなってきたことが、ガールズバー人気に拍車をかけている。

 ただし、ガールズバーでは女の子を指名できるわけではなく、横には座ってくれないし、むろん同伴もアフターもない。キャバクラとは質の違うタイプの顧客を集めている側面もあり、両者の顧客がどう違い、どう棲み分けるのかは課題として残されている。

 現在、東京のガールズバーの総数は30店〜40店と推測され、昨年の今頃に比べれば倍増はしているに相違ない。

 しかし、マスコミへの露出もまだまだ少なく、これからの業態であろう。

 大阪では増殖を続けて、そろそろ淘汰が始まっているとも聞くが、東京ではポストメイド業態の1つともみなされ、コスチュームのバリエーションが増えているのも面白い傾向だ。

 大阪では既に試みがある、ダーツバーとの融合、カフェとの二毛作、ランチ営業などが、東京でも始まっており、これからどんな進化を見せて東京のスタイルのガールズバーが確立されていくのか、展開が楽しみだ。 


●リンク集
レッド・ブーツ L.A.  http://redboots.jp/shimokitazawa.html
ライジング       http://r.gnavi.co.jp/b967800/
ラッツ・バード     http://r.gnavi.co.jp/b288600/
4 COUNT BAR & CAFE   http://www.4c-bc.com/
SAKURA         http://mobile.after.co.jp/shop/shinjuku/sakura/

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2007年9月8日