メディカル・レストラン
第5回「ひつじの新町や」
05.26
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします
今回は「ひつじ肉の網焼き」のお店です。名前も変わってるし場所もちょっと判りにくく・・けっして「新町」と言う場所にあるわけではないのでそれだけは勘違いのない様に〜(「新町」の由来は最後に説明しておきますのでお読みください)。
所長は以前知人に連れて行ってもらっていたのにもかかわらず、今回お店の場所がわからず・・正に迷える子羊に〜泣。
月島の近くなんでお店に電話して場所を聞かれた方が宜しいかと思います。え?こんな所に?って感じです。入口の感じからは予想できない(失礼!)美味しい夕食に邂逅できる事を保証いたしまーす。
ここ1〜2年、ラムブームです(アグネス・ラムではありませんよ。このジョークが判る、あ・な・た。きっと部屋にポスター貼ってたでしょう?笑)。
冗談はさておき、ラムブームの理由などをサイエンスしながら味わってみたいと思いまーす。
「ひつじの新町や」
(住所)東京都江東区古石場1-2-1 新村ビル1F
(電話)03-3643-5433
さて、今晩の所長の夕食は。。。といつも通りに皆様にメニュー紹介をする予定だったのですが・・トラブル発生!
このお店、実は良い肉以外はお客様には絶対に出さない主義なので毎日メニューが違います。だから本日のメニューが必ずあるとは限らないそうなんです(泣)先日私が電話したら誰も出ないんで「どうしたのかなぁ。。。?」と思っていたら、良い肉が入らなかったのでクローズしてたそうです(笑)・・と言うわけであくまでも参考文献としてご提示いたしまーす。(写真1,2、)
写真1
写真2
羊のヒレ、ロース、はらみ、骨ぎわ・・・。何しろ1頭買いしてご主人が丁寧にさばいてますんであらゆる場所が出てきます。「うわ〜美味そう〜っ!」とすかさず食べようとした所長に対しご主人から『イエローカード』!!
新町やさんには食べる際のルールがあるんです。かってに食べるのはご法度です。
焼き網のどこに肉を乗せるのか、肉についた脂身をどちらの方角に向けるのか、どの部位の肉から血祭りにあげるのか・・などなど。「新町やルール」をご主人の小林さん(写真3)に教えてもらいましょう(どこかの頑固オヤジと違って羊のように優しい方ですからご安心を〜♪)
「スポーツとはルールという取り決めの元で行われる格闘である。」とは誰かの言葉ですが、ここ新町やさんの「羊の網焼き」とはまさにスポーツです。熱く焼けた網の上はスタジアム。選手&観客は焼き手の我々です。審判は勿論ご主人の小林さん。審判に則ってゲームをいたしましょう。一瞬の目も離してはいけません。ちょっとした油断が命取りになり失点に〜!まさに秒単位の戦いです。しかし審判に逆らわずに行動すれば勝利の羊神は我々に微笑んでくれますよ(笑)。 |
とにかく肉が軽くてあま〜〜い!軽すぎて、言われないと何の肉かさえ判らな〜い。これならいくらでも食べられちゃいそうですが、何しろ希少なお肉なんで量が限られております。ご主人にわがままを言うのはやめましょう。
焼いた肉は塩コショウか特性タレのどちらかで頂戴します。普通、美味しい肉は塩+コショウですよね。しかしここでは特性タレで食べるのが正解です。どこにもないヤミツキの味です(隠れメニューで柚子胡椒を常連さんには出してくれるみたいです。柚子胡椒と塩で食べるのも・・そりゃ〜だれが考えても美味しいですよねぇ)。日頃の行いが良ければホゲット肉のタタキにもありつけまっせ!
