・基本的には全店分煙
取材したのは店舗設計を担当する、相浦信行氏(ファーストキッチン株式会社 執行役員 営業統括本部設計監理部長)と、三浦健治氏(同 設計監理部 マネージャー)。
「ファーストキッチン」は数店の小規模店舗は除いて基本的には全店分煙。分煙の基準は、「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」を全店で採用している。具体的には、
①喫煙区域と非喫煙区域とを仕切り等で分離する。
②喫煙区域にたばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出するための屋外排気設備(換気扇等)を設ける。
③非喫煙区域から喫煙区域に向かう空気の流れ(0.2m/s以上)が生じるようにする。
神奈川県では、店内の床面積から調理場、調理用設備を除いた床面積が100平方メートル以下の店には罰則規定はなく努力目標となっているが、ファーストキッチンは面積に関係なく、全国の店舗で神奈川条例の基準に基づく分煙を行っている。
新宿南口店。
「神奈川県では仕切りをして喫煙スペース入口から流れる0.2m/s以上という基準風速を満たせば良いので、我々もそうしていましたが、お客様からそれでは完全分煙じゃないとご指摘を受け、改装の時に、喫煙スペース入口に自動ドアを必ず付けて完全分煙としています」と相浦氏。
同社130店の内、約半分がフードコートであり独自の客席は持たない。分煙は施設側の問題。残りの半分が街中にあり客席を持っている。分煙ができないほどの小規模店を除いた全ての店で分煙となっており、改装店では自動ドアも付けている。
「都内の数店で全面禁煙にする実験を行いました。すると、売上が15%も下がったんです。モーニングの売上が一番響きました。ビジネス街では朝8時に喫煙室が一杯になっていましたから。あと、11:30~12:30のランチ後のコーヒータイムです。」
・新幹線方式に慣れてきた
売上を検証して分煙で行くと決めたが、問題は喫煙と禁煙のスペースの割合。
「以前は喫煙と禁煙で5:5を基準にして、郊外とオフィス街で少し割合を違えていました。しかし、今は概ね2:8が基準です。ビジネス街は喫煙が多くて3:7。弊社では2009年より「ナチュラルモダン」をコンセプトにした改装を順次進めており、改装当初は従来の顧客層や使われ方を意識した喫煙比率としていましたが、実際に開店してみるとお客様の使われ方が大分変わりました。タバコを吸う時だけ喫煙スペースに来るような使われ方もかなり見受けられ、自動ドアを付けてからさらに顕著です。全面禁煙である新幹線内喫煙ルームのような使われ方ですね。」
階毎に分煙。
喫煙ルームへの入口。
喫煙ルーム。
「喫煙スペースを2割にしても従来からのタバコを吸ってるお客様はきちっと来店してくれ売上も減りません。また吸わないお客様からも大変好評で、今まで以上にご来店頂いております。」と双方が共存できるようになった。
分煙に沿って売上を維持させる手法は見えたが、改装時の問題は残る。
「全面的に改装する場合は問題ありませんが、既存店の改装の場合はただ区切ればいいという訳ではありません。換気の問題、エアコンの位置、スプリンクラーなども改良しないといけない。そこの対応が一番難しいです。」
「禁煙ユニットのような箱で、箱の中で自己完結するようなシステムがあったらいいですね。それを店内に置くだけで禁煙ルームとなるような。」
新たに排気を取ることが難しい建物も多い中、空気を外に排気させずプラズマ消臭機のようなものを使って、禁煙ユニットの箱の中で換気ができる仕組みが開発されると喫煙スペースを気軽に設けることができるようになる。同じ規格で大量に生産できれば価格も安くなるだろう。技術革新がこの分煙問題を解決してくれるかも知れない。