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フードリンクレポート


【分煙条例、ちょっと待った!】
喫煙ルームで気兼ねなく吸わせてあげたい。
小島 由夫氏
株式会社M・R・S 代表取締役社長

2009.1.14
1/13(火)、松沢成文・神奈川県知事が、受動喫煙防止条例で譲歩した。100平米以下の小規模飲食店は事実上、この条例の適用外とすることを決めた。さらに、1/18(日)には松沢知事との県民タウンミーティングが開催され、さらに突っ込んだ議論がなされるだろう。【分煙条例、ちょっと待った!】シリーズの今回は、居酒屋ではなく、レストラン業態で横浜に2店出店するM・R・S小島社長に聞いた。


愛煙家でもある、小島由夫氏。

ルミネ横浜店では入口に喫煙スペース

「シンガポール・シーフード・リパブリック」(品川&銀座)が好調なM・R・S。景気悪化後も満席でお断りするほど、お客が引きも切らない。シンガポール料理だけでなく、タイ料理「コカレストラン」、イタリア料理「マレンマ」、アメリカ料理「オレゴンバー&グリル」、ラーメン「博多らーめん由丸」など28店舗を運営している。

「コカレストランを始めた時(1992年)もバブル崩壊後。閉鎖物件を次々と手に入れ、オープンさせました。景気が悪いとお客様は刺激的なものを求めるようです。しかも簡単な料理。おしゃれ系はダメです。今もコカレストランの売上は悪くないです。『今日はコカに行って思いっきり鍋食べようよ!』という感じです」と小島氏。不況の影響は感じられない。

 小島氏の戦略は、世界の本物を日本のお客に伝えること。「世界各国の心から信頼し合えるレストランとパートナーシップを結び、本物の味、そのこだわりや情熱、長い時間をかけて築き上げられた歴史を譲り受けることで、お客様に本物をお伝えすることができると思っています」と言う。今年2月には、逆に日本のラーメン「由丸」をシンガポールに出店させることが決まっている。

 レストラン業態が中心の同社店舗では、喫煙に対するお客からの風当たりが強いという。本社へのクレームも月に2件ほど。店舗の現場でのクレームも増加傾向にある。

 同社は、神奈川県にはルミネ横浜に「ニルヴァーナ スパイスカフェ」と「マンゴツリーカフェ」との2店を出店。「ニルヴァーナ スパイスカフェ」は隣に喫煙室があるため店内は禁煙。「マンゴツリーカフェ」では、ランチは禁煙、ティータイム・ディナータイムは分煙。入口付近に喫煙スペースを設けている。

「ウェイティングの席に灰皿がある感じで、入ってすぐの物陰のような場所です。レストランのテーブルではタバコは吸わないことが定着してきました。吸いたい方は喫煙スペースに移って、吸ったらテーブルに戻る。特にルミネさんのような女性同士をターゲットにしている店は禁煙が良い。女性はその方が賢いと思っているようです。」


テーブルでは禁煙、喫煙ルームで気兼ねなく

「空港のような分煙が良いと思います。喫煙ルームじゃないと吸えない。吸う人も吸わない人も両方が分かっているし、違和感がない。吸える場所を用意したからそこでなきゃ吸っちゃダメ、その方が吸う側も楽です。曖昧にしていると、吸ってもいいのかな、ダメなのかなと迷いながら吸うことになります。灰皿をもらっても、隣のお客さんのことが気になる。だから、席ではタバコを吸わないで、その代り吸う場所を設けましょう。その方が気兼ねないと思います。」

「入口付近に喫煙できるバーカウンターのある店舗があります。廊下側に煙が流れてしまいます。店に来ていただいたお客様ではなく、廊下を歩いている方からもクレームを受けたことがあります。煙が漏れないようにするために、エアカーテンを入れましたが、効きませんでした。ガラスで仕切ると直にガラスが汚くなるし、オペレーションの効率も悪くなります。お客様には圧迫感があります。それなら、いっそ禁煙にして、別にタバコだけ吸える区切られたスペースを設けた方が良いと思います。また、業態や客単価によってお客様の嗜好は異なるでしょうから、それに応じて禁煙・分煙のスタンスを明確にすることが大切だと思います」と、小島氏。

 分煙にして区画を明確に分けてしまうと、喫煙スペースは空いているのに禁煙スペースは満席もしくは、その逆ということが起き、席は空いているのにお客を返してしまうケースが増える。なら一層、禁煙という選択になる。しかし、近くに空港のような喫煙ルームがあれば喫煙者も満足させることができる訳だ。飲食と喫煙を分離させる。全席禁煙で喫煙ルームを別途設けた最近の新幹線「のぞみ」と同じ。

 1/13に行われた松沢県知事の会見では、県議会の反発を受け松沢知事が表明を行った。100平米以下の飲食店には3年間の猶予を与えると譲歩した12月の素案を。さらに譲歩させ、禁煙を努力義務に留め、事実上の規制対象外とすることを決めた。具体的には、分煙をしているシールなどを店外に貼り付けるなどの努力義務にとどめた。これにより、約7割を占める小規模飲食店が対象外となる。キャバレー、ナイトクラブ、パチンコ店、麻雀店も適用外となる。急激な景気の悪化により、松沢知事も譲歩せざるをえなかったようだ。


居酒屋業態でも禁煙、分煙できるか?

 M・R・Sのようなレストラン業態では、お客の理解もあり禁煙や分煙がまだ実現しやすい。ところが、店舗数の多い居酒屋業態ではどうだろう。

「米国でも州によっては喫煙OKなんです。居酒屋はレストランというよりバー感覚ですよね。居酒屋では店に入る段階から吸って当たり前という感覚があります」と、小島氏も居酒屋とレストランとの違いを指摘する。


酒が飲めないこともあり、レストラン志向の強い、小島氏。

 神奈川県は、1/18(日)に松沢知事との県民タウンミーティングが開催される。そこで、学識者などの意見発表や、素案への意見が交換されるが、松沢知事側は形勢不利を察知して直前に方針転換したことになる。気になるのは、変わらず適用対象となっている大規模店はどうなるのか、だ。タウンミーティングの内容については下記HPを参照いただきたい。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kohokenmin/shumoni/town/index.html

松沢知事は「究極の目標は全面禁煙」と言う。譲歩してまで、全国に先駆けた受動喫煙防止条例の年度内の県議会通過を目指している。分煙に対する議論を高めた功績は大きいが、自由な経済活動を守ることにも意識を向けていただきたいものだ。


株式会社M・R・S http://www.restaurant-mrs.com/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年1月13日取材


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