RSSフィード

チャージ2100円、あとは原価で。
「bar olim 宇田川」
(東京・渋谷/バー)
ツイートする

第364回 2011年4月28日

「バーに来る人を増やしたい。」という思いから生まれた新システム。

 渋谷にあるビルの3階。重厚な銅の扉を開けると、「bar olim」が現れる。もともとは、90年代に名を馳せた伝説のバー、渋谷「黒い月」があった場所。2年前から内装はそのままに引き継いで営業していたが、この4月から新しいシステムを導入して再スタートをきった。そのシステムとは、チャージは2100円、でも、ドリンクもフードも原価で提供するという斬新なもの。


重厚な銅製の扉。


看板にも「Cover Charge2,100」の文字。

 しかし、品揃えは本格的なバーそのもの。バーテンダー出身のオーナー、有限会社アズザクロウフライ代表の小林信秀氏のこだわりで、ウイスキーのシングルモルトが充実している他、ワイン、ビール、ブランデーも各種揃い、カクテルも幅広く対応してくれる。ビール・ワインは315円~、ハイボールは105円、ジントニック210円という驚きの価格。シングルモルトも210円~、ボトラーズのものも210円〜で、年代物のウイスキーが数百円で楽しめたりする。ウイスキー好きにはたまらない店だ。


カウンター。


「黒い月」時代からの内装は、2000万かかっているという。


ウイスキーの品揃えは圧巻。

 つまみは、「自家製オイル漬けオリーブ」(105円)、「レバーペースト」(210円)、「明太子とウイスキーのパスタ」(525円)など、お酒に合う物ばかりで、こちらも原価。なんとキャビアも食べられる。「キャビア&ブリニ」(2100円)厳密に単価を割り出し、100円単位で値付けしているという。


「明太子とウイスキーのパスタ」(525円)


「テテドモワンヌ&蜂蜜」(105円)


「仏産マス卵&ブリニ」(420円)

「低価格を売りにしているわけではなく、明確な価格設定で、いい物を出し、バーに来る人を増やしたい。値段を気にしてお酒を飲んで欲しくない。」という小林氏の思いがよく表れている。バーテンダー時代から、バーの課金の仕方に問題を感じていたという小林氏。「カクテル1杯に1000円を払う、そんな時代は終わったと思うんです。これからのバーは、時間、空間を売っていく。そこで得られる出会いやつながりが価値になると思っています。」


展開している同社の店舗をラベルデザインにしたウイスキーも並ぶ。


ボウモアの「PERFUME」。珍しいウイスキーも多い。

 チャージ2100円というのは、バーの想定単価(3000〜5000円)から、運営に必要な費用と、小林氏が妥当と考えるバーの回転率1.0、席数を合わせて考えて割り出したロジカルな数値。スタートしてまだ3週間程だが、実は最低価格の105円のハイボールや、210円のジントニックはあまり出ないという。「お客さんは、来たら好きな物を飲みつくし、食べ尽くし、満足されます。これまでの常連の方にもすこぶる好評。この店の使い方がより明確になったということでしょうね。」と言う。

 チャージは高めだが、値段を気にせずいいお酒が飲めるのは、今までなかなかバーに行く勇気がなかった人にもありがたい存在だ。しかも、価格が安いことを言い訳にしたくないと、サービスにも手を抜かない。「自分たちができるMAXのサービスを提供したいと思っています。」と小林氏。10坪の店内で2000万円かかっているという「黒い月」時代から引き継いだ内装も、本物だ。バー離れが進む20代の若者も来店し、初めての本格的な“バー”に感動しているという。心置きなく、いい酒といい時間を楽しめる店である。
ツイートする

【bar olim 宇田川】
住所 東京都渋谷区宇田川町33-10 J+RビルサイドJ 3F B室
電話番号 03-5458-1862
営業時間 20:00-2:00
定休日 日曜・祝日休み
客席数 カウンター10席
客単価 3500~4000円
目標月商 120万~
開店日 2011年4月1日
HP http://atcf.jp/index.html
経営母体 有限会社アズザクロウフライ
※取材当時の情報です。変更されている可能性がありますので訪問される場合は、店舗にご確認下さい。
 村田 麻未(むらた あさみ) 2011年4月22日取材

【関連記事】
7坪のバーから始まった。〜バーテンダーの強みは人脈。活かせば広い世界に羽ばたける〜(5−1)小林 信秀氏  有限会社アズザクロウフライ 代表取締役。(2010年4月25日)
国産地ビールの美味しさを再確認。「目黒リパブリック」(東京・目黒/ビアバー)(2011年1月20日)

Page Top