フードリンクレポート<有料会員>
*バックナンバー
【全国チェーンの分煙対応】
「コメダ珈琲」既存店は店頭表示で努力する。
布施義男氏 株式会社コメダ 代表取締役社長
布施義男氏。
・完全分煙で1割減、満足度は高まった
コメダ本社の入る建物の1階に、直営の「コメダ珈琲」葵店がある。今年3月に完全分煙とした。喫煙ルームを作るに当たり、天井が高いため仕切りとエアコンの配置変え、自動ドアなどで1000万円近くの費用がかかったという。神奈川県条例に沿った設備。
「名古屋には直営は3店のみ。他は全てFCなんです。FCさんの模範にならなきゃと喫煙ルームを作りました。売上は確実に1割減りましたね。完全分煙にしてよかったのは、男性客が1割減りましたが、週末はファミリー客が増えていること。お客様の満足感は高まったと思います。ファミリーが増えて弱冠ですが単価が上がっています」と布施氏。
「ただ、席効率が悪くて、禁煙席は空いているのに、喫煙ルームが一杯でお客様を待たせたりしています。また、壁を作ってから喫煙ルーム内の環境が悪くなりましたね。この店は天井が高くて自然に煙が上に昇り、禁煙席には流れず、理想的な分煙だったんですが。」
喫煙ルーム。
同社の神奈川県内の店舗は、全て完全分煙の設備を整えた。東京都内の店舗も神奈川県と同様。駅前等でスペースが狭い店は、立って吸う喫煙ブースを設けて対応している。禁煙席と喫煙席の割合は名古屋では6:4だが、首都圏では7:3と首都圏は禁煙席の割合を高めに設定。今後も、新規店は原則、完全分煙とする。
「1~2年前は、喫煙スペースに子供を連れて入ろうとする父親とかいて、お断りするとトラブルになるケースがありました。今では家族で来て禁煙席に座って、父親だけ外に出てタバコを吸うという風に変わりましたね。」
ただ、布施氏はやみくもな分煙の流れには棹をさす。
「ウチは飲でもなく食でもなく、スペースの提供業。お客様の滞在時間は40~50分と長い。その中で完全禁煙は厳しいです。牛丼店などは食べる時間が短いので完全禁煙は可能でしょう。飲食業というだけで、十把一絡げでまとめられてしまうのは厳しいですね。」
・既存FCの分煙化は難しい
「コメダ珈琲」は現在、直営・FC合わせて406店。FCオーナーは約230社。元来、街の喫茶店をチェーン化してきたので、1社1店の発想で増やしていった。ゆえに約180社は1店のみ、残り約50社は2店以上持つという構成。30年以上経つ店舗も60~70店ある。
「初期の店は分煙なんて想像もつかない時代にできた店です。30坪くらいの店が多いので分煙は難しくて、申し訳ないですが全席喫煙可とさせてもらっています。分煙のためにレイアウトを変えるのも難しいんです。ウチは常連さんでもっているので、この席はこの人と決まっていたりします。いじくって今日から禁煙だとやるとお客様と喧嘩になっちゃう。それが心配で踏み切れない。ただ、増床できて禁煙スペースを作れた店もあります。」
全席喫煙可の店は今のところ売上は変わらない。もちろん、既存店にも世の中の流れとして、分煙に取り組んで欲しいと本部は説得している。
「ウチは小商圏で日常的に使ってもらっています。サンダル履きやジャージ、ノーメイクの女性とかいらっしゃいます。不景気になっても関係ない。ウチに来ないと新聞を取ってなければ読めないし、朝食が食べられなくなる。生活の中に入っています。極力敷居を低くする。決してコーヒー専門店じゃありません。旨いコーヒーとタバコが吸える店。実は、未だにマッチを配っているんですよ。」
「サービスが悪くなると直ぐにお客様が減ります。新商品とか作らずに、QSCだけ頑なにやってきました。お客様の顔が見える商売です。100名の顔を覚えようという社内キャンペーンも行っています。」
「コメダ珈琲」葵店。
「コメダ珈琲」は年間50店の新規出店を10年間続けて行こうと、着実なペースでの成長を標榜している。分煙は新規店では問題ないが、既存店での普及には建て替え等が進まない限り難しいのが現状。当面は、店頭表示を普及させることで、努力義務を果たそうとしている。