フードリンクレポート


芸能人がオーナー、プロデュースの店はなぜ流行るのか?

2009.3.25
近頃勢いが良い飲食店には芸能人やスポーツ選手が、オーナーであったり、プロデュースをしていたりする店が多い。かつての芸能人の店といえば、原宿あたりで本人のキャラクターを全面展開した店が多かったが、最近は本人が経営者としてセンスが突出していたり、バックに飲食の企業・プロ集団があったりといった具合で、むしろ本格派が目立つ。都内の「芸能人の店」を探訪してみた。


「Chanko Dining 若」「Onii_Chan and Kitchen」を展開するドリームアーク会長、花田勝さん。

花田勝はちゃんこ鍋をヘルシーなイメージに変革して成功

 芸能人の店といえばまず、第66代横綱若乃花でタレントの花田勝さんが会長として参画している、ドリームアークが展開する「Chanko Dining 若」が成功例として挙げられるだろう。

 第1号店で本店でもある六本木本店は、3月18日に6周年を迎え、総店舗数は全国に29店を数える。そのうち20店がFCの店となっている。

「Chanko Dining 若」の構想は、花田さん自身が「ちゃんこ鍋は栄養バランスも良くヘルシーな料理なのに、なぜかちゃんこ料理屋には女性客が少なく、デートでも使われない。そのイメージを変えたい」という思いを形にしたものである。

 ビジネスパートナーとして飲食プロデューサーであったドリームアーク社長の大森幹也氏は、花田さんのアイデアを形にして実現する役割を担っている。

 従来のちゃんこ鍋店は敷居が高く、相撲ファンや力士が行くイメージが強かったが、内装も若い女性が入りやすいおしゃれなダイニング形式とし、一般の女性やカップルも楽しめる、新ちゃんこ鍋業態を開拓した。

 花田さんは、メインとなる料理の味はすべてチェックしたうえで顧客に提供。椅子の高さも自ら座ってみて、女性にとって寛げるかどうかを判断して決めたという。個室だけでなくカップルシートもあり、花田さんの考え方が、隅々まで浸透した店といえよう。

「会長は物腰が柔らかく、自分から席を立って挨拶するので、初めて会った人は皆びっくりされます。計画性や対応の早さにはトップに立つ人の視点が随所に感じられます」と広報の甲斐陽子さん。

 まだ六本木店がオープンしたての頃、営業中に急に雨が降ってきた。その時花田さんはスタッフに命じて、傘のない人のために、ビニール傘を買って用意させたそうだ。ちゃんこ鍋の味もさることながら、こうした細かな気配りの接客が繁盛店になった背景にあるように感じられる。


「Chanko Dining 若」六本木店 外観


六本木店の店内、ディスプレイされた化粧廻しはコシノジュンコさんデザイン。


優勝カップが飾られた六本木店の個室。


テーブルの上には花田勝さんの原寸大手形が。

 六本木店の個室には入口からメインダイニングに入らずに、直接行ける構造になっており、お忍びの芸能人、テレビ局関係者、接待にも使い勝手が良い。

 ちゃんこ鍋は、定番として「元祖塩鍋」、「味噌鍋」、「醤油鍋」(各一人前2600円、2人前から)と3種類。年2回メニューチェンジをする季節の鍋では、現在「コラーゲン鍋」、「銀だらおろし鍋」、「胡麻坦々鍋」、「豚々レタス鍋」、「北海ちゃんこ鍋」と5種類が提案されている。創作性の強いものも含めて、これだけ多くの種類のちゃんこ鍋が味わえる店も少ないだろう。


塩鍋


自家製さつま揚げ、海老のクリームマヨネーズ和え(各880円)。

 最近のヒットは「コラーゲン鍋」で、昨年5月に直営店のメニューに加えたところ反響が大きく、7月に全店のメニューに拡大し、現在も継続して出している。「銀だらおろし鍋」は唯一の海鮮系の鍋で根強い人気がある。

