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フードリンクレポート


【分煙条例、ちょっと待った!】
排気設備は過大投資。店舗面積で区別しては。
金子 宏志氏
かもんフードサービス株式会社 代表取締役

2008.10.22
東京・浜松町の「海ぶん鍋ぶん」が絶好調のかもんフードサービス。その本社は横浜にある。関東で居酒屋40店舗を展開しているが、内27店は分煙条例案を提起している神奈川県内だ。現在、分煙は行っていない。分煙は世の中の流れだが、早すぎる、と金子社長は主張する。


神奈川県分煙条例案に反対する、金子宏志氏。

居酒屋で灰皿を使わないテーブルはまれ

 かもんフードサービスが、東京・浜松町に本年9月にオープンした「海ぶん鍋ぶん」。人気の鍋だけでなく、鮮魚もウリとし、通年集客できる居酒屋として開発された業態だ。改装前の業態に比べて売上高は5割増と絶好調。赤坂にある既存業態も11月に「海ぶん鍋ぶん」に改装するという。


絶好調の「海ぶん鍋ぶん」(東京・浜松町)。


「和牛と九条葱 ピリ辛ちりとり鍋」。

 同店ではお客の95%は男性。男性同士で鍋をつつきあう姿がほほえましい。そんな男性客を数多く引きつけているのが、同社の業態の特徴。低価格居酒屋「かもん」、鮮魚居酒屋「茅ヶ崎 海ぶね」を主軸に、エリアは地元の神奈川県を中心に展開している。


「かもん 港南店」 ファサード


人気の「三崎マグロの鉄板ステーキ」480円(税別)

 そんな同社を突然襲ったのが、神奈川県の分煙条例案だ。

「意識はしていましたが、先のことなんだろうなと思っていました。弊社は、居酒屋が主体でタバコを吸うお客様が大半です。グループの中に必ずタバコを吸う方がいらっしゃって、灰皿を使わないテーブルはまれです。正直、行政から言われたら、最低限は守ればいいというスタンスでいました。その時が到来するまでは今のままでいこうと考えていました」と金子氏は正直に語る。

 実際に、分煙している店舗は今のところ1店もない。今回の分煙条例案の同社への影響は大きい。特に、条例案にある、タバコの煙の屋外排気設備を設けなければならないという点に問題があると金子氏は指摘する。


タバコの煙を排気するためには、給気・空調も強化が不可欠

 屋外への排気設備だけではなく、非喫煙区域から喫煙区域に向かう空気の流れ(秒速0.2m以上)が生じるようにすることが求められている。女性のスカートがそよぐ程度の風だが、これがそう簡単にはいかない。

「店内には換気機能はあります。しかし、喫煙エリアに今以上の換気機能を付けて外に排気するということは、給気機能も補てんしなければならない。すると、空調の設備も全部変わります。馬力数を増やす必要があります。お金かかる以前に、設備的に難しい建物が沢山あると思います」

「外に排気せず、浄化装置を入れて店内で空気を回すなら、空調設備は現状で大丈夫です。しかし、屋外に排気するのはハードの部分で無理があるような気がする。店内の気温を一定にするには、給気される外の熱い又は冷たい空気を、余計に冷たく又は熱くする空調が必要です。しかし、その技術的な難しさが知られていないのでは。条例案を作った側は、単純に換気扇で外に排気すればよいと簡単に考えているのではないでしょうか」

 余計に電力を消費し、二酸化炭素を増やすというアンチ・エコ行為にもつながりそうだ。

「こんな設備は実際には難しいと思います。知らない人が勝手に考えて条例案を作ったとしたら問題です」と金子氏は条例案への反対を表明する。


「かもん」店内には自動販売機も設置。


エアカーテンを付けるくらいで十分では

「屋外排気については過大投資となります。エアコンの馬力増強だけで100万円以上かかります。分煙は世の中の流れで仕方ないけど、設備がらみの縛りはもう少し合理的にして欲しい。エアカーテン付けるくらいが現実的な話です。比較的、金もかからない」

 金子氏は分煙は賛成するが、設備に関してはもっと現実的に考えるよう提唱している。

「私は居酒屋を10年やっていますが、その間、お客様からの喫煙に対するお問い合わせは1〜2件しかありません。それはクレームではなく、喫煙スペースを設けて下さいという要望でした。分煙は世界の流れで仕方ないと思います。他方、日本は先進国の中で男性喫煙率が高い方ですよね。お客様が吸われる訳です。日本は、分煙や禁煙を厳密にやる時期には未だ至っていないような気がします」


個店に配慮して、面積で区別しては

 今回の分煙条例案は、店舗同士の競合関係にも影響を及ぼす。設備投資のできる大手外食企業は分煙を選択できるだろうが、大半を占める個店は投資できず全面禁煙を選ばざるを得ない。そうすると、居酒屋に行きたいお客の大半は喫煙ができる分煙店、すなわち大手に集中し、喫煙のできない個店の商売が息詰まる構図が見える。実際に、分煙先進国のシンガポールでは、小規模のバーなどが多数倒産しているという。

 日本の外食市場の魅力は、個店が牽引している。お客がチェーン店より個店を欲しているのが日本の特徴。だから、外食市場はベンチャーでも大きくなれる可能性が高く、数少ないジャパニーズ・ドリームが実現できる業界だ。外食市場の元気の源が、個店にあると言える。

 しかし、そのような個店をつぶすようなことはやめて欲しいというのが、外食関係者の共通する考えではないだろうか。

 そこで、金子氏は、店舗面積に応じて、分煙規制に従わなければならない店と当面は現状のまま従わなくてもよい店を区別することを提言している。

「神奈川県には、カウンターとテーブル席だけの小さな店が沢山あります。10坪や15坪の小さい店で分煙なんてできる訳がありません」という。弱者の事も考えた施策を求めたいと思う。


くつろげる居酒屋と、リラックスできるタバコとの縁は、なかなか切れない。


分煙条例、賛否両論を神奈川県に届けよう!

 外食業界の将来に大きく影響する条例。外食業界でさらに議論を盛り上げよう。下記のURLからアクセスし、メールで意見を神奈川県に届けよう。



パブリックコメント *締切迫る!
意見応募期間:2008年9月16日(火曜日)〜平成20年10月27日(月曜日)
下記から神奈川県宛メールしてください。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kenkou/gan/pubcom/tobacco_pubcom02.html


かもんフードサービス株式会社 http://kamon-fs.co.jp/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年10月16日取材


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