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受動喫煙の罰則が始まった神奈川県で飲食店の禁煙、分煙表示進む。

2011.4.28
昨年施行された「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」の第2種施設における罰則が、4月1日から適用されるようになり、飲食店も適用範囲に入った。第2種施設では入口に「禁煙」、「分煙」等の表示が義務づけられているが、県や飲食業の業界団体は表示を行うように呼び掛けている。表示の現状を取材した。レポートは長浜淳之介。


「ぱあらー泉」六ツ川店(横浜市南区)、喫煙できます表示。

大型店のおよそ8割で禁煙、分煙の表示を完了

 全国で始めて、自分自らがタバコを吸わない受動喫煙者の肺癌発症リスクなどの健康被害を抑止する趣旨で制定された、「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」。

 昨年4月1日に施行され、公共的施設では禁煙または分煙が義務づけられている。1年が経過した今年からは、第2種施設における罰則が適用されるようになった。この第2種施設に飲食店も含まれている。

 神奈川県では公共的施設を第1種と第2種に区分しており、第1種は禁煙が義務づけられている。第1種とは、学校、病院、劇場、映画館、観覧場、集会場、運動施設、公衆浴場、物品販売店、金融機関、公共交通機関、図書館、社会福祉施設、官公庁施設などが入る。

 スペースを囲った喫煙ルームをつくるのは、分煙に分類されるので構わない。

 第2種は禁煙か分煙を選択できる。第2種には、飲食店、宿泊施設、ゲームセンター・カラオケボックスなどの娯楽施設、その他のサービス業を営む店舗(クリーニング店、不動産店、理容所、美容所、旅行代理店、法律事務所など)が入る。

 そして、公共的施設の全てに「禁煙」、「分煙」等の表示が義務づけられている。もちろん飲食店もである。表示の方法は様々にあるが、一番簡単なのはステッカーを店頭に貼ることである。


神奈川県生活衛生営業指導センターの分煙ステッカー。

 飲食店の場合、特例第2種に入るのは、店内の床面積から調理場、調理用設備を除いた床面積が100平方メートル以下の飲食店であり、概ね個人で営業している店舗はこちらに入る。チェーン店でも店舗面積が小さければやはり特例第2種である。

 現状の表示状況はどうなっているか、神奈川県の飲食関連の業界団体をまとめる、財団法人神奈川県生活衛生営業指導センター理事長の八亀忠勝氏は、「チェーン店には告知して、だいたいの会社には既に対応していただいています。小さな個人店は努力義務でもありますし、これからでしょうか」と語る。

 神奈川県たばこ対策室でも、「県のほうで戸別訪問して、禁煙、分煙を守っているか調査し、表示していない店には表示するよう求めています。約2万店を回って8割が対応済みです」と、罰則を適用する前に条例を周知徹底させるように指導を行っている。


まず分煙ステッカーを貼って頃合いを見て工事

 チェーン系に多い調理場、調理用設備を除いた床面積が100平方メートルを越える大型店は、神奈川県で営業する以上、禁煙か分煙かを選択し、まだ対処していないなら、何度も県から指導が入り罰則が適用される前に、すみやかに対処する必要がある。

 施設管理者の義務違反は5万円以下の過料と、罰金の額は多いとは言えないが、東日本大震災後の需要低迷期でもあり、余計な出費は抑えたい。また、義務違反と大々的に報道されると、社会的制裁を受けるので企業イメージもよろしくない。

「庄や」、「日本海庄や」、「やるき茶屋」などの居酒屋や、カラオケ「歌うんだ村」などを展開する大庄では、「ほとんどの店で条例の適用範囲に入りますが、1階と2階で分煙したり、お座敷とカウンターで煙が行かないように区切って分煙したりと、分煙を基本にスペースを分けています」(広報室)とのこと。


「歌うんだ村」(横浜市南区弘明寺)、分煙表示。

 最初は禁煙か分煙か、とりあえずステッカーを貼って、分煙の場合は環境の整備が必要な場合は、機を見て仕切りをつくるなどの工事をするといった形で進めている。

 大手居酒屋チェーンの対応は概ね同じ対応をしている。

 また、「モスバーガー」では、独自でステッカーを作成し、神奈川県に限らず分煙を全国の店舗で実施。どうしても分煙できるだけのスペースがない場合は禁煙としている場合もあり、喫煙状況の店頭表示を行いながら、臨機応変に対応している。


「モスバーガー」溝の口中央店、分煙表示。

 ファーストフード、ファミレスでは同様の対処法が多い感がある。


「ガスト」(川崎市高津区溝の口)、禁煙で喫煙所あります表示。


「ケンタッキーフライドチキン」(川崎市高津区溝の口)の分煙表示。


「牛角」(横浜市神奈川区鶴屋町)、分煙表示。


喫煙可と表示するだけで努力義務を果たしたことになる

 現状、努力義務に入る中小店舗は、努力の跡がまるで見えないようだと、今後条例の見直しによって規制対象に組み込まれてしまう可能性がある。

 喫茶、バー、居酒屋などは、コーヒーやお酒を飲むとともにタバコを吸う場所といった意味合いもあり、タバコとは切っても切れない深い関係を持っている。

 神奈川県たばこ対策室では、「喫煙できますと表示するのも、努力義務を果たしていることに入ると考えています。受動喫煙されたくないお客様は、その店に入らなければ良いのですから選ぶ基準になります」と、中小店舗には喫煙可の表示も含めて推奨している。


「はな火」(横浜市神奈川区鶴屋町).、『喫煙者大歓迎』表示。
 
 前出・八亀理事長が経営する横浜市南区の喫茶店「ぱあら~泉」では、「喫煙できます」と表示してあり、顧客にタバコの煙の有無を選択できる情報を提供している。

「ぱあら~泉」南太田店では今年2月に2階部分を改装して、タバコの煙が滞留しない画期的な新空調システムを導入している。

「タバコを吸っている人が近くにいる場合、タバコが本当に嫌いな人は煙いとおっしゃられますが、臭いは残りません。新空調システムの評判は上々です」(八亀淳也店長)。

 実際、隣でタバコを吸わない限り煙さはないのだが、生理的にタバコが嫌いな人は非常に敏感に感じる面があってなかなか難しい。

 横浜駅近くの飲食街、鶴屋町でも幾つか喫煙可の表示を見たが、タバコに厳しい神奈川県にあっては、分煙の店頭表示をするだけで、安心してタバコが吸える場所として、愛煙家の支持を得られるのではないだろうか。


【取材・執筆】 長浜淳之介(ながはま じゅんのすけ)  2011年4月27日執筆


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