 シメは、鍋にご飯を入れて雑炊にするかラーメンにするかだが、カロリーが半分の米とこんにゃく粒を混ぜ込んだ、こんにゃくライスを選ぶこともできる。

 一品料理は380円からあって、リーズナブルだ。

 ドリンクはビール「プレミアム・モルツ」650円のほか、オリジナルのお酒が充実。芋焼酎白麹の「若」、黒麹の「黒若」(各グラス600円、ボトル5000円)、麦焼酎「六十六代」(グラス600円、ボトル5800円)、日本酒の純米吟醸「六十六代」(300ml、1100円)、純米梅酒「若」(グラス550円、ボトル4000円)といったオリジナルが人気となっている。なお、六十六代は若乃花が66代の横綱であったことに由来する。


オリジナルの芋焼酎。

 六本木店の客単価は5000円。顧客層は20代後半〜50代と幅広く、男女比は4:6で女性がやや多い。席数は66席。2月から全品800円のランチ営業も始めた。


ランチの煮込みハンバーグ定食(800円)。

 なお、「Chanko Dining 若」は立地によって、内装、価格帯を変えており、チェーンといってもそれぞれが個店として成り立つように設計している。


ファミリー向け郊外型ダイニング新業態がブレイクの兆し

 新業態では、2007年12月にオープンした、大阪府堺市堺区のJR阪和線・南海高野線三国ヶ丘駅に近いダイニングレストラン「Onii_Chan and Kitchen」が好調。

 これは郊外立地のFCの店で、昨年12月16日には兵庫県西宮市の阪神西宮駅近くに2号店がオープンして、ランチには行列ができ、ディナーも予約で一杯の賑わいとなっている。


「OniiChan and Kitchen」堺本店 外観。


2階はパーテーション可動式。


3階ジャグジー個室。

 堺本店は3層の建物で、1階はメインダイニング、2階は可動式パーテーションのある人数に応じて使える空間、3階は接待や記念日に最適なジャグジー付を含む4つの個室と、用途によって使い分けられる店である。席数は138席。

 料理は和・洋・中折衷の創作で、毎朝市場から仕入れる新鮮な魚介類が売り。お造り、カルパッチョ、海鮮サラダなどが味わえる。

 メニューひと手間かけた個性的な料理が多く、とろけるチーズが乗ったハンバーグ、海の幸のペスカトーレ、生クリームが乗ったナポリタン、ビーフシチューのかかったオムライス、鶏のちゃんこ鍋、2種類の豆乳鍋などといったものが人気という。コラーゲン入りの鍋、ハンバーグ、冷奴などヘルシー&ビューティーを意識したメニューも多い。


海の幸たっぷりのペスカトーレ(1400円)。


クラシックシチューハンバーグステーキ(1380円)。

 花田さんが力士の頃から各地を食べ歩いた食通ぶりが、メニューに反映されていると言えよう。

 小学生以下の子供向けには、タコさんウィンナーやエビフライが付いた「キッズプレート」(660円)も用意している。

 ランチは880円からあり、各種の御膳も2000〜2500円で提供されている。

 顧客層はファミリーが中心で、男女比は4:6で女性がやや多い。顧客単価は3000〜4000円とカジュアルダイニングでも安めである。

 現在のところ関西に2店あるが、ドリームアークとしては立地を見て、全国に拡大したい意向を持っている。「Chanko Dining 若」に次ぐ、第2のブランドが確立できるか、注目していきたい。


酪農家の顔を持つ田中義剛が社長のホエー豚専門料理店

 南青山の東京メトロ銀座線・外苑前駅にほど近い路地に、去る2月5日オープンしたのは、タレントの田中義剛さんが社長・牧場長を務める花畑牧場の新店、「ホエー豚亭 東京 青山」。北海道・十勝の花畑牧場で肥育されたホエー豚を使った、豚丼としゃぶしゃぶの店だ。席数は33席。


「ホエー豚亭 東京 青山」の外観。


店内。


カウンター席。


北海道をイメージしたディスプレイ。

 ホエー豚というのは、チーズを製造する過程で生まれるホエー(乳清)を飲ませて育てた豚。牛乳からチーズを造れば、4分の3がホエーになる。多くのホエーは捨てられたり、乾燥させ粉末にしてプロティンサプリメントの原料になったりするが、栄養価が高く低脂肪でもある。

 田中さんはこのホエーが、ハムで有名なイタリアのパルマの豚が、ホエーを飲ませて育てられていることを知り、パルマに自ら視察に行って、ホエー豚の肥育を決めたという。資源の有効活用にも、コスト削減にもなっている。