ひつじのタタキ 肉だけですと医学的にもバランスが悪く、メディカルレストラン的には問題ですが、ここは一緒にお野菜類もちゃんと焼いて食べれます(前菜の和風キャベツサラダも美味しいです)。
同行したラボのスタッフは大興奮でした。ダイエット中のスタッフでしたが「今日はおあずけ!!完食しま〜す!」と眼の色変えてラムラムしてました(ムラムラじゃありません。ムラムラするのはアグネス・ラムの方ですよ・・爆)。
「羊が1頭、2頭、3頭。。。。」・・焼き網を飛び越してく羊の夢を新町やさんに訪れた夜は見れそうです。。。。ムニャムニャ。。
さてさて、なぜラムが大人気なのか?検証してみましょう。考えられる理由は、
1、ラムはマトンと違って臭くないし安価な上に美味しい(うっメェ〜〜♪)。
2、羊肉のダイエットサプリメント的な効果が一般に知られた。
3、流通が発達し、あちこちから新鮮な羊肉が輸送される様になった。
3、流通が発達し、あちこちから新鮮な羊肉が輸送される様になった。
☆ここで羊肉に関するお勉強です。
○ラム(Lamb)とは生後1年未満の羊の事です(雄羊も日本語でラムと書きますがRamでスペルは違いますのでご注意を〜♪)2年以上はマトンと言います。
そして生後1〜2年の羊肉はホゲットと言います。ラムはとっても柔らかいけどちょっと淡白。マトンは味が濃くなるけど臭いが出て硬くなります。
その間のホゲット肉は、ラム、マトンそれぞれの長所と短所のバランスがとれた中間的な味と食感で非常に美味しい羊肉と言われております。
今回の新町やさんはこのホゲットをたっぷり食べられるお店です。それもご主人一人でコツコツと丁寧に肉処理をし、その夜のお客様のために準備をされているんです(小林さんはそのために一年中腱鞘炎なんですよ。。)。
○羊肉のダイエットサプリメント効果とは何でしょう?
羊の肉にはLーカルニチンと言う物質が大量に含まれております。
L−カルニチンは、必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから体内で合成され、脂質の代謝に関わってる物質です。特に女性に欠乏しやすく、不足すると体脂肪が燃えにくくなり肥満になるといわれてます。一般に肉に含まれますが羊肉は他のどの肉より多くL−カルニチンを含んでいてダイエット効果があると言われております。だから世の女性が飛びついたんですね〜♪
所長のコメント:
新町やさんでお肉たっぷり食べた翌日の胃腸の軽いのには驚きました。前回の韓国宮廷料理もビックリです。一般に「身体に良い食事」というのは胃腸や肝臓などへの負担がなく翌日スッキリしてて気分良いですね。とにかく「新町や」さんのホゲットはシンプル&カジュアル&癖になるぅ。来月にもラボスタッフと再訪してホゲホゲラムラムしたいと思いました〜♪
ところで昨今「メタボリックシンドローム」が巷で騒がれております。
その診断基準の中でも特に注目されているのは、原始的に思われるかもしれませんがウェスト(腹回り)のサイズです。それはなぜでしょう?
世界中の内科医が、今まで動脈硬化を抑えるために患者さんの血圧や血糖、はたまたコレステロールや中性脂肪を生活指導や投薬などでコントロールし・・・やれやれこれで寿命が延びるだろう。。。とホッとしてデータのフタを開けてみればなんの事はない。あんまり寿命は変わっていなかったというなさけない顛末。
それから再度検討を重ねて、採血結果がどうのこうの言ってもそもそも「肥満」があるのが大問題だと言う事がやっとこさわかった訳です。そして肥満にも内臓脂肪型と皮下脂肪型の2種類ある事。内臓脂肪は皮下脂肪と違って単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、血をドロドロにする物質を何種類も血中に放出するのでよろしくない事なども解明されてきました。
そのため、肥満度の指標となるウェストのサイズがメタボリックシンドロームの診断基準でも必須の項目に取り上げられており、「男性は85cm以上がよろしくない」となっています(女性では90cm以上がよろしくないんです。女性は女性ホルモンの影響でほとんどの人が皮下脂肪型肥満ですので甘めの診断基準になってるんですね。羨ましい。。)。
肥満の予防は21世紀の人類の重大な課題です。カロリーのないお野菜や海草などがダイエットメニューなのは当然ですが、それだけじゃキツイですよね。肉も食べたいし・・・そう思う人が過半数なはず。メディカルラボのお薦めはダイエット効果バッチリの羊ちゃんの肉です。肥満防止効果+安価な羊の肉はもっともっと世間に注目され、家庭でも手軽にオカズとして摂取すべき食材と所長は考えます。
*「新町や」の由来の「新町」とは長野県上水内郡信州新町の事で人口は6700人ほど。長野県の北部に位置し、地形は中央を流れる犀川沿いのわずかな平坦地を除きほほ全域が傾斜地。ジンギスカンの町としては全国的に有名な場所で町長様も新町やさんに来訪されるそうですよ。ここの美味しいホゲット肉を小林さんが苦労して(ホ)ゲットしてくるわけです(笑)。
長野県上水内郡信州新町
執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2006年5月26日
『健康×美食ラボ』所長 岡野内科診療所院長 |