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フードリンクレポート


99円価格均一「おたる寿し」
新ジャンル「麦とホップ」を新店にて初導入!

2010.4.12
「おたる寿し」は関東に33店舗ある一皿99円の価格均一をうちだす回転寿司業態。(一部99円以外のメニューあり) 運営は「おたるコーポレーション株式会社」(本社・東京池袋)。昨年末から新しい取り組みとして新ジャンル(いわゆる第3のビール)「麦とホップ」(サッポロビール株式会社)の導入を開始した。その狙いと効果を探る。

  
サッポロビール 「麦とホップ」。

同社で初の「麦とホップ」導入

 昨年11月に新しくオープンした東京都江東区の「おたる寿し西大島店」。ここでは同社初、360mlの生ビール390円をメニューから外し、代わりに新ジャンル「麦とホップ」360mlを280円で販売開始した。「おたる寿し」の店舗は平日の会社帰りのサラリーマンや一人遣いの多い「都市型店舗」とそれに比べ比較的家族連れや車での来店が多い「ロードサイド店舗」の大きく2つに分れるが、客単価は全店平均で982円。 全店舗の生ビ−ルの出数率(全客数の中で生ビ−ルを注文される比率)は、5.7%となっている。

 フードのほとんどが一皿99円という価格の業態で、ビールの390円という価格設定はターゲットとなるお客様たちの利用動機やニーズに対し妥当なのだろうか。ビール自体は寿司にもよく合い、一般的に他のアルコール飲料よりも組み合わせとして好まれる。しかし注文するかどうかの選択時に「高い」という印象が強く、オーダーのハードルをあげているのではないかという仮説がある。飲みたくても飲まない、本当は生ビールを飲みたいと思っていた場合もサワーを選ぶという人が多いのではないかということだ。


新ジャンルに関するビール会社のアンケート

「麦とホップ」の販売元であるサッポロビール株式会社ではこんなデータもある。「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(いわゆる第3のビール)」の3つの区分にについて、どのくらい意識するかという調査。

【以下、文中で記載する調査結果についての調査概要】
・実査時期2010年2月17-18日
・飲食店で「麦とホップ」を提供されたことがある人200名とそれ以外の200名の合計400名。
・20代〜50代男女半数ずつ
・居住エリアは全国

 その結果によると、「スーパーやコンビニでビール類を購入する際に3つの区分について意識するか」という質問に対しおよそ6割が意識し、残りの3割は意識をしていないという。

 同様に、飲食店においてその店で扱っている”生”が「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(いわゆる第3のビール)」の何であるか気になるかという質問では、強く意識するのが3割弱。それを含めておよそ6割がジャンルを意識し、残りの4割は意識をしていない。


飲食店で扱っている“生”が「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(いわゆる第3のビール)」の何であるか気になる。

 一方で「最初の一杯」の価格はほとんどの人が意識し、記憶に残り易いという。例えば「料理の値段と比較してビールが高いと感じたことがあるか」と聞けば、「よくある」「時々ある」があわせて78%となっている。

 味については、新ジャンルを好むユーザーやどちらも好むユーザーが50%前後。味や「『ビール』か『新ジャンル』なのかというジャンル分け」よりも印象に残るのは「一杯の価格」らしいことが示唆できる。フードメニューのプライス設定を安くし、更に「価格均一」などの言葉で強く訴求した場合も、ドリンクの価格設定が原因になり、高いイメージを持たれてしまう。店舗選びの際のエンドユーザーが自然にもつコストパフォーマンスのイメージは「”生”の単価」「最初の一杯の単価」で決まる場合が往々にしてあるということだ。


料理の値段と比較してビールが高いと感じたことがあるか?


“麦とホップ 280円” はどう受入れられたか

 実際「麦とホップ」を置いてみて二ヶ月経過、反響はどうなのか。まず200円代の設定にしたことで、明らかにお客様は注文し易くなっているようだ。ドリンクの「値ごろ感」がみてとれない場合、ビールの値段を高いと感じてはじめから注文をしないという人がいるということもアンケート結果からでているという。逆にいえば、価格設定を下げられればビールの出数に比べ、それにかわる新ジャンルの出数アップが見込めるということ。ドリンクの価格設定は「客単価アップ」「出数アップ」を狙うのに重要だともいえる。

 西大島店に導入した「麦とホップ」は全客数のなかで生ビールを注文される方の比率が全店平均で5.7%だったのに対し、13.5%と大きく上回っている。更に、客数全体の中でアルコールを注文される人数比率についても全店平均8.2%に対し25.5%となっている。
 
 又、特に日常遣いする業態「ファミリーレストラン」「ラーメン・餃子専門店」「全国チェーン系の居酒屋」「カラオケボックス」「定食屋」などでは、「新ジャンルを提供するのにふさわしい」「違和感がない」という声も多いことが、サッポロビール株式会社の同じアンケートの中で明らかとなっている。メーカー側のアンケートの結果とおたる寿し西大島店の現状の数字から、業態の価格設定イメージに合ったドリンクの価格設定は効果があるといえる。現場のスタッフの話によると200円台で売ることで2杯目もまた、サワーにはいかず「麦とホップ」をオーダーするお客様が増えたようだ。


「麦とホップ」の魅力

 生ビールを380円で置くよりもそれを「麦とホップ」に変えてお客様からのオーダーが増えた背景には、「麦とホップ」の味の実力の下支えとそのブランド力がある。

 原料は麦芽以外で、発泡酒に別のアルコールを混ぜるという方法で開発されたビール風の飲料「新ジャンル(いわゆる第3のビール)」は、発泡酒よりもさらに価格が安い。

 オーダーする側としては、生ビールと変わらないスタンスでオーダーしたいという欲求がある。つまりマーケティング用語で言えば消費者に対し与える付加価値のひとつ「自己表現的付加価値」に当る部分で、この商品を使っている自分がそれを使うことにより、どう周りから見られるかという点。ビールメーカー各社はその部分でも新ジャンルの販売を始めた6年前からパッケージやイメージ戦略にも長いことしのぎをけずってきた。「麦とホップ」というネーミングは、その名のとおり、麦原料(麦芽、大麦)とホップのうまさを感じてもらえる飲料であることを強くイメージさせる戦略。

 材料となる麦とホップは全て「協働契約栽培100%」。生産者と共に育てた安心で品質のよい素材にこだわりじっくりと時間をかけて長期熟成させた。麦とホップの素材本来のうまみを引き出し、香りや苦味はサッポロ黒ラベルを連想させられるほど。雑味も少なく、発泡酒同等以上のビール感をだしているといえる。金色のパッケージも高級感を意識し、CMには俳優の田村正和氏を起用してきた。


田村正和さんを「麦とホップ」CMで起用。


「外食」における新ジャンル

 外食業界は「おたる寿し」の99円均一然り、低価格均一業態が昨年も話題になるなど、不況の中でもお客様にわかりやすく「利用しやすい」「オーダーしやすい」ように様々な工夫や取り組みがみられる。その中で「麦とホップ」はレストランの活性化や客単価アップに貢献、その一役を担っている。

 今後もひとつのアイテムの上手な取り込み方は、レストランにとっても利用者にとっても満足度の高い結果をもたらすことが期待できる。「おたる寿し」では既存の他店も今年春から順次「ビール」から「麦とホップ」に切り替えていく。


【取材・執筆】  国井 直子(くにい なおこ) 2010年2月19日執筆


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