 肥育を始めたのは2008年春からで、約7カ月後から出荷されている。現在は1000〜1500頭の豚が飼われている。

「ホエー豚亭」は北海道・中札内村にある花畑牧場内の1号店、新千歳空港の2号店に続く3店目となり道外では初出店だ。

 ランチで提供される「豚丼」(1260円)は十勝の郷土料理で、炭火で焼いた豚肉をうなぎの蒲焼のタレで食べるものだ。丼には、ホエー豚のバラ肉、モモ肉、ロースと3種類の部位が入っており、脂身が甘くてジューシーかつ、全般にギトギトした感じのないホエー豚の肉質が味わえる。タレも非加熱の生ダレとこだわったものだ。


ランチで提供される豚丼(1260円)。

 花畑牧場で製造したトムチーズをふりかけた、「トムチーズかけ豚丼」(1260円)もある。ディナーではカウンター席とテラス席で提供可能だ。

 ディナーの「しゃぶしゃぶ」(6300円)は、4種類の部位と野菜を、塩と柚子胡椒でいただく。

 シメはホエー豚100%のゼラチン質の塊である薬膳コラーゲンを、顧客の前で店員が鍋に入れて、薬膳スープに仕上げ、一緒にホエー豚の混ぜご飯を出してくれる。この演出がなかなかうまい。デザートには、生キャラメルをかけたアイスクリームが出る。

 オープン以来、ランチは長い行列ができ、ディナーも予約がいっぱいの状況が続いており、極めて好調なスタートだ。

 田中さんは元々が酪農を志して酪農学園大学を卒業した経歴の持ち主で、大学の頃、牧場を新しく開くには最低2億円もの資金が必要なことにショックを受け、資金をつくるために芸能人になったというエピソードを持つ。

 なぜ芸能人かというと、北海道出身の松山千春さんが出演する深夜番組を見て、田舎者でもギター1本で大金を稼ぎ出すことができると考えたからだ。ダメもとではじめた芸能活動で成功し、花畑牧場を開いたのは1992年。

 一時期4億円の借金を背負って自己破産寸前まで追い込まれたが、生キャラメル、チーズのカチョカヴァロがヒット。特に生キャラメルは北海道を代表する特産品の1つにまでなった。2009年3月期決算では、年商120億円を見込んでいる。


人気の生キャラメルシリーズ(850円)は食事をした人が買える。


生キャラメルニュータイプ(980円)、絵は北野武さん。

 花畑牧場のビジネスモデルは、牧場を経営しながら、観光地としてお客さんを呼び、酪農製品の製造を行い、レストランも運営するという、川上から川下まで一貫して展開することによって利益を出すというものだ。

 個々の製品のすべてがオリジナリティにあふれたものかどうかは別として、日本の酪農が生き残るためのサンプルを示している、急成長中のベンチャー企業といえるだろう。


島田紳助の子供の頃からの寿司屋になる夢を実現した店

 司会者として大活躍で芸能界きってのトークの名人、勉強家としても知られる島田紳助さん。その島田さんがオーナーである株式会社はせ川の東京初進出の店が、西麻布の「寿司 はせ川」だ。オープンしたのは昨年9月。

 江戸前寿司と京料理の店で、日本料理の基本を忠実に伝承して、さらに進化させるのを目標としている。はせ川は島田さんの本名の苗字、長谷川に由来し、子供の頃寿司職人になることを夢見ていた、島田さんの夢の実現の意味合いもある。

 社長の古塚建一氏は、元は京都で和食店を営んでおり、その店に食通の島田さんがよく通っていた。そこで次の店舗の構想を話したところ、島田さんと意気投合したとのことだ。

 はせ川1号店の大阪・心斎橋「寿司 はせ川」が、オープンしたのは2005年11月。島田さんの知名度もあって、当初より予約が殺到して瞬く間に繁盛店となった。その後、「京風鉄板 はせ川」、「BAR HASEGAWA」、「しゃぶしゃぶ チョモランマ」を次々とオープンしている。ちなみに、これら3店は心斎橋の同じビルにある。


