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三ツ星レストランで修業したシェフが作るフランス家庭料理
「ブラッスリー ホロホロ」
(東京・青山/ブラッスリー)

第344回 2010年12月1日

七面鳥のパロティーヌ。付け合せは下仁田ネギ。

表参道交差点から徒歩2分。「brasserie horohoro(ブラッスリー ホロホロ)」は10月19日、南青山の地にオープンした。すぐ近くには「ラ・ロシェル南青山店」、「キルフェボン青山店」など著名な美食の店があり、名だたるブランドショップ、ヘアーサロンも多いエリアだ。しかし、気軽に入れるフレンチのブラッスリーやビストロが目立つかというと、そうでもない。立地という点では業態的に面白い場所である。


ブラッスリー ホロホロ外観。ホロホロとはポリネシアの言葉で「楽しむために出かける」の意味。


ブラッスリー ホロホロ店内。


板書されたメニュー。

 店主の岸淳子氏は、元々ファッション関係のスタイリストの仕事に就いていたが、料理好きが高じて、家庭的な大人が行けるレストランを開業したいとの夢が膨らみ、4年ほど熟考した末にこの店を独立開業した。

「家に人が集まってきて、よく料理を振る舞っていましたね。友達に飲食をやっている社長が多くて、思いを決心に固めるまで、知り合いのお店で1年弱ほど働いて、接客やキッチンの勉強もしました」。

 さらには、起業・独立・転職・スキルアップのための専門スクール「スクーリング・パッド」に通ってレストランビジネスを学んだ。岸氏は「スクーリング・パッド」で、フランスのストラスブール郊外にある現代風フランス料理のミシュラン三ツ星店「ランスブール」、フィンランド日本大使館の公邸料理人、オーストリア国連代表部の大使公邸シェフなどを経て帰国した、緒方到氏と出会い意気投合。「ブラッスリー ホロホロ」を開業するにあたりシェフに招いた。

 緒方氏は「ホテルオークラ東京」にて、フレンチの料理人としてキャリアをスタート。7年半ほど海外で修業を積んだが、「料理以外の外食産業のことを知らなかった。なかなかトップを走っている人の話を聞く機会もなかったので、方向性を迷っている時にスクーリング・パッドに入学した」という。

「今までの日本のビストロ料理は居酒屋が洋風のメニューを出したものか、フランスにあるものの物まねでした。当店ではフレンチの技を使った創作料理や伝統的なフランス家庭料理を出していきます」と、緒方シェフはこれまでになかった日本のブラッスリーを目指したいと意欲的だ。

「ブラッスリー ホロホロ」で使う素材は、決して高級食材ではなく町場で手に入る普通のものが主流だ。そこにフレンチならではのひと手間、ひと捻りが加えられている。たとえば、オムレツでは海老の頭で取ったクリームソースが掛かっている。鴨肉を稲藁で燻製にするので、肉に香りが付いて香ばしい料理になる。魚料理で余ったアラを使ってダシを取りスープ・ド・ポアソンにする、といった具合。豚足や豚の耳が入ったオリジナルのメンチカツには、ソースにフォン・ド・ヴォーを使用。目に見えない下ごしらえの部分で、フォンやブイヨンを使うといったフレンチの技が随所に活かされており味わい深い料理になっている。

 冒頭写真の「七面鳥のパロティーヌ」(1200円)は、外側の七面鳥の肉と真ん中のフォアグラの間に、豚肉のミンチにキノコがミックスされたものが挟まっている。七面鳥の骨はブイヨンにして、そのブイヨンで肉を茹でる。無駄を出さないフレンチの特徴がよく出た料理だ。この味のハーモニーがワインによく合う。

 また「豚舌のカルパッチョ 香草薬味ドレッシング」(950円)は、豚の舌をハムの作り方で4日間塩漬けにした後、塩抜きに4時間を掛け、85℃の湯でゆっくりと4時間茹でてきれいに発色させた。


豚舌のカルパッチョ 香草薬味ドレッシング。

 ドレッシングに店の庭で採れたフェンネル、イタリアンパセリ、ディルといったハーブが混ざっているのも家庭的な感じがする。実は店舗物件を決めるにあたり、岸氏はスタッフと土地勘のある表参道、青山、原宿、千駄ヶ谷あたりを探して回ったそうだ。そうした中で手ごろな目の届く広さと庭があることが気に入って、現地にしたという。以前は事務所であったそうで開業資金約2000万円をつぎ込んで改装した。


庭でハーブも栽培する。

 その他、オーダーが入ってから焼くガレット、ハチノスのトマト煮、肉のテリーヌなども人気のあるメニュー。デザートは、アイスクリーム3種に焼き菓子、洋ナシのコンポート、ホイップクリームなどをトッピングし、ソースをからめた「ホロホロパフェ」の注文が多い。料理名はなるべく読みにくいフランス語は使わず、日本語でわかりやすく表記するように努めているそうだ。このあたりも気取った料理を提供するのではないといった主張が見られる。

 ワインはオーガニックと昔ながらのものが半々。産地はフランスのみならずイタリア、オーストラリアなどを含め、飲んでみておいしいワインをチョイスしている。グラスワインは日替わりで赤白4種700円〜。ボトルは4000円〜で、1万円以上もあるが、中心は5000〜6000円だ。

「高級レストランというより、飛び切りおいしいフランスの家庭料理、田舎料理を提供していきたい。ワイン、シャンパンに合う楽しみながら食べる料理ですね」と、岸氏、緒方氏は口を揃える。

 席数は32席あるが、そのうち半分の16席がカウンター。カウンターを大きく取っているのは、岸氏によれば「仕事が終わって一人で来ても温かく迎えられる雰囲気にしたかった」との理由。


ブラッスリー ホロホロのカウンター。

「注文は全部前菜でもいいし、一品だけメインディッシュで楽しんでもいい。一人で、仲間とも、修業したシェフの味を気楽に楽しんでもらいたいです」。
 開業して1ヶ月ほどになるが、平日は会社帰りの人、近所の大人の住民が中心。近くにはデザイン事務所なども多く、クリエーター、アーチストも多く訪れる。年齢は30〜50代が多く、男女比は4:6で女性がやや多い。

 土日、祝日は客層が変わり、近所の家族連れが多い。青山は表通りの奥は住宅街が広がっていて、50年以上住んでいる人も少なからずいる。そうした人たちが、息子・娘、孫をも連れて3世代で食事していくケースも目立つ。
 顧客単価は6000〜7000円ほど。口コミで徐々に顧客が広がっており、週に何度か来る常連も増えているという。
 日本に今まで案外なかった、本格的にフレンチの修業をしたシェフが料理を出すブラッスリー。カジュアルフレンチの新しい潮流になるか、期待したい店だ。


【brasserie holoholo(ブラッスリー ホロホロ)】
住所 東京都港区南青山3-17-1 From Five102
電話番号 03-6804-1136
営業時間 平日  18:00〜翌2:00(L.O.1:00)
日・祝 16:00〜23:00 (L.O.22:00)
定休日 月曜(月曜が祝日の場合、火曜)
客席数 32席
客単価 6,000〜7,000円
目標月商 450万円
開店日 2010年9月23日
経営母体 株式会社ジェイヘブン
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年11月24日取材


※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。

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