フードリンクレポート


「牛角」が広げた焼肉に、「ミート矢澤」が高級店を出店。
〜シンガポールの日本食は深化。本格ブーム始まる。〜(6—4)

2010.7.8
セントーサ島とマリーナ・ベイの2ヶ所にカジノリゾートが誕生し、その周辺でさらなる開発が続き、好景気に沸くシンガポール。金融、医療だけでなく観光でも世界中から注目を集める国となった。特に、中国からの観光客が急増している。そんな中、タクシー運転手も「日本食が好きだね。ちょっと高いけど」と言うほど、日本食文化が浸透している。そして、さらに深化を始めた。6回シリーズ。レポートは安田正明。


「ミート矢澤」がシンガポール出店。支配人、鶴見伸明氏。

「牛角」が広げた焼肉に、「ミート矢澤」が高級店を出店

「牛角」がシンガポールに進出したのは2004年12月。シンガポールに現地法人を設立。当時人気の修道院を改修した商業施設チャイムスに出店した。現在はシンガポールに3店を展開。2号店であるUE SQUARE店を訪問したが、高単価にもかかわらず、欧米や現地の方々で繁盛していた。中国系の家族連れも多かった。


「牛角」1号店のチャイムス店。2004年12月開店。


欧米人が多いロバートソンウォークにあるUE SQUARE店。2005年9月開店。


道路側にはテラス席もある。


セットメニューが中心。2人前で100〜168ドル(7,000〜12,000円)と高い。


牛タン、カルビ、ロース。


様々な人種が「牛角」へ。上手に箸を使って焼く。

 そして、その「牛角」から徒歩1分の場所に、今年5月にオープンしたのが「焼肉 矢澤」。東京・五反田でA5ランクの黒毛和牛を使ったステーキとハンバーグの店「ミート矢澤」、黒毛和牛ハンバーガー「ブラックカウズ」など国内で5店を展開する株式会社ヤザワミート(東京都港区)が海外初出店した。

 物件は、以前、株式会社バルニバービ(大阪市)のカフェ「ガープ」があった場所。同店の撤退後、昨年暮から出店の準備をし、スケルトンから35坪で初期投資8千万円もかけて「焼肉 矢澤」を作り上げた。


「焼肉 矢澤」の支配人、鶴見伸明氏。日本から駐在している。


日本の銘柄牛の取引証を掲げているが、口蹄疫の問題で日本から輸入できない。現在は米国産牛を使用。


「切り落とし」20ドル(左)、「上カルビ」20ドル。「シャトーブリアン」58ドルもある。

 客単価も7〜8千円と高く、シンガポールで最も本格的な焼肉店を目指しているという。日本人の駐在員客が大半で「日本の美味い焼肉がようやく食べられるようになった」と喜ばれているという。日本人が行かない日本料理店は美味しくない、という話を海外でよく聞く。シンガポールでは今や日本料理は普通に食べられる状況。この中でもっと美味しい日本料理を求める動きが、まずは日本人駐在員の間から始まっている。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年6月24〜27日取材