「寿司はせ川」 外観。


エントランス。


カウンター。


京都の路地をイメージした個室スペースの通路。


島田紳助さんもお気に入りの個室。


壁には島田紳助さん直筆の社訓が掲げられている。

「寿司 はせ川」では、素材を産直も含めて全国から集めた旬のものを提供。食品添加物を使わず、その日仕入れた天然素材の味にこだわる。クツエビ、クエなど珍しい食材も、意識して揃えている。シャリは滋賀県朽木産の有機米コシヒカリを使用。

 島田さんは特に店づくりについて口出ししたりはしないが、料理や接客に対するアドバイスは適時行っているという。西麻布店も好調を持続しており、予約が必要な状況になっている。

 西麻布店のメニューは、寿司7貫を含む全7〜10品の季節の懐石が「竹取」(1万円)、「源氏」(1万3000円)。要予約で「今昔」(1万8000円)、「平家」(2万3000円)。カウンター席の寿司おまかせ「蜻蛉」(1万円)、「更級」(1万3000円)、「十六夜」(2万円)。単品メニューも寿司、焼き物、揚げ物、蒸し物、デザートに至るまで各種充実しており、明朗会計なのも嬉しい。


にぎり寿司、器は現代作家の内田鋼一さん。


季節の素材を生かした一品料理。

 ドリンクは、ビールでキリン生「ブラウマイスター」が味わえるほか、日本酒ではオリジナルの京都洛中の酒造メーカー酒蔵がつくった「古都 純米吟醸」をぜひ賞味したい。焼酎、ワイン、梅酒、ウィスキー、カクテルなども揃っている。

 顧客単価は1万〜1万5000円で、高級寿司の店としてはむしろ安いだろう。

 席数は52席で、奥に個室も8室あって接待需要が多いという。

 空間はインテリアデザイナーの繁田英紀氏によるもので、石畳、障子など京都の情緒を品良く表現している。アクセントの赤が鮮やかだ。カウンターは無垢のヒノキの一枚板が使われている。

 器は世界の窯を渡り歩いたという陶芸家の内田鋼一氏の現代的な作品で、料理を一段と引き立たせている。


美川憲一の洋風鉄板焼は独特の美意識と気配りが随所に

 西麻布交差点から北へ約100メートル。「Japanese TEPPAN dining Nishi-Azabuみかわ」は、歌手の美川憲一さんがプロデュースした店。

 独特の美意識を持ち、食通の美川さんだが、初のレストランのプロデュースで鉄板焼にチャレンジしてきた。オープンは昨年の11月17日で、連日予約が必要なほどの人気店となっている。滑り出し順調だ。席数は30席。


「Japanese TEPPAN dining Nishi-Azabu みかわ」 外観。


ガラス張りになったカウンター。


テーブル席。左手前にあるのはワインセラー。


個室。


店内のアンティークは美川憲一さんのコレクション。

 企画の発端はオーナーと美川さんの話し合いの中で、美川さんのセンスを生かした店を出してみたらどうかということになり、お好み焼屋をつくるつもりが、どんどんと美川さんが凝り出して徹底追求したところ、現在の形になったという。

 料理は美川さんが試食してゴーサインが出たものを出し、店に飾られている壺や絵画は美川さんが自宅から持ってきた私物である。

 また、鉄板焼のカウンターと調理場の間をガラス張りにしているのが「みかわ」の特徴だが、これは「お客様のほうに、におい、煙、飛んだ油が行かないように」という美川さんのアイデアとのことだ。

「美川さんは東京にいる時は、週に4、5回来られます。お店ではお客さんのテーブルを回ってごあいさつされますし、大スターなのに気配りがありサービス精神のある方です」(同店・秋澤幸広マネージャー)。

 またこの店は、0時を回った深夜帯は照明もさらに落として、大人の隠れ家的なワインバーとしての営業になる。テーブル席の側にワインセラーがあってサービスできるのも、一つの特徴になっている。

 料理はフレンチベースの鉄板焼のコースがメインで、7000円、1万円、1万3000円と3種類。高級食材を出す鉄板焼としては、決して高くない。

 健康と美を意識して、極力油を使わない調理法を採用。盛り付けも美川さんの美的センスを反映したどこか妖しい表現となっている。

 また、ワインとシャンパンはボトル8000円均一で、特にシャンパンはお得な値段設定だ。産地はボルドー、ブルゴーニュなど各地から40種類を揃えている。グラスは1000円でハウスワインが提供される。

