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フードリンクレポート<全文フリー>
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大手町のオフィスビルにある近未来的な喫煙専門カフェが好評

2011.7.15
飲食店では受動喫煙による健康被害を懸念する風潮が広がる中で、喫煙者と非喫煙者がいかに共存するかが課題となっている。従来タバコを吸う場所としても認識されていた、喫茶、カフェでは喫煙専門と禁煙専門で店舗を分けていく試みもある。愛煙家にとって心地よい環境を整備した、新しい考え方の喫煙専門カフェの狙いを探った。長浜淳之介がレポート。<全文フリー>


BIZ BREAK CAFEの近未来的な店内

喫煙しながら本格的にコーヒーを気兼ねなく味わえる場所

 東京の中枢地区の1つ大手町で唯一のツインタワービル「大手町ファーストスクエア」の地下1階レストラン街に、喫煙専門のカフェ「BIZ BREAK CAFE」が設けられている。
 オープンは2010年5月で、元は何もなかった共用部の空きスペースだった場所に店舗が造られた。
 営業時間は7時から19時まで。立ち飲みで最大10人が入れるほどの小さい店ではあるが、ビルに勤務する喫煙者のオアシスとして重宝されており、朝の出勤前の時間やランチタイムは顧客でいっぱいになる。ランチ時には入り切れず行列ができるほどで、テイクアウトにも対応している。
ランチ後の昼下がりも来店者が途切れず、夕方は終業時までかなりの集客がある。
 カウンターで注文してドリンクを受け取るセルフサービスの店で、ドリンクはブレンドコーヒー、アイスコーヒー、アイスカフェラテの3種類が提供されている。価格はいずれもSサイズ200円、Mサイズ250円、Lサイズ300円。
 フードは焼菓子を販売しており、ミルクドーナツ(140円)、ショコラケーキ(160円)、ブローネタルト・ナッツ(140円)、ブローネタルト・クランベリー(140円)、アーモンドケーキ(160円)、抹茶バームクーヘン(140円)となっている。
 店名にあるとおり、ビジネスの合間のちょっとしたブレイクタイムに使ってもらうことを狙いとしている。
 
「大手町ファーストスクエア」のビル内では、喫煙者は専用片隅に設けられた喫煙ルームか、飲食店、ビルの外でタバコを吸うことになる。また、千代田区内は公道上での路上喫煙が条例によって禁じられており、ビルの外でも喫煙者がリラックスしてタバコを吸える環境がなかなかない。
そうした中で、休憩時間にコーヒーを飲みながら煙草を吸いたいといったニーズも多いことから、新たなカフェが設置されることとなった。それが「BIZ BREAK CAFE」である。


清潔感のあるデザイン

喫煙者にとってのあるべき環境を考えて形にした「BIZ BREAK CAFE」は、喫煙者にとって快適に過ごせるような環境が整備されている。
 デザインは都心部のオフィスビルにふさわしく近未来的になっており、アクリルの丸テーブルによる、清潔なイメージと浮遊感ある軽さによって寛ぎを演出。その一方で、壁面は緑化されており、短時間のブレイクタイムに気分を切り替えられる、癒しの環境を提供している。


洗礼されたレジ周辺には商品が並ぶ

 直線的にデザインされた発光するカウンターは、壁面に広がる緑化面との鮮やかな対照をなす。
 相対する人工のガラス素材と自然のグリーンを掛け合わせた、清潔かつナチュラルが組み合わされたオシャレ感ある空間創出によって、日常を束の間忘れた非日常にトリップできるような、リフレッシュタイムを過ごせる提案となっている。

 喫煙に対する風当たりの強さが増す社会状況にあって、喫煙しながら本格コーヒーが飲める喫茶店は急減しており、オフィスで喫煙ルームが設けられていても、囲われた個室で簡易的なテーブルと椅子が置いてあるのみの申し訳程度の無機質な空間であることも多い。

 非喫煙者に対して後ろめたい感情を常に持たざるを得ない愛煙家は、肩身の狭い喫煙環境で、コーヒーブレイクに使われる飲料も、缶コーヒーがせいぜいといった味気ないケースが大半ではないだろうか。

 日本の産業を担う大手町のインテリジェンスビルに勤務するホワイトカラー、頭脳労働者の喫煙者が仕事の効率を上げるためにも、もっと好ましい情景でのコーヒータイムが整備される必要性があった。
 それを形にしたのが「BIZ BREAK CAFE」であると言えるだろう。

喫煙専門と禁煙専門の店を別々に出すという解決法

 「大手町ファーストスクエア」では地下1階レストランフロアーに、喫煙専門のカフェと、禁煙専門のカフェが並立してあることで、受動喫煙を避けたい非喫煙者にとっても居心地良い喫茶環境が実現している。
 喫茶に限らず飲食店では、分煙をうたっていても、明確な仕切りもなくタバコから吐き出された煙が禁煙スペースに流れることも少なくない。それは非喫煙者にとっては不満の種となっている。
 その点「大手町ファーストスクエア」においては、喫煙と禁煙とが別々のカフェ店舗になっているので、喫煙者と非喫煙者のお互いの人権を尊重した共存ができている。


大手町スクエアオフィスビル

 なお、「BIZ BREAK CAFE」の店内には強力な排気設備が入っているので、タバコの臭いは思ったほどしない。しかも、出入口にはエアカーテンが施されており、店外にタバコの煙が漏れないように万全の対策が施されている。なので、オープン以来煙が外部に漏れたといったクレームは一切ない。
「BIZ BREAK CAFE」のオシャレ感ある内装ではOLが入りやすい、女性を意識した訴求を行った。 
 現状、女性の顧客は1~2割であるが、人々がコーヒーを飲みながら煙を吐き出す光景をファッショナブルに見せることに成功している。
 都会の中で、愛煙家がしばし忙しい日常を忘れて、本格コーヒーを飲みながらリフレッシュできるのが「BIZ BREAK CAFE」だ。
 究極の分煙として、喫茶店やカフェを、同一エリア内で喫煙専門と禁煙専門に分けて出店していく方法も、喫煙者と非喫煙者の両方の顧客満足度を上げるのに有効ではないだろうか。

【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2011年7月15日取材


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