フードリンクレポート
甲州ワインを世界レベルへ、
メルシャンが和食パートナー「甲州淡紫」を限定販売。
「甲州淡紫」の開発を担当したメルシャン前田宏和氏。
・“甲州”という和の酒
甲州は日本固有の品種であり、1300年前から食用ブドウとして親しまれてきた。そして、2000年にヨーロッパ系のワイン用ブドウであることが科学的に証明された。メルシャンは同年、日本の山梨でのワイン造りを使命として甲州プロジェクトを開始させた。
02年「甲州グリ・ド・グリ」、04年「甲州きいろ香」を発売。特に「甲州きいろ香」は英国のワイン専門誌で「最も感動を与える際だった発見」として高い評価を受け、甲州は日本を代表するブドウ品種として世界から注目されるようになった。
甲州の柑橘系の香りはグレープフルーツに例えられるが、ハッサクやザボンのような和の柑橘系とも感じられる。同社は、甲州ワインが世界に対して主張する個性は和の味覚と気付き、「甲州淡紫」の開発を始めた。
「日本の甲州ブドウはワインのセパージュ(品種)としてしか見られていません。甲州ブドウが紫色なのが知られていない。最も生産されているのが山梨県であることが知られていない。長野県でしょう?という方も多い。日本で1300年の歴史を持つ、世界に誇れるブドウです」と「甲州淡紫」の開発を担当したメルシャン前田宏和氏(ワイン営業本部 商品部 国産グループ グループ長)は語る。
「甲州ワインは単体で味わうイメージがあり、ワインバーで飲まれており和食店での扱いはまだ低い。甲州は日本のセパージュの1つに過ぎないと思われています。シャルドネやカベルネなどのように自信を持って語れません。酒が主で料理が従というお店にしか甲州ワインは入っていないのが現状です。」
「ワインとしての甲州の楽しみではなく、食のパートナーとして甲州を提案したい。甲州ワインというより、甲州という飲み物の世界を作りたかった。ワインではモノになってしまいます。パートナーとして食を演出するコトの提案にしたかった。」
そして「甲州淡紫」が生まれた。甲州ブドウは和柑橘系の香り・酸・苦味・渋み・うまみを持ち、その特徴をバランス良く引き出すことで食事の邪魔をしない優しい味わいのワインに仕上がった。和食の最高の引き立て役だ。
「甲州淡紫」を扱う「新」(六本木ヒルズ)。
・和食専門店40店のみでの扱い
「甲州淡紫」はわずか5千本の限定生産であり、和食店40店のみでの限定発売となる。商品のことをしっかり理解していただいた店だけでの扱いを望んでいる。
「この商品が売れるにはお店のリコメンド必要です。和食にワインはまだ突拍子もない組み合わせです。お客様の行動を変えるにはリコメンドが必要です。お金が払える人は常に新たなものを探していらっしゃいます。お店のリコメンドがフックになり、お客様の感動体験を呼ぶ。料理にマッチして美味しかったら、お店とお客様との信頼関係が増します」と前田氏。
店側がリコメンドしやすくするために、パッケージにも工夫が施されている。
「甲州ぶどうはこんな色をしているんですよとコルクカバーを見せる。コルクに亀が泳いでますよね。亀の甲羅。カメが泳いだ後に水面に映る波は州。合わせて甲州です。包み紙をむいていく毎にストーリーになります。ラベル裏にも甲州ブドウの畑と泳ぐカメの絵が描かれています。」
甲州ぶどう色のコルクカバーと、亀が描かれたコルク。
ラベル裏にも甲州ブドウの畑と泳ぐカメ。
「甲州ワインを飲んだことのない人に新発見をさせたい。日本酒からスイッチしてもらいたいです。食が主になるドリンクは日本酒ですが、日本酒はまったりしてきて飲み疲れる。甲州淡紫はすっきりが続き飲み疲れない。ワインを楽しむより、食を楽しむ脇役ということに気付いていただきたい。」
「甲州淡紫」扱う、HUGEが運営する六本木ヒルズの人気和食店「新」に行った。同系列のイタリアン「リゴレット」同様に2500円均一のワインメニューがあるが、お客はビール・焼酎が中心。「甲州淡紫」は扱い始めたばかりで、メニュー上の表記やリコメンドは無かったが、オーダーすると、メルシャン勝沼ワイナリーにも行ったスタッフが嬉々とと商品説明をしてくれた。実際に飲むと、ワインというより日本酒に近い。しかも、日本酒のようなまったり感がなく、飲み飽きない。
「新」で「甲州淡紫」を勧めるAYAKAさん。
「10年後に和食で甲州ワインが当たり前のように飲まれているのが夢」とメルシャンは大きな目標を掲げている。日本人として、世界に冠たる甲州ワインに育って欲しいと私も思った。