 食材では、牛肉は「静岡そだち」という黒毛和牛のブランド牛を提供。「静岡育ち」は静岡県内10箇所の指定牧場で、通常より長い30ヶ月肥育した牛の肉で、3等級以上に格付されたものを指す。西の「松阪牛」と並んで雌牛の肉しか出荷せず、肉質のやわらかさと甘みが違う。


静岡そだち・黒毛和牛のタタキ(1800円)


フカヒレステーキ(5800円)。

 野菜はオーナーの出身地でもある全国一の有機野菜の産地、愛知県豊橋市の農家より有機野菜を直送している。

 他店では食べられない独創的なメニューとして、お好み焼の「みかわ焼」(1500円)は中にマカロニが入った洋風テイスト。「フカヒレステーキ みかわオリジナルソース」(5800円)は、宮城県気仙沼産のフカヒレを使い、ソースはトマトベースにピリ辛風味と生クリームを加えた。自家製カレー(1500円)は美川さんの意見を聞いて、何度もソースをつくり直したという自信作である。


みかわ焼(1500円)。

 顧客単価は1万2000〜1万3000円で、顧客層は30代以上で幅広い。個室もあるので芸能人も来店する。男女比は4:6でやや女性のほうが多い。

 顧客が帰るときに男性にはつまようじ、女性には脂取紙をプレゼントされる。これも美川さん流の気配りなのだろう。


和田アキ子、たむらけんじ、小倉優子ら成功者が続々と

 以上、花田勝さん、田中義剛さん、島田紳助さん、美川憲一さんといったタレントが経営、またはプロデュースするレストランを見てきたが、いずれもプロの経営者の視点を持ち、自らが食に関するビジネスに携わってきたか、またはレストラン運営会社を背景に持っていることがわかる。

 このほかにも、歌手の和田アキ子さんがプロデュースして2007年4月に東京・西麻布に1号店がオープン。現在は大阪の梅田と新大阪にも店舗がある、和食居酒屋「お菜屋 わだ家」も業績好調とのことだが、料理や内装を形にする作業、店舗の運営は未知インターナショナルが請け負っている。


「わだ家」の人気料理、浪速流豚のしゃぶしゃぶ。

 お笑いタレントのたむらけんじさんは、06年に焼肉店「炭火焼肉たむら」を大阪・京橋にオープンして大人気となった。さらに、大阪・南船場、名古屋・栄にも店舗を拡大している。

 それに触発されたか、タレントの小倉優子さんが経営陣の1人である、「焼肉小倉優子」が08年4月に大阪の新大阪でオープン。関西中心にすでに16店と急拡大している。関東では今のところ、さいたま市JR浦和駅前に1店ある。今年に入って、ラーメン店「イベリコラーメン小倉優子」の展開も始まり、大阪府岸和田市と奈良県橿原市に、現在2店ある。

 さらにお笑いコンビのペナルティ、ヒデ(中川秀樹)さんは、今年1月、五反田に「しゃぶしゃぶ秀久」をオープンしている。店舗のプロデュースと運営は、エムグラントフードサービスである。

 一方で東京・両国の国技館前に今年2月1日にオープンした「ワールドちゃんこ朝青龍」は、パイロット的な0号店で、今年中にアメリカで本格的な店舗展開を始めるらしい。バックにアメリカの会社があるとのこと。日本相撲協会では力士の副業を禁じているので、横綱・朝青龍さんは知人の実業家に名前を貸して出店したが、ちゃんこ鍋などの料理は横綱本人が試食をしてメニューとして出しているようだ。6種類あるちゃんこ鍋に加え、故郷のモンゴル料理、デザートの「ドルジケーキ」も売りである。三月場所では、大阪府立体育会館前に「ドルジケーキ」の屋台を出店している模様。

 人気に左右される芸能界であるだけに、収入安定のためにタレントが飲食店を出店する傾向は今後、ますます強まるかもしれない。飲食企業としても、タレントの知名度は大きなメリットで、タレントにアイデアを出させて、実際の現場は自分たちが仕切るケースが増えていくだろう。

 次は誰が、どの人と組んで、どんな業態を出店するのだろうか。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年3月19日執筆